「あの人の話って面白いよね」って言われるためのポイントがわかりました。
ニュースに関心を持ち、相手に合わせた話題を提供するのはビジネススキルの1つといえます。とはいえ、「何を」「どう伝えるか」によって会話の盛り上がり方は違ってくるもの。その伝え方の一例として、日本経済新聞社がはじめたブログメディア「二チペロ」が参考になりそうです。ニチペロはニュースをライトに面白く伝えることで、より幅広い層に興味をもってもらおうという新しい試み。「日経電子版」を基にしながらも、独自の切り口で想像を加えて、「気になる話題を提供する」ことを目的としています。
たとえば五輪招致決定の際に話題となった「お・も・て・な・し」をテーマにした記事では、日本の三大美徳として「お・く・ゆ・か・し」「お・ひ・と・よ・し」「お・よ・び・ご・し」を紹介。「これって"美徳"と言えるの?」というツッコミどころを用意することで、ニュースを楽しく伝えようとしています。
ライフハッカーは、ニチペロのこのようなマインドをヒントに、ニュースを「話題」に変えてより面白く伝えるためにはどうすればいいのかを探るため、3人のプロに話を聞きました。独自の切り口を持つコラムやコメントで人気の辛酸なめこさん。日々さまざまなお客さんとコミュニケーションをとる日本交通のタクシードライバーさん。銀座の老舗クラブでホステスを務め、幅広い年齢を相手にしている岡田愛香さんです。
まずは、辛酸なめ子さんがいかにネタを収集しているのか、その方法から紹介します。
辛酸なめこさんの場合
人が知らないネタを収集するには、街を歩き、ネットでイベントを掘る
いつも少しマニアックなネタを機知に富んだ文章でコラム展開する辛酸なめこさんは、情報収集に余念がありません。テレビやネット以外に、街のポスターや掲示板にまで気を配っています。
また、マイナーなネタを探すために、Twitterで「任意の日付」と「大会」「文化祭」などのキーワードで検索することもあるそうです。辛酸さんは、常に"引き"のあるネタ探しを大切にしていて、最近では「府中刑務所の文化祭」が面白かったと教えてくれました。
ただ妄想するのではダメ。関連づけた理由付けが面白い
ライフハッカー読者に向けてニュースを話題にするコツを聞いたところ、「男性は陰謀論が好きなので、巨大権力の話をするのはどうでしょうか?」と答えてくれました。
二チペロでも取り上げられているテーマのひとつ「ゆるキャラ」も、辛酸さんが考えると、斬新な方向に。
常に新しいネタを探しながら、そのネタに関連づけた情報を付け加えるために、さらに情報を集める。辛酸さんがいつもウィットに富んだ発想を展開できるのは、このどん欲なまでの情報収集のおかげなのだなと感じました。
日本交通 タクシードライバーの場合
政治、宗教、スポーツのネタは、初対面では避けるのが吉
続いて、毎日様々なお客さんを乗せるタクシードライバーは、どんな風にニュースと接しているのかを知るため、タクシー呼び出しアプリ『全国タクシー配車』や、AKB48『恋するフォーチュンクッキー』を社員みんなで踊った動画でも話題の日本交通を訪ねました。お話を伺ったのは、日本交通本社の徳山さんと野村さん。徳山さんはつい1年前まで現役ドライバーとして勤務し、現在は新人ドライバーの教育を担当しています。
得意ジャンルの情報で、一般ニュースに付加価値を
では、実際にはどんなテーマが好ましいのでしょうか。
あと、タクシードライバーならではの情報をニュースに付け加えるのも、お客様に喜ばれますね。たとえば、東京スカイツリーができてしばらく経ちますが、あの周辺は観光で訪れる方が多いんです。タクシーに乗るお客様はみんな、良いスポットで写真を撮りたいと思っている。だから、「川沿いからスカイツリーが真正面に見えるスポット」や「川面に映って、スカイツリーが逆さに見えるスポット」「工場のガラスに映るスカイツリーが、人間の身長と同じ高さで見えるスポット」などの情報をお伝えすると、とても喜んでもらえますね。
二チペロではドラマ『半沢直樹』の「倍返しだ!」ネタからニュースを関連付けて紹介していますが、日本交通のタクシードライバーの方々は、お客さんにドラマの話をふられたら「撮影スポット情報」の"倍返し"を行っていたそうです。一応、お伝えしておくと、東京駅の日本橋口から降りて、少し行った日本ビルヂングの前の道が撮影ポイントらしいですよ。こういった情報も、街中を日々駆け巡っていると出合うそう。だからこそ、街の移り変わりや旬のネタにタクシードライバーは強いのです。
ブームになっているネタをそのまま伝えるのではなく、相手が知らないけれど、知りたい情報を"倍返し"することが大切なんですね。
銀座ホステスライター 岡田愛香さんの場合
会話のためのニュースは、詳しく知らない方がいい
銀座の老舗クラブでホステスを務める傍ら、そこで磨いたコミュニケーション術などを執筆している"銀座ホステスライター"の岡田愛香さんは、ビジネスマンや経営者の方々と話をする機会に恵まれています。ホステスという仕事柄、大切にしているのは、相手に気持ちよく話をしてもらうこと。
ただ、お客様がどんなことに興味を持っているのかを引き出すために、2つのことを意識しています。気兼ねなく話ができるネタをふることと、真面目なネタは自分と関連づけて話をすることです。
たとえば、「壇蜜さんの色っぽさって、男性からはどう見えるんですか?」とセクシーな女性の話をこちらからふると、切り出しにくいネタでも相手は答えやすいですよね。二チペロでも五輪の記事がありますけど、私の場合なら『いま住んでいるところが、オリンピックの選手村になるみたいなんです』と、プライベートな情報とニュースを関連づけて伝えることで、お客様に会話を楽しんでもらえれば嬉しいなと思っています。
岡田さんは、普段からCNNやネットからニュースをインプットしているそうですが、人前で知識を披露することは極力せず、必要に応じて出していくことが会話を楽しむコツなのだと教えてくれました。
それは、岡田さんが相手の話を聞くことに重点を置いているからこそ。ほかにも、以下の4つのことを普段から心がけているそうです。
・きちんと自分の膝を相手に向けて、正面で話を聞く
・まわりの音がうるさい場所では、首と声でうなづく
・相手の言葉は最後まで聞いて、遮らない
・知識を披露しすぎず、上手にコメントを添える
ニュースをネタに会話を楽しみたければ、相手が楽しく話せるように、こちらの聞く姿勢を考え直すことがポイントのようです。
まとめ
今回お話を聞いた3人のプロに共通するのは、どうしたら相手が楽しんでくれるのかを、しっかりと考えていることでした。ありきたりではない少しマニアックなネタを提供し、幅広い知識でユーモアと付加価値を加え、相手が話をしていて気持ちいい空間を作る。その姿勢から、ニュースを共有するということは、相手にとって大切な物事や情報を楽しく伝えることなのだなと感じました。
世界の出来事とつながる新聞やブログメディア「二チペロ」も、隣りにいる大切な人と会話をするように、日々のニュースを私たちに伝えてくれているのだと思います。
(松尾仁)