Popular Science:英語で育った幼児は、日本語や中国語で育った幼児よりも、「1」という数字を早く覚えるそうです。また、スロヴェニア語で育った子どもは、英語を話す子どもよりも、「2」の概念を早く学ぶのだとか。
最新の研究によると、この違いは言語構造に由来するそうです。英語では単数と複数で名詞の形が変化しますが(たとえば"one cat"と"two cat-s")、日本語や中国語では変化しません。また、スロヴェニア語やサウジアラビア語では、1(単数)と2(双数)、3以上(複数)で、それぞれ名詞の形が異なります。たとえばスロヴェニア語で1つのボタンは「gumb」、2つのボタンは「gumba」、3つ以上だと「gumbi」となります。こうした文法上の違いが、子どもが数を習得する早さに影響するのだというのです。
言語学者の間では、子どもが数を習得するのに「名詞の一致」が重要な役割を果たすことが知られていました。先日、全米科学アカデミー紀要(米国科学アカデミー:NASが発行している機関誌)に発表された最新の研究で、このことを裏付ける新たな証拠が提出されました。
環境が子どもに与えるもの
この研究は、英語、アラビア語、スロヴェニア語で育った、2歳から4歳までの幼児を集めて行われました。子どもたちには、「箱の中にボタンを2つ入れてください」、「このカードに描かれているのは何でしょう?」などの質問が与えられました。
結果、どの歳のグループでも、アラビア語とスロヴェニア語を話す子どものほうが、英語を話す子どもよりも「2」の概念をよく理解していました。スロヴェニアの2歳児のうち42%が「2」の概念を理解していたのに対し、英語で育った2歳児で「2」を知っているのはわずか4%でした。また、過去の研究成果を分析したところ、スロベニア語やアラビア語で育った2歳児は、ロシア語や日本語、中国語で育った2歳児と比べて、「2」の概念を知っている割合が高いこともわかりました。一方、スロベニア語とアラビア語での違いはほとんどありませんでした。
また、年齢が高くなり、覚える数が大きくなってくると、スロヴェニア語で育った子どもより、英語で育った子どものほうが、習得が早いことがわかっています。研究者によると、スロヴェニアの親は、英語圏の親のように、数の数え方をきちんと教えないからだそうです。
数の習得にはさまざまな要素が絡みます。今回の研究は、小さな数の習得には、言語の違いが大きな影響を与えることが示されました。なお、4より大きい数の習得には、また別の要素が関わるそうです。
Why Babies In Arabic-Speaking Households Learn Some Numbers Faster|Popular Science
Francie Diep(訳:伊藤貴之)