旅行写真家兼ライターのOded Wagenstein氏が、「旅行写真家なら知っておくべき20のTips」を教えてくれました。彼は『National Geographic Traveler Magazine(イスラエル版)』に定期的に写真を提供しており、数多くの作品が出版物やウェブサイトで取り上げられています。
「文化を理解する」という部分に焦点をあて、撮影される人と良い関係を結ぶことを得意としているWagenstein氏。そのTipsとはどのようなものでしょうか。
1.早起きは三文の徳
どんな対象でも撮影できる「光」が手に入るのは、ゴールデンアワーと呼ばれる日の出1時間後と日没1時間前です(地球上のどこにいるかにもよりますが)。ライバルの誰よりも早起きして、素晴らしい撮影のチャンスをつかみましょう。
2.下調べは大事
運まかせにせず、旅行先の地理や情報について出来る限り調べてから行きましょう。より知識が深ければ、あなたの写真にもその「知性」が活かされますよ。
3.相棒(カメラ)を知り尽くす
費用もかさむ旅行先で、新しいカメラやレンズ、フラッシュの使い方が分からない...なんてことにならないよう、出発前の予習をオススメします。
4.宿泊施設はこだわる
街の中心部や、眺めの良い部屋に泊まれば、よりシャッターチャンスも増えるでしょう。
5.挨拶は忘れずに
現地の言葉で挨拶を覚えて、撮影の際にコミュニケーションしてみては?
6.インスピレーションを得る
写真家のポートフォリオを参考にして、新しいアイデアやインスピレーションをもらうのです。たとえば、「写真撮影をマスターするには」をテーマに、アフガニスタンの少女たちを撮影した作品でも知られるスティーブ・マッカリー(Steve McCurry)氏にインタビューして書いた記事を読んでみてください。
自分自身をアーティストだと考えているなら、他のアーティストの作品を把握しておくべきだと思います。そこから得るインスピレーションの大きさを侮ってはいけませんよ。アートギャラリーや撮影レクチャー、クラシック音楽を聞く、良き本に出会う、すべてインスピレーションにつながります。
7.現地の空気を体感する
写真撮影は視覚的なインスピレーションだけで成り立っているわけではありません。現地の食べ物、市場、音楽、とにかく何でも体感することで、その場所の「物語」が見えてくるのです。
8.案内人を見つける
現地住民に話をしたり、その国特有の良い撮影スポットについてアドバイスを求めてみるのもいいでしょう。
9.必要な物だけ持っていく
無駄な物はとにかく省いてください。私が旅行する時にはズームレンズとプライムレンズ、この2点しか持っていきません。ハイキングやトレッキングの予定があるなら尚更、荷物は軽くですよ。
10.王道は忘れて
キューバで葉巻。タイなら僧侶。正直、誰もが想像つく被写体です。新鮮で新しい何かを撮影することを心がけてみましょう。自身の視点でその場所を表現してください。前述のヒント2~6を達成して初めてできるようになることです。
11.すべてを一度で終わらせようとしない
限られた時間で何もかも見ようと無理しないこと。訪れたその場所を深く知っていく方がよほど賢明といえるでしょう。焦らなければさらに表現力が向上されますよ。
12.スロートラベルを心がける
時間が許す限り、飛行機より電車やバスを使ってください。現地の人と交流するチャンスがさらに生まれます。
13.たまにはカメラは忘れて
せっかくの旅なのですから、ずっとレンズ越しはやめましょう。旅行や移動時間を大いに楽しんで。
14.自然体が一番
最も影響力を持つ写真家のひとりと言われているアンリ・カルティエ=ブレッソン(Henri Cartier Bresson)氏は、一度もフラッシュを使ったことがないのだとか。彼曰く、「失礼ですよ...コンサートにピストルを持っていくようなものです」。高額なフラッシュやリフレクターを買う前に、自然光の恩恵を十分に楽しみ、習得しましょう。
15.頂上目指して
良い旅行写真には必ずといって良い程、その場所の全体像が撮影されていますよね(エスタブリッシュショットとも言われています)。都心や街全域が見えるとっておきの場所を探してください。
16.言い訳はやめましょう
「君が持っている高いカメラとレンズがあればな」「旅行費用を誰か払ってくれれば」「
でも君は現地で十分な時間があるじゃないか」など。
旅行写真家を目指す学生たちから頻繁に聞く言い訳です。「なぜ、力強い写真が撮れないのか?」という自問に対する答えは、まさにそれでしょう。
ちなみに、初めて新聞に掲載された私の写真は、ポケットカメラで撮影されたものでした。もちろん、道具は大切ですし、仕事を楽にしてくれることに間違いはありません。しかし、カメラはあくまで道具であるという部分も忘れないでください。あなたのビジョンや思考を捉える「パイプ」でしかないのです。所持していない道具について、いつまでも悲観するのはやめましょう。そんな時間があったら撮影技術を磨き、読書などを通じて学び、出来る限り旅をすることです。
私が旅を始めてから最初の8回は、誰かが支払ってくれたなんてことは一度もありませんでした。1年間、身を粉にして働きに働いてから、旅行にお金を費やす。ひどい寝床にあたったことも、この世の物とは思えないバス移動だって体験してきました。写真家という私たちのライフスタイルは、それだけのやる気や責任が伴うのです。
今では時折、旅行費用をいただいていますが、その大変さは変わりません。1つの仕事に対して大体1週間から2週間の期間で旅をしています。つまり、目を見張る結果を2週間で出さなくてはならないのです。「雨が降っていたし、具合が悪かった」では通用しません。
言い訳をやめて仕事をしなさい。
17.師匠を見つける
何事においても師を見て学ぶのが一番です。アシスタントとして同行できる写真家を探しましょう。ほとんどの旅行写真家は一人旅を望むことも確かですが、何も旅行写真家である必要はありません。私も、光の使い方などはしばらくアシスタントをしていた素晴らしいファッションフォトグラファーから学びました。
18.「エキゾチックさ」はどこにでも存在する
ニューヨーク、中東、フランスの小さな街...世界中のどこに住んでいてもです。あなたが住む場所の「美」を発見してあげてください。写真の中にその美しさを表現できていれば、人は魅了されていくでしょう。
19.旅をやめないで
良い旅行写真家はポートフォリオを常に生かしていなければなりません。旅は続けつつも、18番目のヒントで挙げたように、「身近な場所でも魅了される何かは存在する」ので、遠くに行くことが必須ではないのです。地元街の美しさを引き出しましょう。近くの市場やお祭りでも、感覚は研ぎすまされますよ。
20.人間味を出す
被写体を大事に扱ってください。遠くから、あるいは拒む人の撮影はやめましょう。写真を送ることを約束したら必ず果たすように。あなたの後に来るであろう他の写真家が笑顔で出迎えられる環境を作るためです。
そして、何度も言うようですが、時にはカメラを置いて純粋に旅の流れを楽しむことが、最善なのかもしれませんよ。
Oded Wagenstein(原文/訳:Sara Mikata)
Photo by Oded Wagenstein.