本記事の著者・ジェレミー・ゴードンは、ニューヨークを拠点に活動するライター(@jeremypgordon)で、『ウォールストリートジャーナル』『プレイボーイ』などに寄稿しています。Brooklyn's Finestというウェブサイトの運営もしています。
The First Bound:2011年10月15日の時点で、私は実家に住んでいました。2012年、ブルックリンにあるアパートを自分で借り、誇りを持ってアメリカ経済の一員として働くようになりました。
アパートを借りるまでの11カ月半のあいだ、私は毎日、様々な媒体に執筆していました。正確に計算したわけではないですが、その間に20万~30万ワードは書いたと思います。いい記事もあればいまいちの記事もありましたが、全てに対して正当な原稿料をもらっていました。
たくさんの人が「あなたのようにフリーランスで頑張っている人は、他に知らない」と褒めてくれます。それを聞くたびに誇らしい気持ちになる反面、怖くなりました。なぜなら、私がフリーで働くようになったきっかけはたまたまだし、どうしてこうなったのかも分からないから。とはいえ、フリーとして働いてみて感じた「するべきこと」と「してはいけないこと」を主観的にまとめてみました。
1.早起きする:○
急ぐべき締め切りがない時でも、9時前(というか、9時よりずいぶん早く)に起きるようにしました。そして、起きたらネットを見たり、本や雑誌を読んだり、音楽を聴いたり、朝ごはんを作ったり、考え事をしました。プロとして、仕事の相手(私の場合はニューヨークで働く人たち)が仕事をしている時は、ちゃんと対応ができる状態でいることは大事です。ちゃんと起きて、準備ができていれば、連絡にすぐ対応できるのですから(それに、何か大事な用事の時のための早起きに慣れる訓練になります)。
というのも、私はこんな哀しい体験をしたことがあるのです。
今より仕事が全然なかった時、夜更かしばかりしていたので、9時ではなく10時に起きることに。すると、雑誌ローリングストーンズの編集者が私を含むフリーライター数名に、人が足りないから数日間編集部に来て手伝ってほしいというメールをくれていたのです。もし早起きしていたら、読んですぐに返事をして、編集部に向かっていたと思うと、自分が世界一のアホであるように感じました。この体験から、私はひどい二日酔いの日以外は、9時前には起きることにしました。
※夜型で、3時に一番集中して働ける、という人もいるかもしれませんが、そういう場合は自分に良い睡眠サイクルを見つけなければなりません。このサイトは、合理的な睡眠サイクルを予想してくれるサイトで、役立ちますよ。
2.いろんなことに興味を持つ:○
(これは主観的な考えです)人によっていろんな考え、やり方があり、何がぴったりかは違います。何かを追求し続け、それを認められてフルタイムの仕事を得た、フリーの知人もいます。でも、フルタイムの仕事を避けたくてフリーになった人こそいろんなことに興味を持つと、得することが多いものです。
私の場合は、カルチャーとスポーツを知るためにかける時間がほぼ同じになるようバランスをとっていますが、機会ある毎に柔軟に対応できて、役立っています。人それぞれ個性があるのは分かっていますが、自分の強みがどこかを知っておくのは大事です。私の場合は、12時間新しい音楽を聴くタイプではないので、音楽雑誌に売り込みをするのはやめました。
3.強制する:×
4週間でAtlanticというウェブで8つ記事を書いたことがありますが、アイデアを絞り出すのが、とにかく大変でした。自分でも良く書けたと思える記事もいくつかあります。でも、全てに共通しているのは、書きあげるまでにたくさん編集者にマッサージしてもらい、何かに追われるような心配な気持ちを持ち続け、何とか出来上がった、ということ。
時間をかければよい、というわけではありませんが、自分に何かアイデアが浮かんでくるまで待つ時間が十分にある、というのは、楽だし、いいアイデアも浮かびやすいです。ライターとして採用されるのは、戦いの前半戦に勝っただけ。本当の闘いは、その後に記事を書くことです。
4.味方を見つけて、仲良くする:○
自分のブログに不名誉なコメントがつくこともあります。そうしたコメントがついた記事のひとつは、同世代のライターが年上のライター、編集者にフレンドリーに接しすぎることについて少し批判的に書いた記事でした(ちなみに私の立ち位置は「フレンドリーすぎず、かといってよそよそしすぎずにいよう」といったところです)。
何が言いたいかというと、理由はなんであれ、自分が一緒にいて心地よくない人には、無理して感じよくふるまうことはない、ということです。
そんなとき、他のライターを、その気が合わない編集者に紹介するのはいい方法です。できるだけ同じくらいのライター経験があって年代も同じで締め切りも守り、その編集者と仲良くできそうなタイプを選ぶのです(ちなみに、昨年フリーとして働いてよかったことは、同じような立場のライター仲間と実際に会い、悩みや希望、仕事の調子などを話し合えたことです)。
とはいえ、気が合うライターや編集者を見つけても、四六時中一緒にいるのはダメです。その人以外の編集者やライターに「自分の仕事にさいてくれる時間や努力はもう残っていないはず」とみなされます。
5.コメントを読む:○
大学2,3年の時、私はアメリカ北西部の一部の人たちにブログをしつこく読まれた経験から、匿名の悪質なコメントに対して、耐えられる強さを身につけました。
すぐにケンカを仕掛けるヤツ、論理が散漫、女みたいなヤツ、などなど、ひどいこともたくさん書き込まれました。でも、声を大にして言いたい。匿名で書かれた悪質なコメントは、気に留める価値もありません!名前を名乗っていたら、自分がイラっときた点について反論しましょう。(ついでに、ネット上のケンカの方法も学んでくださいね。)自分の意見を主張するのは、自信をつけるために大切な行為です。痛みを経験したうえで、でも、それも大丈夫だと覚えてください。
6.コメントを読む:(とはいえ×)
書かれたコメントに対して、なんでこんなことを書かれるんだ?何がいけないのか?など、考えすぎるのはよくありません。自信を持って、立ち去りましょう。永遠に。
7.編集者を尊重する:○
編集者と一緒に仕事をしているのは、あなただけではありません。連絡のたびに即答する必要はないですし、細かいことを何度も確認してはいけません(そんな細かい点、全然気にしていないはず)。たとえば特定の形容詞を使った方がいいと編集者が判断するなら、ごちゃごちゃ言わずにその判断に従いましょう。
8.自己主張を忘れる:×
とはいえ、何でも編集者の言いなりになれ、と言っているわけではありません。編集者の中には、時間や締め切りを全然気にしない人や、連絡なしに文章を削る人、原稿料の話を全然しない人、などもいます。私の場合、長い時間一緒に仕事をしていると「まあ、いいか」となんでも許してしまう傾向にあります。でも、あまりにも不当な要求をされたら、ちゃんと冷静に、落ち着いた調子で反論しましょう。
9.お金のことを聞く:○
私自身、自分が立ち上げたウェブサイト「Brooklyn's Finest」の協力者にギャラを払っていないので、書きにくい話題ではあります(ちなみにこのウェブは自分だけでやろうと思っていたのですが、それは無理だ、とまわりが手伝ってくれるようになった、という経緯があります。それに、プロボノとして無償で働いて得るものもたくさんあります)。
自分が愛する仕事(たとえばこのサイトへの寄稿!)と、お金を得るための仕事の違いを学びましょう。ウェブサイトの場合はさまざまですが、出版物はギャラがでます。原稿料の話がなかなか出ないことがありますが、それは予算内に収めるためです。
時間を費やして書いた原稿なのですから、ライターのみなさん、ちゃんとギャラについて聞くようにしましょう!このサイト(英語)は、お金の流れを説明してくれているので、参考にどうぞ。まわりの友人、知人に聞いてみるのもおすすめです。
10.友達に対して、変なふるまいをする:×
そのうち、編集者と友達になる幸運に恵まれるかもしれません。そして、自分が出したい本のアイデアを打ち明けることもあるでしょう。その本が実現することもあれば、できないこともあります。でも、それをしつこく追及しないように。友情は、大事ですよ。
11.ひとりでいることに慣れる:○
ひとりでいることが苦手で、恋人がいない期間なんて数週間でほとんどいつも恋人がいる、という友達が何人かいます。幸運なことに、著者は正反対のタイプ。ひとりでもうまく立ち回れます。
ものを書く仕事は、ひとりでやる仕事です。誰かが耳元でいろいろ話していたら、集中できないでしょう? だから、ものを書いていると、多くの時間をひとりで過ごすことになります。ルームメイトが日中働いていて家で仕事をしているという場合や、ルームメイトがいないくて、ひとり暮らしの場合は、特に。
集中する方法を知っておくのは、とても大事なことです。時には誰かの遊びの誘いを断ったり、精神的に回復するためにひとりでいるようにすることも必要です。とはいえ、人と関わるのも、(笑顔を向けられるとどんな気持ちなるかを覚えておくためにも)重要です。好きなルームメイトと話したり、外にコーヒーを飲みに行くのは、いい方法ですよ。
12.自分の体調を管理する:○
起きた後、ベッドに座ったまま仕事を始め、仕事に没頭していて午後まで何も食べないでいる...ということがよくあります。これは、言うまでもなく褒められた習慣ではありません。だから、お腹の中がからっぽの時間を長くしすぎないように、シリアルやゆで卵など簡単な食べ物を片手に仕事をするのをおすすめします(ゆで卵を1〜2つ食べておくと数時間は元気でいられますよ!)。
ビタミンを摂るのもおすすめです。ジムに入会するのが面倒なら、ウォーキングをしましょう。加工食品をさけ、日差しのある中でちょっとした運動をして、よく眠る。これは決してそう大変なことではないはずです。
忙しさのあまり、身体の管理をちゃんとできないと誇らしげに語るのは、魅力的には映りません。
13.領収書をとっておく:○
2013年にフリーランスになって初めての確定申告をしたので、あまり大きなことは言えません(書けません)が、領収書はとにかくファイルしておいて、年度末に税理士に相談しながらどれを使うべきか考えるのが、得策だと思っています。
14.自分のブランドを強調する:×
2011年まで、私のTwitter使い方はごく私的なもので、使い物になりませんでした。今は、その頃よりちょっとだけ使えるツールになっています。それは、フリーになってからアカウントを仕事でのお付き合いがある人にも公開し、連絡を取り合うツールとして使っているからです。
ソーシャルメディアは知らない人とつながり、ネットワークを作るのに、大事な方法です。でも、あなたの仕事の内容が、一番雄弁にあなたがどんな人物か、語ってくれます。だから、Twitterのフォロワーやリツイートの内容などに翻弄されず、時間と努力を重ねて、自分の良いイメージを出すことに集中してください。
15.くつろぐ:○
家で仕事をしている人が多いと思うのですが、家での仕事は楽しんでやりしょう。お金があるなら、新しいコンピュータや新しいデスクを買って、好きな音楽を聴き、日中は短い昼寝をしましょう。「自宅勤務で頭がおかしくならないためのクイックガイド」にあるように、日々仕事に追われておかしくなってしまわないよう、良い精神状態でいられるために必要なことはなんでも試してみてください。家で仕事をしているということは、いつも警戒態勢でいる必要がないということです。時々は自分にごほうびをあげましょう。
16.小さな目標を設定する:○
人生において、目標を立てることは大事です。目標とそれを達成したい時期を書いておくのです。たとえば新たに起ち上げる媒体の仕事を受ける、とか、ウェブサイトではなく雑誌に2000字以上の原稿を書く、などなど。媒体名や内容を詳しくすればするほど、やる気が出ると思います。でも、目標は高く設定しすぎないのも、大事なポイントです。
17.たくさん読む:○
長編小説、短編小説、詩、記事、エッセイ、歴史、哲学、何でも、とにかく読みましょう。特に筆が進まないと思った時には読みまくりましょう。全て、書く時に役立ちます。
18.嫉妬する:×
すごい出版社で働くことになった知人の話を聞くたびに、大きなため息をついていましたが、その後すぐに、自分は本当にその会社で働きたいわけではないことに気づきました。ただ、そういうすごい会社に求められる自分でいたいだけだったのです。なかなか難しいことですが、まわりの様子に気を取られるばかりでなく、自分の進むべき道をひた走りましょう。
書くことは短距離走ではなく、長距離走です。なぜ自分がある媒体に誘われなかったかくよくよ考えるのではなく、将来のなりたい絵を心に思い描きながら、走り続けましょう。
19.ポジティブでいること。それをまわりに広めること:○
自分ができない仕事は、できる友達にゆずりましょう。善意や思いやりを他の人にまわせば、それがまわりまわって自分にかえってきます。
モリッシー(Morrissey)も「笑うのは簡単。嫌いになるのも簡単。優しくなるには強さが必要だ」と歌っています。いつでも、前向きな気持ちで過ごしましょう!
A Completely Subjective Do's and Don'ts Guide to Making It As a Freelancer | The First Bound
Jeremy Gordon(原文/訳:曽我美穂)