週末はリラックスするための時間。とはいっても、度が過ぎると逆効果になることもあります。「土日ぐらいは思いっきり食べたり、飲んだり、何時間もテレビを見て過ごしたい!」と思うのはわかりますが、実際にこれをやってみると、体だけでなく心理的にも悪影響が出てきてしまうのです。

では、「楽しくて健康的な週末」を送るにはどうしたらよいのでしょうか。作家のエリック・バーカー氏が提案する方法を紹介しましょう。

直感を信用するから週末が台無しになる

食べ過ぎたり、飲み過ぎたりして気分が悪くなったのに、懲りずにまた同じことを繰り返してしまう...実のところ、私たちは「自分を幸せにしてくれるもの」を覚えているのがかなり苦手なのです。

ハーバード大学で「幸せ」について研究を続けるダニエル・ギルバード氏のベストセラー『幸せはいつもちょっと先にある──期待と妄想の心理学』を読んでいたとき、次のような内容が目に止まりました。私たちが「楽しくない」と感じるほとんどの原因は、「過去に自分が何をして、どんな気分になったのか」を正確に覚えていられないことにあり、このために未来についても間違った選択をしてしまうというのです。

この考えは複数の研究によって実証されていますが、ギルバート氏本人は次のように述べています。

私たちは「自分の誕生日に感じる幸せ」を過大評価し、「月曜の朝に感じる幸せ」を過小評価しています。この評価について、「自分の予想は間違っていた」と毎回確認することができたとしても、このような誤った予想を日常的に繰り返してしまうのです。

本当の幸せでなく「簡単なもの」に惹かれてしまう

自由に使える時間があった場合、私たちはたいてい「本当に幸せな気分にしてくれるもの」よりも「簡単にできるもの」を選んでしまいます。

米国の10代を対象に行った調査では、テレビを見るよりも趣味に時間を費やしたほうが2.5倍楽しいと感じ、スポーツをした場合は3倍楽しいと感じるという結果が出ています。しかし、このような効果を実感しているのにもかかわらず、実際には、スポーツや趣味に費やす時間の4倍をテレビの前で過ごしています。この矛盾はなぜ起きるのでしょうか。心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏の言葉を借りれば、こんな質問になります。「あまり楽しい気分になれないと知っていながら、私たちはどうして4倍もの時間を費やしているのでしょうか?」

この質問への答えとしては、私たちには「簡単で、便利で、習慣的なもの」に、どうしようもなく強く惹かれてしまうという傾向があり、この慣性に抵抗するのは極めて難しいことが挙げられます。

活動的な時間を過ごすのは楽しいものですが、このような行動を起こすためには、まず最初に「ガレージから自転車を出す」「美術館まで運転する」「ギターのチューニングをする」といった労力が必要になることがほとんどです。

自己流ではストレスをほぼ解消できていない

また、私たちがストレスを軽減させようとして選択するものは、ほとんど効果がないという結果も出ています。

米国心理学会(APA)が行ったストレスに関する全国調査では、一般的によく利用されているストレス解消法が、その方法を利用している人々からは「ほとんど効果がない」と評価されています。

たとえば、「食べること」をストレス解消法として挙げている人で、その行為が実際に効果的であると回答しているのは、たったの16パーセントでした。また別の調査では、女性のほうが「不安や気分の落ち込みを感じた時にチョコレートを食べる」傾向があるとしながらも、実際に気分を変えようとチョコレートを食べたところで、「罪悪感が増した」以外の効果は見られないという結果が出ています。

幸せな週末を送るための方法

週末を友達と一緒に過ごすことで、確実に幸福度を高めることができます。実際、週末が私たちに与える効果の大部分は、平日と週末の「友達や家族と過ごす時間」の長さによって説明がつくのです。平日では5.4時間、週末では7.1時間とその差は1.7時間ですが、人々と交わる時間が1.7時間増えることによって、幸福度は平均して2%ほど高まります。

これは、すでにご存じの方が多いかもしれませんね。では、ほかにはどんな方法があるでしょうか?

ある調査によると、平日の疲労を回復させるには「成功体験」を持つことも重要であるという結果が出ています。「成功体験」とは、自分の得意なことをして、その能力をさらに磨くことを意味しています。

こう聞くと、「それは仕事なのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、調査では、「私たちは忙しい時に幸せをより強く感じる」という結果も出ています。

「技術の習得」は、一時的にストレスを感じる行為ですが、長期的に見た場合には、私たちをより幸せな気持ちにしてくれます。最大の長所であり、他者にはない才能である「自分の強み」を毎日意識的に伸ばそうとしている人たちは、数カ月間にわたって、大きな幸せを感じることができるようになるのです。

577人のボランティアに、自分の得意なことをひとつ選んで、それを1週間毎日新しい方法で活用するよう勧めたところ、彼らは対照群よりもはるかに大きな幸せを感じ、気持ちが沈むことも少なくなりました。さらに、実験が終了しても、その後1カ月にわたって高い幸福度が持続していたため、長期的な効果があることもわかりました。

この研究からは、日常生活の中で自分の強みを活かすことができるほど、より多くの幸せを感じられるという結果が見えてきます。

この効果は、ほかの研究結果でも繰り返し示されています。ですから、今週末はさっそく自分のスキルを磨いてみましょう! 自分の得意なことをさらに伸ばして、エキスパートを目指してみてください。

幸せだけじゃ物足りない! ラッキーな週末にするための方法

ストレスを減らすには、こんな方法もあります。

米国心理学会(APA)によると、ストレス解消にもっとも効果的なのは、エクササイズ、スポーツ、祈り、礼拝への参加、読書、音楽鑑賞、友達や家族と過ごすこと、マッサージ、散歩、瞑想、ヨガ、創造的な趣味に時間を使うことだとされています。逆に、もっとも効果が低いのは、ギャンブル、買い物、喫煙、飲食、テレビゲーム、ネットサーフィン、そして2時間以上テレビや映画を見ること、となっています。

(『スタンフォードの自分を変える教室』より)

幸せな気持ちになったついでに、今週末には「ラッキーなこと」があるといいな、と思いませんか? 実のところ、「幸運」は魔法のようなものではなく、科学的な要素があることが長年の研究によって明らかになっています。

幸運を引き寄せる秘訣は、より多くの機会を受け入れること、大勢の人たちと交流すること、型通りの生活スタイルを破ること、そして、人生に対してリラックスした態度を保つことです。

平日も週末と同じように楽しく過ごすには

さまざまな研究で、1週間でもっとも悲しいと感じるのは日曜日であるという結果が出ています。さらにこの調査からは、実際には月曜日がそれほど悪い日ではなく、金曜日はそれほど良い日でもないことが明らかになっています。それではなぜ、私たちは月曜日を嫌いだと感じてしまうのでしょう?

これは、「実際に感じたこと」よりも「自分が感じると予想したこと」に焦点を合わせてしまうところに原因があります。

もしもあなたが、「幸せを感じられるのは週末の間だけだ」と思うなら、新しい仕事を探すほうが良いかもしれません。良い仕事に恵まれている人は、週末にそれほど喜びを感じないという研究結果も出ています。これは単純に、平日が楽しければ、週末の必要はないという理由からです。オープンで信頼できる環境で働く人たちにとって、平日と週末は、一緒に時間を過ごす友人の顔ぶれが変わるというだけで、それ以上の大きな変化はないのです。

How can you make your weekends more awesome? | Bakadesuyo

Eric Barker(原文/訳:兵藤説子/ガリレオ)