人を動かすには「説得力」が大切です。以前に「騙されないために、人を騙そうとするテクニックを学ぼう」で見たテクニックや、「頼みごとを引き受けてもらいやすくするための4つの秘訣」でわかったコミュニケーション方法を学習することで、様々な局面で使える説得力を持つことができます。

今回は加えて、誰かに「はい」と答えさせるための最も簡単な(そして少し悪魔的な)方法をいくつか紹介しましょう。

脅えさせる:不安・安堵法

まず間違いなく、最も悪魔的な操縦方法は心理学者が「fear-then-relief technique(不安・安堵法、恐怖後安心法)」と呼ぶものです。この技術は人の感情をガッチリと捕えてしまいます。

操縦者は誰かに多くのストレスや心配を与え、次の瞬間それらをふいに取り除きます。こうして突然に気持ちを不安定にさせた後だと、人は無防備になり、注意力散漫あるいは合理的な決定を下すのが難しくなり、こちらの様々なリクエストに応える可能性が高くなります。

例:「The Science of Social Influence」は、実験によりこのことを証明しました。その実験の1つを紹介します。

ショッピングモールで買物中の客に、そっと後ろから近づき肩を叩きます。見知らぬ人間に後ろから接触された客は怯えます。しかし、振り返って見たとき、それが単に時間を尋ねたかった盲人(と思われる人物)であることに気づきます。この一連のゆさぶりの後、盲人の共謀者(仕掛け人)が、慈善団体のポストカードを買ってくれないかとターゲットに持ちかけます。不安・安堵法というジェットコースターを体験したターゲットは、操作されなかったグループよりもカードを購入する可能性が高いという結果が出ました。

不安・安堵法は、古典的な「悪い警官・良い警官」の話にも見て取れます。あなたが取り調べを受けているとして、悪い警官はあなたを怖がらせ、良い警官は優しく接してきます。すると、つい良い警官にもっと話をしたくなってしまうのです。こういった図式は日常生活でも起こりえます。保険の営業戦術でもゆさぶりは常套手段です。

罪の意識を感じさせる:社会的交換

詐欺師や不道徳な販売業者が使うテクニックは「Social Exchange(社会的交換)」と呼ばれます。書籍『The Dynamics of Persuasion(説得の原動力)』はそれを次のように評しています。

AがBに具体的、または心理的な報酬を与える際の個人間の説得方法:交換においては、Aが何かのお願いをしにBに接近する場合、Bは圧力を感じる。

好意を交換し、他人のために何かをすることは人間社会の基礎的な部分です。しかし、より積極的な人々はこれを「操作することができる」という危険性も孕んでいます。

例:過去に、あなたのお財布がピンチの時に同僚が助けてくれたことがあれば、同僚は自分にとって何かが必要なとき、そのことを利用できます。

また、あなたの秘密を握っているか、お金を貸した人ならば、頻繁に要望を伝えてくるかもしれません(こちらの記事もどうぞ)。

小さなお願いを前もって伝える:フット・イン・ザ・ドア・テクニック

非常に巧妙かつシンプルなだけに、このテクニックはタチが悪いとも言えます。「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」は、非常に簡単なお願いを依頼した後で、だんだんと本来の狙いであるより大きな要望を伝えていく方法です。

例:NPR」は、さしあたってはあなたに話しかけ、次に金銭を要求してくる乞食を例に挙げています。1つのリクエストに応えさせることによって、別の要求にも応えてくれる可能性が高くなるからです。

これらの方法を回避するには

操作方法を知けば、それらの犠牲になることを回避しやすくなります。たとえば最初に紹介した「不安・安堵法」にように、感情の急激なアップダウンを感じた場合には常に警戒してください。

不注意な状態で物事に取り組む時、および他人のために何かをする時、あなたはもろくなっています。注意深く、周囲をよく見張りましょう。そうすれば、誰かがあなたを騙そうとしている場合にも見抜けるに違いありません。

Melanie Pinola(原文/訳:鈴木達郎)