YouTubeの創業者であるChad Hurley氏とSteven Chen氏。彼らはつい最近、自分たちの会社であるAVOS Systemsから『MIxBit』というビデオ共有・編集アプリケーションを世に出しました。
MixBitは16秒のビデオクリップをつなぎ合わせたビデオを投稿、共有できるアプリケーションで、現在はウェブサイトとiOS用アプリで利用可能です。
16秒のビデオクリップと聞くと、TwitterのVineやFacebookのInstagram Videoを連想してしまいますが、そうしたビデオアプリとは何が違うのか? そのサービス内容と作り手が描く構想について紹介します。
MixBitはビデオの「remix」が可能
MixBitは、最長16秒のビデオクリップを256個つなぎあわせて、最長約1時間のビデオを制作し、共有プラットフォーム上に投稿することができます。ビデオ録画の方法はVineやInstagram Videoと似ており、指で録画ボタンを押し続けることによってビデオを撮る仕組みになっています。
MixBitがVine、Instagram Videoと異なる最も大きな特徴は、MixBitでは他のユーザーが作ったビデオクリップを自由に使って、オリジナルのビデオを作ることができる点にあります。つまり、「ビデオのremix」が可能なのです。
投稿されたビデオを見ると、ビデオの下にはそのビデオを構成するクリップごとのサムネイルが表示されています。気になるクリップがあれば、それを自分のライブラリに保存して、自分のプロジェクトに使うことができます。自分が作ったビデオについても、公開後も含め、編集はいつでも可能です。
もう1つの大きな特徴は、MixBitに投稿されているビデオは完全に「匿名」である点です。投稿されたビデオは完全にMixBitコミュニティのものになります。
ビデオのremixが可能で、投稿者は匿名という、このかつていないビデオアプリケーションが目指しているものは一体なんなのでしょうか。
自分のストーリーを伝えたい人のためのツール
「伝えたいストーリーがあっても、それを実現する機会やツールを持っていなかった人はたくさんいると思う。MixBitはそういう人々に機会を提供し、それによってより良いコンテンツを提供できるようにしたい」
MixBitの目的について、アプリケーションの生みの親であるHurley氏はこのように述べています。多くのユーザーにストーリーを表現するための手段を与えたいという同氏。そのためにも、アプリは「シンプルで本能的な操作が可能であること」にこだわったそうです。
ユーザー同士のコラボレーションが可能
繰り返しになりますが、MixBitがVineやInstagram Videoと大きく異なるのが、他のユーザーが作ったビデオクリップを自由に使って、ビデオをオリジナルに編集、制作することができる点。
「ソーシャルメディアの多くは閉鎖的すぎる。コミュニティ内でシェアをしているだけだ。MixBitはユーザー同士がクリップを使って、アイデアを元にコラボレーションすることを可能にする」と、Hurley氏はMixBitがユーザー同士のコラボレーションによって、新しいコンテンツを生み出す場になることを期待しているようです。
「ビデオの世界にはもっと大きなチャンスが眠っていると感じている。もっと多くのさまざまなものが作り出せるプラットフォームを築きたいと思っている。はっきり言えば、VineやInstagramが我々と競争するには、全てをつくり替える必要がある。プラットフォーム全体をそっくりつくり変えるなんて、とうてい難しいと思うけど」
MixBitが目指すのは、単なるショートビデオの投稿、共有の場を超えた「創造的なコンテンツを生み出すプラットフォーム」なのです。
最終的なビジョンは? 「テレビや映画のコンテンツ制作のレベルまで発展する可能性も」
MixBitの最終的なビジョンについて、Hurley氏は次のように話しています。
「テレビや映画のコンテンツが世界中で作れるようになるかもしれないね。ビデオを通して、人々にインスピレーションを与えたいんだ。ビデオはアイデアを拡散するためのもっともパワフルな方法じゃないかと思っている。ある種の「映画スタジオ」ができるレベルになったらすばらしいだろう。我々がつくったプラットフォームはかなり洗練されているし、複雑にできてる。YouTubeよりも複雑なんだ」
MixBitに対する評価
このような革新的なビデオアプリではあるものの、今のところはそのサービスの価値について評価が分かれているようです。
やはり一番注目を浴びているのは、ユーザー同士のコラボレーションが可能ということ。例えば特定のイベントにおいてユーザー同士がビデオクリップを共有して、1つのビデオを作り上げるといった新しいコンテンツのつくり方も実現できるだろうと期待されています。
そのほか、話題になっているハッシュタグの数を分析して、トレンドを追うという活用方法もあるでしょう。
「匿名性はクリエイターのモチベーションを下げる」という声も
一方で疑問視されているのは投稿ユーザーが匿名である点。匿名性であるゆえに、他のビデオサービスのようにユーザーをフォローする機能もなければ、ユーザーの名前からビデオを検索することもできません。フォロワーを付けることができないというのは、クリエイターがビデオを投稿するモチベーションを下げることになるのではと指摘されています。
また、他ユーザーのビデオクリップを使って、ビデオを制作・編集するという作業は、アプリ上で実施することができず、ウェブ上のみで可能であるという点が不便であるとの声も上がっています。
*
「起業家というのは孤独な旅なんだ。ものを作り出して、それを表に出すまで、どう受け止められるか分からない」Hurley氏自身がこのように語っているように、この新しいビデオアプリがどのようにユーザーに活用され、そして広がっていくかはまだまだ予測が難しい状況です。
しかし、彼の構想通りになれば、MixBitはビデオを使って表現をしたい人々にとって、非常に面白い場になることが期待できます。外部のフィードバックを元にMixBitはどのように変化していくか。今後の展開が注目されます。
YouTube Co-Founder Chad Hurley's Next Act |Inc.
YouTube Founders Launch Challenge To Vine & Instagram: MixBit [Updates]|MakeUseOf
Hands on: MixBit is not another YouTube--but that's OK|TechHive
(佐藤 ゆき)