「ドラえもんのひみつ道具」は、のび太だけではなく、私たちのビジネスも助けてくれると主張するのは『仕事のアイデアはみんなドラえもんが教えてくれた』(渡邊健太郎著、青春出版社)の著者。自身がビジネスを立ち上げたり、改善したりするとき、よく「ドラえもんのひみつ道具」を使うのだそうです。
果たしてどういうことなのでしょうか? 第2章「ひみつ道具をヒントに既存の商品・サービスをヒットさせよう」に目を向けてみましょう。
サイズを変更するだけでヒット?
ここで引用されているひみつ道具は、光を物体に当てると、どんなものでも大きくできるビッグライトと、逆にどんなものでも小さくできるスモールライト。ポイントは、次の4点です。
- 新商品、新サービスを作るときは、まず既存の商品、サービスにビッグライトとスモールライトを当ててみる!
- サイズの変更では「日本一」「世界一」を狙って開発する。
- "ミニチュア版"を販売し、将来の実物の購買につなげる。
- 最初はハードルが比較的低い「ビッグライト」を使ってみる。(28ページより)
新しい商品やサービスをゼロから考えるのは難しいもの。そこで既存の商品・サービスを「大きく」あるいは「小さく」してしまうというアイデア。たとえば、千葉県印西市名物の「直径1.6mの世界一大きいせんべい」、凸版印刷が作った「世界で一番小さい本『四季の草花』などがそれにあたります。
重要なポイントは「日本一」「世界一」を目指すことで、この手法を用いたヒット商品が続々と誕生しているといいます。
おとな化/子ども化する
ここで登場するのは、包めばなんでも昔の状態に戻すことができる「タイムふろしき」。ポイントは、次のとおりです。
- 商品やサービスをタイムふろしき発想で、おとな化/子ども化する。
- 「大人の」と付けるだけで商品・サービスのイメージはよくなる。
- 「子ども化」された商品・サービスを、再度「おとな化」させるなど、何度もタイムふろしきをかぶせてみる。
- 「おとな化」のポイントは「懐かしさ」と「上質感」!
- 「子ども化」で大切なことは大人に憧れる心理を上手く利用すること。(34ページより)
伸び悩む既存の商品やサービスの売り上げをなんとかしたい。安価競争に巻き込まれることなく、高価格でも買ってもらえる商品を作りたい。そんなとき、アイデアのもととして使える道具が「タイムふろしき」だとか。
子ども向けの商品であれば、大人向けにアレンジ(「おとな化」)する。大人向けの商品を子ども向けにアレンジ(「子ども化」)するという発想。「大人の」にすると少し高い価格設定でも「上質だから」と買ってもらえる可能性が高くなり、価格競争から抜け出せるというメリットがあるといいます。そして「子ども化」では、子どもが大人に憧れる心理を利用し、大人がやっているさまざまなことを体験してもらうという方向性で発送すると、いいアイデアが生まれるそうです。
たとえば「おとな化」については、たとえば「大人のふりかけ」(永谷園)、「子ども化」については「こどもびいる」(友桝飲料)が例として挙げられています。
なんでもセレブ化
ここで引き合いに出されているのは、光を当てるとなんでもグレードが高くなる「デラックスライト」。このアイデアのポイントは、次のようにまとめられるといいます。
- デラックスライトを当てれば、簡単に顧客を引きつけられる。
- 「最高級」に日本人は弱い。ネットで口コミが多発し、宣伝効果は抜群!
- 材料の一部、サービスの一部にデラックスライトを当てるのも有効。
- 一部だけ最高急にするのであれば最小のコストで済む。(41ページより)
セレブリティ向けを意識して、なんでも「リッチ化」「最高級化」してしまうことで商品に魅力を与えると言うアイデアです。そして、これを利用すれば、簡単に顧客を引きつけられるというのが著者の考え方。
たとえば3箱で3150円もする日本製紙クレシアの「クリネックスティシュー至高 羽衣」、横濱カレーミュージアムで1万円で販売されている「萬カレー」など、この考え方を取り入れたヒット商品も多数生まれているそうです。
このように、ひみつ道具の発想に基づくアイデアの数々は、「なるほど」と納得してしまうものばかり。気づきそうでなかなか気づけないポイントが随所に散らばっているので、とても読みごたえがあります。
(印南敦史)