外部の騒音に邪魔されず音楽に集中できるヘッドホンを探しているなら、大きく分けて2種類の製品を検討することになります。「ノイズキャンセリング」と「ノイズ遮断」です。両者はまったくの別物です。ショッピングに行く前にこの違いを勉強しておきましょう。
ノイズキャンセリングには2種類ある
ノイズ遮断ヘッドホンは周囲と耳のあいだに物理的な「壁」を作って外部の音をブロックします。イヤホンタイプは耳の穴にぴったりフィットすることで、ヘッドホンは厚いクッションで耳を覆うことで「壁」ができあがります。
外からのノイズを遮断する分、通常のヘッドホンに比べて小さな音量で聴くことを想定して設計されています。また周囲の音が聞こえなくなるので、外出時には注意が必要です。
ノイズキャンセリングヘッドホンは、内蔵のマイクとオーディオプロセッサで周囲の音を「聞き」、それを打ち消す音を発生させるものです。
会話やエアコンの音、ジェットエンジンなどの日常的な自然音を上手にブロックします。一方で、叫び声やドアが閉まる音など鋭い音の変化に対応するのは苦手です。 こちらも、外出時にはくれぐれも注意が必要。周囲の音を打ち消してしまうので、危険回避のために聞き取るべき音さえブロックしてしまうのです。
ノイズキャンセリングヘッドホンを買うとき気をつけること
ノイズキャンセリングヘッドホン選びは簡単ではありません。中には、オーディオ品質を犠牲にしていたり、音量レベルを増幅しただけの安物ヘッドホンもあります。そこで、ヘッドホン専門サイト「Head-Fi」の創設者、Jude Mansilla氏に、ヘッドホン選びの注意点を教えてもらいました。
ショッピングを始める前に、ヘッドホンの形状を決めてください
あなたに必要なのは、イヤホン型、耳あて型など、どんな形状のヘッドホンでしょうか? ノイズキャンセリングそのものの種類と同じくらい、ヘッドホンの形状も大切です。個人的には、ノイズキャンセリングヘッドホンなら、耳をすっぽりと覆うフルサイズモデルが好きです。ノイズキャンセリングの機能に加え、耳を覆うという「防壁」も備えているからです。
レベルの高いノイズキャンセリングヘッドホンは価格も高いもの
ノイズキャンセリングヘッドホンはオーディオプロセッサを内蔵しており、プロセッサの品質がそのまま価格に反映されます。同時に、製造品質、サイズ、形状なども、コストに関係してきます。
優秀なノイズキャンセリングヘッドホンが欲しいなら、それなりの出費は覚悟すること。もちろん、1万円を切る程度の安いモデルも手に入りますが、静かなオフィスならともかく、飛行機の中で使うには役不足でしょう。コンシューマーモデルなら最高でも数万円で買えます。数十万円もするわけではないのでご安心を。
購入する前に、可能な限りヘッドホンを試用すること
ノイズキャンセリングヘッドホンを購入する前に、一度試しに装着してスイッチをオンにしてみましょう。
まずは音楽を再生せずに、周囲のノイズをどれだけブロックするかを確かめます。友人と一緒なら、距離を変えながらしゃべりかけてもらい、話し声をカットできているか確かめてください。
また、フィット感も大切です。長時間の装用に耐えられそうですか? 6時間のフライトを通して快適に過ごせそうですか? ケーブルが絡みそうではありませんか? ノイズキャンセリングヘッドホンだからといって、かさばったり、ケーブルが絡んだりすることによる不快な思いを我慢する必要はありません。買う前にショップを回り、できるだけ多くのモデルを試してください。
試しに音楽を聴いてみる
ノイズをブロックするためだけにノイズキャンセリングヘッドホンを使う人たちもいます。音楽を再生せずにキャンセリング回路だけをオンにするのです。
もちろん使い方は人それぞれですが、同時に音楽を楽しみというのなら、実際に音源を聴いてテストしてみましょう。スマートフォンにお気に入りの音楽を何曲か入れてお店に行くのです。Eminent社が公開しているテスト用の音源でもいいかもしれません。
音楽を再生しながら、スイッチをオン・オフしてみます。ノイズのキャンセル機能だけでなく、オーディオ品質もよく確かめましょう。
バッテリーの持ちと保証内容もチェックする
ノイズキャンセリングヘッドホンは、内蔵のオーディオプロセッサを動かすために電力を必要とします。ですので、バッテリーの持ちが重要です。製品ごとにバッテリー持続時間が違うので確認しましょう。
また精密な電子機器でもあるわけで、故障したら修理に出すか交換しなければなりません。保証内容をよく確認して、カスタマーレビューもチェックしておきましょう。
魔法を期待しないこと
いくら品質が優れていても、すべての雑音をブロックできるわけではありません。高いピッチの音や、突発的な鋭いノイズは聞こえてきますし、ジェットエンジンの音も完全にはシャットアウトできません。
ちなみにどんなに最高のノイズキャンセリングヘッドホンでも、音楽を聴くことに関しては優秀な(通常型の)ヘッドホンにかなわないそうです。Jude氏は次のように言っています。
いくらオーディオファンといえども、飛行機や交通機関の騒音の中で、音色の精密さや忠実なイメージングなどの細部を聴き分けたいと願うのはナンセンスです。最高のノイズキャンセラーでも、私のようなオーディオファンが求める繊細なサウンドを楽しめるほどには、飛行機や電車のノイズを完璧に取り除いてはくれません。
用途別:おすすめノイズキャンセリングヘッドホン
ほとんどのノイズキャンセリングヘッドホンは、音楽のニュアンスを強調するよりも、静けさをもらすように設計されています。とはいえ、その両方をバランスよく提供しようと設計されているヘッドホンもあります。
飛行機や騒がしい職場で使うなら:Bose QuietComfort 15
Jude氏によると、旅行や通勤でノイズキャンセリング・ヘッドホンを使うつもりなら、ヘッドホンに内蔵されているオーディオプロセッサーとノイズキャンセリング回路の性能を重視すべきだそうです。
頻繁に飛行機に乗ったり、電車やバスの通勤途中にヘッドホンで音楽を聴いたりする人は、ノイズキャンセリング効果を第一に考えるべきです。最も効果的なヘッドフォンは、高度なノイズキャンセリングと優れた遮音性を組み合わたモデルです。
QuietComfortシリーズは非常に優れたノイズキャンセレーションを備えています。Jude氏によると、「QuietComfort 15」は通勤に最適なノイズキャンセリングヘッドホンとのこと。軽くて快適、長時間の着用でも疲れません。また多くの量販店でも売られているので、購入前の試用も簡単です。
ただし、オーディオ品質には少し不満が残るそうです。 Jude氏はオーディオマニアはQC15sに満足しないだろうといいます。静かな場所で、音楽の繊細な美しさを楽しむにはあまり向いていないかもしれません。
お金に余裕があれば、オーディオ品質も優れた「Sony MDR-1RNC」がおすすめとのこと。SonyはBoseよりも大きなフルサイズのヘッドホンセットを製造しており、価格に見合うだけの機能を提供しています。
MDR-1RNCsのノイズキャンセレーション回路には異なる3つのモードがあり(オフィス、バス、飛行機)、周囲のノイズを解析してモードを自動で切り替えてくれます。Jude氏によると、ノイズの除去ではQC15sに若干劣るが、オーディオ品質では秀でているそうです。また、バッテリーが切れても(USBで充電可能)音楽を聴くヘッドホンとしては使えるのも、便利なポイントです(QC15などでは不可能)。
ワイヤレスなら:Logitech Ultimate Ears UE9000 Bluetooth Wireless Headphones
ワイヤレスのものを探しているなら、それなりの出費を覚悟してください。ノイズキャンセリング機能を搭載したBluetoothヘッドホンは、Bluetoothにつきもののオーディオ品質の低減を補うために、特別な機能とオーディオプロセッサを搭載しています。
Jude氏のおススメは「Logitech Ultimate Ears UE9000s」。優れた製造品質、20時間のバッテリー、ケーブルでもワイヤレスでも使える柔軟性を備えたヘッドホンです。ちなみに、ワイヤレスでも十分にいい音ですが、ケーブルを接続するとさらに音が良くなるそう。
とはいえ、欠点もあります。UE9000sはノイズキャンセレーション回路をオンにしないと、ワイヤレスヘッドホンとして使えないのです。また、ノイズキャンセレーションそのものも他のモデルに比べると非力といえます。
ワイヤレスが使いたくてオーディオ品質も重視するという人には「Parrot Zik」があります。オンイヤーコントロール、マイク機能(スマートフォンと一緒に使えば音声通話が可能に)、骨伝導センサー、NFC、頭部検出センサー(ヘッドホンを外すと自動的に一時停止してくれる)など、便利な機能がたくさん搭載されています。
iOSやAndroidのアプリを使えば、ヘッドホンのイコライザーを完璧にコントロールできます。Jude氏のよると、今まで試した中で最高技術のノイズキャンセリング・ヘッドホンであり、高価なものの価格に見合う機能や性能を備えているそうです。
自分にぴったりなヘッドホンを見つけて、快適な音楽生活を過ごしてください!
Alan Henry(原文/訳:伊藤貴之)
Photo by Toshiyuki IMAI, Vernon Chan, kidn0thing.