99U:創造力は先天的なものと思われがちですが、実際は「持って生まれたもの」と「その後の育て方」の、繊細なバランスの上に成り立っています。言い換えると、クリエイティブな思考は必ずしも「優秀な遺伝子」や生まれ持った能力で決まるわけではなく、外的な力によって強化できるのです。

ありがたいことに、最近の研究では、様々な心理的アプローチや環境的アプローチによって、創造力を高められることがわかっています。今回は創造力を育む7つの方法を紹介します。

1. 自分に制限をかける

絵本『Green Eggs & Ham』は、著者のドクター・スースが、「50の単語があれば物語を作ることができる」と断言して書いた本として有名です。これに関して、スース氏が正しいことを証明する研究結果も出ています。大抵の人はブレインストーミングをするときに「最も抵抗が少ない」道を自然に選び、既存のコンセプトや古い考え方に基づいて考えてしまいがちですが、これではクリエイティブなアイデアは期待できません。

脳の働きを最高潮にするには、ドクター・スースの真似をしてみるといいでしょう。創造中の自分に制限をかけることで、過去の栄光に頼ることができなくなります。通常1000単語のショートストーリーを書いている人なら、500単語で書くことに挑戦してみましょう。曲を作るなら数種類のコードだけ、デザインをするなら数色だけ、という具合です。タスクに制限をかけることで、あなたの中で最もクリエイティブな側面を引き出せるでしょう。

2. 手を着ける前に、問題をバラして見つめ直す

過去の研究から、クリエイティブな人は、クリエイティブな仕事に着手する前に、問題を再概念化する傾向があることがわかっています。

アインシュタインは、「問題を解くのに1時間与えられたなら、55分は問題について考え、残り5分で解決策を考えるだろう」と言ったそうです。創作物の最終目標(例:「印象的な絵を描かなければならない」)に目を向けるのではなく、着手する前により有意義な別の側面から問題を見つめ直す(例:「誰もが失恋後に感じるあの寂しさを想起させるのはどんな絵だろうか」と考える)方が、良い結果につながるのです。

多くの場合、プロジェクトに着手する前に、想定される聴衆を心に描いておくのがベストな方法です。「何が彼らに刺激を与えるのだろう」「彼らが聞き飽きている言葉は何だろう」「彼らが直面していながらあまり口に出すことのない問題は何だろう」と想像してみるといいでしょう。

3. 消費と作業を分ける

情報収集と創作を同時に行おうとすると、創造力を発揮しにくいと言われています。情報の消費は、マルチタスクを意識する必要のない「吸収状態」のときだけにした方がいいようです。

本質的に吸収状態とは、アウトプットよりも消費を重視する「一括処理」のことを指します。情報を消費している間は、作業に着手して情報消費を中断するのではなく、EvernoteやPocketなどのツールを使って、重要なアイデア、洞察、記事などを記憶することに努めましょう。後の創作でこれらを利用するのです。

4. ポジティブな気分を保つ

ネガティブな気分が創造力を刺激することもありますが、多くの場合、「強力にポジティブな気分でいる方が創造力を発揮しやすい」と研究で明らかにされています。実際、愛しているという感覚はもちろん、愛について考えるだけでも、クリエイティブな思考が生まれやすいようです。

「ポジティブな状態」に自分を持っていくには、軽い運動をする、将来のことを心に描く、懐かしいことを思い出すなど、いろいろな方法があります。そうやって気分を高めてポジティブな状態になることで、創造力を最大限に発揮できるのです。

5. 反実仮想を用いる

反実仮想 (Counterfactual thinking・反事実的思考)とは、「もし~だったらどうなっていただろうか」という考え方です。これにより、短い時間であれば創造力を強化できることがわかっています。このテクニックを試すには、過去の出来事を取り上げ、異なる結末を想像してみてください。出来事から要素を取り除く「引き算的な見方」と、出来事に要素を付け加える「足し算的な見方」の両方を試してみましょう。

米ドラマ『The Big Bang Theory』において、反実仮想のバカげた例が取り上げられたことがあります。主人公の1人が、ルームメイトにこう聞きます。「サイがペットとして飼われていたら、第二次世界大戦は誰が勝っていたと思う?」

これは、もっと現実的なシナリオにも当てはめられます。例えば、クリエイティブな問題解決の成果を計画する際に、「もし~だったら」という要素を足したり引いたりすることで、成果が変わってくるはずです。

6. 空想するなら着手後に

空想が創造力を高めることはわかっていますが、それが機能するのは、プロジェクトに向けた取り組みに着手した後だけであるという研究結果も出ています。なぜって? 空想はアイデアをあたためるのにに役立つものだからです。あたためるにしても、その基となるアイデアがなければ意味はありません。空想を始める前に、プロジェクトに着手しておくことが大切なのです。

7. 人のことを考える

「心理的距離」も、創造力を発揮するうえで大切な要素です。例えば、ある研究によると、自分の仕事があとで他人に使われることを想像できる人ほど、斬新なアイデアを思いつきやすいことがわかっています。逆に、自分の創造したものを自分で使おうと考えている人は、あまり斬新な発想はできないようです。

ある実験では、参加者に絵を描かせる際、あとでその絵を物語作りに利用すると伝えたところ、できあがった絵がずっと「クリエイティブ」なものになったそうです。クリエイティブな仕事をするときは、たとえ個人的なものであっても、誰かが使ってくれること、楽んでくれること、生活の一部に取り込んでくれることを想像するといい結果が得られるようです。

さあ、あなたはどんな方法で、新しいアイデアを創造しますか?

7 Ways to Boost Your Creativity | 99U

Gregory Ciotti(訳:堀込泰三)

Photo by Thinkstock/Getty Images.