ペースの早いビジネスカルチャーでは、一度に山のような量の仕事をこなす忙しい人が褒め称えられています。しかし、ビジネスコーチのDave Crenshaw氏は、一般的なマルチタスクは生産性を下げてしまうと反論しています

彼は新著『The Myth of Multitasking: How "Doing It All" Gets Nothing Done(マルチタスク神話~全てをこなす=何も終わらせられない)』で、運動をしながらテレビを見るような「バックグラウンド・タスキング」と、集中力を維持するために2つのタスクを交互に行うことで、かえって切り替える時間を無駄にしてしまう「スイッチ・タスキング」の違いを述べています。

集中力が下がる時間を減らし、従業員が次の作業も全力で集中して、タスクを完了させる環境を作るにはどうすればよいのでしょう。以下はマルチタスクに関しての認識を変えることをテーマとした、米LiefhakerからCrenshaw氏への質問とその答えです。米Lifehacker:個人の生産性についての本を読んだ経験がある人は知っている内容でしょうが、複数のタスクを交互に作業すると高い負担がかかります。しかし、しっかりとした知識を持っているのと、ルーティンを変えてスイッチ・タスキングを減らすことは全く別です。ルーティンを変えるために日頃スイッチ・タスキングを行う人は何をすべきだと思いますか?

Dave Crenshaw氏:「文化の違い」と「マルチタスクが生産的な行為であると思っている人が多い」という2点から、スイッチ・タスキングは受け入れられています。

アメリカで喫煙率が下がっている原因は、タバコが社会的に受け入れられなくなってきているからです。もし、マルチタスクが社会的に受け入れられなくなれば、同じようにみんが変わり始めるでしょう。

しかし、私は最終的に人が変わるには、1対1での訓練かセラピーが必要だと気が付きました。それこそ、まさに私が「TimeGym program」を作ったきっかけです。本の中のワークシートは、読者自身が彼らのスイッチ・タスキングの影響を体験するために役に立つでしょう。

米Lifehacker:多くの社員はオープンなレイアウトのオフィスで働いており、自分専用のオフィスや小部屋を持っておらず、ほかの社員と同じ空間にデスクが置かれていることがほとんどです。このような配置のオフィスで働いている場合、邪魔が入ることもしばしばあります。同僚があなたのデスクで立ち止まって質問をする、 メールを早急に処理する、受信ボックスを常にチェックするなどです。管理職以外の社員であっても、怠け者と思われることなくスイッチ・タスキングを減らす方法はあるのでしょうか?

Dave Crenshaw氏:まさにそのようなシチュエーションが生産性を下げる原因です。中間管理職や第一線で活躍する社員は、このような環境を簡単に変えられません。「ビジネス」や「組織」は、そのリーダーの存在を反映しているといえます。組織全体の生産システムを改善するためには、まずリーダー自身が変わらなければなりません。成し遂げるためのヒントを2つ紹介します。

  1. あなたを妨害する人と定期的なミーティングをする機会が作れますか? 私の経験上、これで妨害される回数を簡単に減らせます。
  2. リーダーがスイッチ・タスキングの影響に注目するようにし、上司に関連した本をプレゼントとして渡すと、やんわりと問題を伝えることができるようです。

米Lifehacker:スイッチ・タスキングを阻止する環境を作る会社は良くなるのでしょうか? それとも悪くなるのでしょうか?

Dave Crenshaw氏:「変化」はとても長いプロセスの始まりです。この問題の解決に取り組もうとしている大企業も、いまだ準備段階でしかありません。さらにほとんどの小さな企業は、問題の原因にすら気がついていません。

一般的に、企業は生産性に問題があると認識していますが、どう前進すべきなのかわからずにいます。認知度は上がっていますが、今後10年でさらに注目されるようになり、改善されるのではないかと考えています。

米Lifehacker:スイッチ・タスキングの理由は、テクノロジーの進歩によるものではないとおっしゃいましたが、テクノロジーを使ってスイッチ・タスキングをしているのは問題ですよね。しかし、テクノロジーを切り離すのは(サイレントにする、またはメール受信ボックスを閉じ...など)、何かに集中するための最善の方法だと言えるでしょう。執筆に集中するために全くメールを使わないDon Knuth氏のアプローチや、特定のテクノロジーの利用を意図的に避ける行為について、どう考えますか?

Dave Crenshaw氏:それは素人の大工が親指を金槌で打ってしまった後に、道具に文句を言って捨てるようなものです。その痛みの原因は道具にあるのでしょうか。それとも道具の使い方における知識不足でしょうか?

テクノロジーの使い方において、一番重要なのはタイミングです。テクノロジーを単に遮断してしまうのは、板に釘を打つために石や手を使うようなことです。そんな時に必要なのは、例えば、スキルトレーニングや「ファイヤーウォールする(必要な情報のみを取得する)」ことです。これは非常に素晴らしいスキルで、切り替えの回数を減らすことに役立ちます。覚えておきたいスキルの1つで、生産性だけでなく、メンタル面でも重要になってきています。

まとめ:スイッチ・タスキングを減らすためのヒント

それではいよいよ、スイッチ・タスキングを減らし、時間を有効利用するために、Crenshaw氏からのヒントを紹介します。

テクノロジーを制御する。携帯の呼び出し音(バイブレーターも含め)やメールの通知をオフにしても何ら問題ありません。うるさい音を消して静かな環境を作りましょう。

本当に実行できることでスケジュールを作る。留守電やメールはその日や週の決められた時間にのみ確認をします。あらかじめそのスケジュールを伝えておけば、周囲があなたから返事が来るタイミングを把握できます。

人に目を向ける。パソコン操作中のスイッチ・タスキングのデメリットは効率を下げることですが、「人間」をスイッチ・タスキングしているならば、人間関係にダメージを与えてしまいます。良く聞き、次に進む前に全ての処理が済んでいるかを確認しましょう。

あなたのオフィスそのものがスイッチ・タスキングの温床になっていませんか? もしくは、あなたが邪魔されず10分間集中して仕事をするために必要な時間とスペースが確保されていますか? 絶え間なく受信ボックスの確認をしていたり、レポートや計算をしているべきなのに新しいメールを打ったりしていませんか?

Gina Trapani(原文/訳:Rhyeh)