あなたも自宅で仕事をすることに決めたのですね? それでは、フリーランスでソフトウェア開発者をしている私の話に、少し耳を傾けてください。従来のオフィス勤務から自宅勤務に切り替えて1年。この変化は、私の仕事生活における最もすばらしいことであり、最も悲惨なことでもありました。

今回は、自宅勤務で頭がおかしくならないためのクイックガイドをお届けします。

割り込みはないけれど、セルフコントロールを見つける必要あり

自宅勤務になると割り込みが入らなくなります。オフィスで働いていれば、ミーティング、おやつの時間、防災訓練、休暇の自慢話をしにくる同僚など、ひっきりなしに割り込みが入ります。

自宅で仕事をすれば、多くのことを自分の好きにできます。トイレにも行かず4時間ぶっ通しで働き続けたいなら、それも可能です。ソンブレロをかぶってナチョスを食べ続けたって、誰もとがめません。そうやって自分ですべてをコントロールできたら、生産性が劇的に向上すると思っている人も多いでしょう。しかし、事態はもう少し複雑です。

やってみればわかりますが、邪魔が入らなくても長時間集中するのは困難です。頻繁に割り込みが入る環境に慣れきっていた私は、20~30分集中するのがやっとでした。結局、自分で自分の邪魔をしてしまうのです。TwitterやFacebookをチェックしたり、空想にふけったり、キーボードに落ちたナチョスを掃除したり...。

オフィス勤務では自然と自制心が働きます。面白そうな動画をすべてチェックしたり、ニュースサイトの記事を全部読んだりなんてことはできませんよね。

セルフコントロールを身につける方法はシンプルです。ただ「実践」あるのみ。私は1カ月間、「ポモドーロテクニック」に取り組みました。これは効果がありました。自分がいかに気が散りやすいか、またそれをいかに制御するかを学びました。今ではナチョスなしで1時間は耐えられます。

「今日は何もしなかった」というプレッシャー

オフィス勤務なら、「調子が悪い日」でも何らかの達成感は得られます。どんなにダメな日でも、職場までドライブして、コーヒーを飲み、会議に顔を出し、同僚たちに愚痴をこぼすことはできます。具体的なタスクをこなしたわけです。

自宅で仕事をしていると、「今日は何もしなかった」と感じる日が時々やってきます。仕事に取りかかってもすぐ気が散ってしまい、なんとか数時間格闘したタスクも、後から全部やり直すはめに...。なにも達成できていません。

もちろん、こうしたダメな日はオフィス勤務でもあったはずですが、自宅で一人ぼっちで仕事をしていると、余計に落ち込んでしまうのです。覚えておくべきは、調子が悪い日もあれば、とびきり生産的になれる日もやってくること。1週間のタスクを1日で片づけてしまえるような、そんな日もあるのです。

深刻な抑うつに襲われる

長いこと人に会わずに家で仕事をしていると、自分がどれほど他者との交流を欲しているかに驚くことがあります。「このゲーム知ってる?」とか「おっと、今日は金曜日じゃん!」などのくだらない会話でさえ、大切なものだったのだと気づきます。ひとりで黙々と作業していると、「なんで自分は今、仕事なんかをしているんだろう?」という疑問が頭をもたげてきます。

きっと次のような言葉が浮かぶ瞬間が何度も訪れるはず。

  • 家で働いてるんだから、散歩にいけるじゃん。行っちゃえ!
  • 家で働いてるんだから、ヨーグルト食べられるじゃん。食べちゃえ!
  • 家で働いてるんだから、自転車乗ってもいいじゃん。乗っちゃえ!
  • 家で働いてるんだから、TV見たっていいじゃん。見ちゃえ!

季節が春だったりすると、家にじっとしているのが耐え難くなってきます。窓から外を眺めて、涙を一筋流します。こんなに素晴らしい日に、いったいどうしてPCなんかとにらめっこしているんだろう...。

オフィスで働いていれば、「なんでホッケーをしないで仕事をしているのだろう?」などと思うことはありません。そんなことをすれば即刻解雇になるのは目に見えています。

また、人々と連絡を取り合うのを怠ってはいけません。自宅にこもって仕事をしていると、知らないうちに深刻な抑うつ症になっていることがあります。次のような覚えはありませんか?

  • 朝、元同僚と偶然会って、20分以上も話し込んでしまった。出勤前の忙しい時間だというのに...
  • TwitterやFacebook,、Google+で活動的になりすぎて、友人たちに動画を送り続けている
  • 音楽を聴くかわりにTVばかりを見て、気がつけばアニメのキャラクターに話しかけている
  • まだ何かを感じられることを確かめるために、刺激を求めてダイエットペプシを飲む

上のどれかに当てはまったら要注意。さっさと服を着替えてコーヒーショップに出掛けてください。

自宅で働く最大のメリットは子どもたちと過ごす時間が増えること。ただし、最大のデメリットでもある。

これは私の個人的な事情ですが...

  • 遊び盛りの子どもたちと同じフロアで仕事をしている
  • 妻も子どもたちと一緒に家にいる
  • 仕事中に音楽を聴く習慣はなかった

子どもたちがいることがストレスになっていました。仕事に集中したい時はとくにそうです。そして、トイレやナチョスを取りに行くたびに、子どもたちに「まだだよ」と言わねばならないのが苦痛でした。自分は悪い父親だと感じていました。

しかし、家で仕事をすることは、子どもたちと過ごす時間が増えることなのだと気づき、通勤に費やす時間と、子どもたちと過ごす時間、どちらが価値があるか比べてみました。すると、ストレスは徐々にやわらいでいきました。

私の「それなり自己管理法」

私はどちらかというと行き当たりばったりな人間です。自宅で仕事をするなら、それなりの自己管理が必要です。以下のことが役に立ちました。

  • すばやく参照できる「ToDoリスト」を作る(workflowy、Remember The Milkなどで)
  • 「日次計画」を作って一日に何度もチェックする
  • 先週やったとこと、今週やるべきことが一目でわかる「週間計画」を作る
  • クライアントや上司などと面談する日がわかるスケジュールを作る

楽しんで!

まだ将来のことはわかりません。自宅で働くスタイルを維持できるか、やりきれなくなるか、いまのところ不明です。でも、自宅勤務を始める時、あとで後悔しないように、精一杯いい仕事をして、精一杯楽しもうと決心しました。そのことを忘れないために、ホワイトボードに「サンディエゴはクジラのアソコという意味!」と大きく書いておきました(オフィスでは絶対できないことです)。

恐れず前進して、毎日を楽しんでください。そして、シャワーを浴びるのを忘れずに。

How To Work From Home Without Going Insane (Purple Monkey Dishwasher) | Certain Extent

David Tate(原文/訳:伊藤貴之)