ホテルマン、自動車販売会社を経てセゾン生命(現・ジブラルタ生命)に転職。着実に実積を積み上げていき、やがて全国トップ5の常連へと成長。そして2004年に独立し「アイエスコンサルティング」を設立してからも、独自の営業スタイルを駆使して活躍中。文字どおり営業のプロフェッショナルである著者が、独自の営業術を明らかにした書籍が『99%断られない営業の仕組み』(大塚巌也著、現代書林)。

「マインド」「テレアポ」「アプローチ」「FF(ファクト・ファインディング)」「プレゼンテーション」「クロージング」「紹介依頼」と、営業にまつわるひとつひとつのことがらについて、簡潔に要点をまとめています。そして、そのアプローチはとても個性的。

一例として、第1章「マインド 営業マンの必須条件」から「目標を明確にする7つのプロセス!」を引き出してみます。

ダイエットを例にした、分かりやすい目標設定の方法

営業マンにとって重要なのは、どのように目標を決めるかということ。著者は「目標設定の7プロセス」という考え方を使っているそうですが、ダイエットを例にとってそのことを説明しています(以下すべて、19〜22ページより)。

1.明確な理想

「とにかく痩せたい」と思っているAさんと、「48キロまで痩せたい」と考えているBさんがいたとしたら、実際に痩せられるのはBさんだそうです。理由は、明確な理想を持っているから。保険営業の場合も、「年収2000万円」などの基準を持つといいとか。

2.正確な現状

「48キロまで痩せたい」と思っているが、現在の自分の体重がわからないAさん。同じく「48キロまで痩せたい」と思っていて、自分の体重は58キロだとわかっているBさん。この場合も、痩せやすいのは「正確な現状」を把握しているBさん。保険営業なら、「前職500万」という現状を把握したうえで目標を目指せばいいわけです。

3.適切な期限

「とにかく早く痩せたい」と思っているAさんと、「3カ月後までに48キロにする」と決めているBさん。やはり痩せられるのは、「適切な期限」を定めているBさん。営業の場合も、「1年以内に」などの期限をつけることが重要だそうです。

4.定期的な確認

3カ月以内に48キロにしたいと思っているものの、月に一度しか体重計に乗らないAさん。同じ目標を持っていて、毎日体重計に乗っているBさん。いうまでもなく、確実に痩せられるのは「定期的な確認」をしているBさん。営業マンも「週1回」など、定期的な確認をすることが大切だといいます。

5.表面的な目的・目標

次に、なぜ痩せたいのか。Aさんは「48キロまで痩せたい」と思い、Bさんは「48キロになって青いドレスを着たい」と考えている。Bさんの方が痩せやすいのは、青いドレスという「表面的な目的・目標」を持っているから。営業マンなら、たとえば「お金を稼ぐ」というような「表面的な目的・目標」が大切。

6.本当の目的・目標

「青いドレスを着たいから痩せたい」と思っているAさんに対し、Bさんは「青いドレスを着て結婚パーティに出席したい」と思っている。これが「本当の目的・目標」であり、こうした具体的な目標を持っていれば痩せられるということです。保険営業マンなら、「MDRT(金融のプロフェッショナルで構成される組織)に入会して一流になる」など。

7.強い動機

Aさんは「痩せてパーティに行きたい」。Bさんは「結婚パーティに行って彼氏をゲットしたい」。この場合も、痩せられる可能性が高いのは「強い動機」があるBさん。営業マンなら、「『ありがとう』と言われたい」などがその動機になるそうです。

非常にユニークですが、「何かを成功させたいと思うのであれば、必ずこういうキーワードに沿って物事を進めていかないと達成できない」と著者は断言しています。そして著者自身も、なにかが成功したときはこういう手順を踏んでいるそうです。明確な理想があって、正確な現状を知り、期限を切って、定期的にチェックする。そして表面的な目標・目的があり、それを突き詰めていくと本当の目標・目的があり、その裏には強い動機があるということ。

本書では、営業マンだから語れる営業術が、他にも数多く紹介されています。読んでみれば、新たな営業スタイルをつかめるかもしれません。

(印南敦史)