あなたは1日に6時間以上、オフィスのイスや家のソファに座りっぱなしですか? そうであれば、心臓病の危険性が64%以上高まり、寿命が7年縮まるそうです。また、がんになる危険性も上がります。
簡単に言うと、座ることで命が短くなるのです。怖いですね。けれども、どんなになまけものな人でもできる対策があります。
基本的な話から始めましょう。子どものころから座ってばかりいるとダメだと言われてきましたよね。なぜでしょう? 私たちの体は1日中座るようにできていないからです。エクササイズをしている人でも、1日中座っていると体に悪いのです。中には1日15時間以上座り続けている人もいます。起きている間、オフィスのイス、ソファ、あるいは車の座席で大半を過ごしているようです。
1日中座ることによる弊害を和らげるのは難しくありません。日中の活動と、座っている時間に注目してください。まず、どのような悪影響があるのか見てみましょう。
期間ごとに違う、座ることによる影響
食事やほかの要因にも左右されるので、1日中座っているとどうなるかを正確に調べるのは難しいそうです。そこで、まず比較的健康な人、あまりお酒を飲まず、たばこを吸わず、太っていない人の場合を例に取ります。座った直後、体に何が起きるかに基づいて、6時間座り続けるとどうなるのかを考えてみましょう。
座った直後
座るとすぐに筋肉の運動量が減り、カロリーの消費率は1cal/分に落ちます。これは、歩いているときの1/3にあたります。24時間ずっと座っていると、インシュリンに吸収されるグルコースの量が40%減り、2型糖尿病の原因となります。
1日に6時間以上座る生活を2週間続けると
常に座る生活を続けて5日以内には、プラズマトリグルセリド(脂肪分)、悪玉コレステロール、インシュリン抵抗が増加します。筋肉が脂肪を消費しなくなり、血糖値が上がり、体重が増えるでしょう。たった2週間で筋肉が委縮して、最大酸素消費量も低下します。階段を上るのがつらくなり、動くことがおっくうになるでしょう。毎日運動していても、体が衰えてきます。
1日に6時間以上座る生活を1年間続けると
1年後には長期的な影響が少しずつ出てきます。米誌「Nature」の研究によると、体重が増加し、コレステロール値が高くなるようです。女性を対象にした研究では、1日に6時間以上座ることで骨量が年間1%失われることがわかりました。
1日に6時間以上座る生活を10~20年間続けると
誰しもが望むような良質な人生を7年分失います。心臓病で死亡する確率が64%、また前立腺がんや乳がんにかかる危険性が30%増加します。
ですが、恐れないでください。生活習慣を少し変えるだけでこれらの悪影響を克服できます。
今の生活を続けながら座ることによる弊害をなくすために
心掛けることはたった2つです。1時間に1度立つことと、1日に30分体を動かすこと。オーストラリアで行われた研究によると、ソファでテレビを見続ける人であれ、コンピュータの前でずっと座って仕事をしている人であれ、1時間に一度小休憩をはさむと、先に示した悪影響のかなりが改善されるそうです。これは普通の運動とは少し違います。運動は体にいいことですが、座る弊害を軽くしてくれるわけではありません。適度な運動を生活の中に取り入れ、座ることから体を解放させてあげましょう。
適度な運動とはどのようなものでしょう。サウスカロライナ大学エイケン校運動健康科学学部の准教授である、Brian Parr博士に聞きました。彼は、普通の運動と適度な運動の違いを以下のように話していました。
適度な運動はウォーキングに似ています。庭仕事や家の掃除など、体を動かすことは何でも含まれます。俗にエクササイズと言われるものをする必要はないのです。
もちろん怠け者やオフィスワーカーは、いつもこのようなことに30分も時間を割けないかもしれません。しかしうれしいことに、1日の中で30分を分割してもいいのです。Parr博士は次のように言っています。
これが、適度な運動のいい点です。僕は、10分ずつ区切ってもいいからと人に勧めています。とても現実的ですよね。ただ、『1日の中で分割してもいい』と言うと、『立ち上がってソーダを取りに部屋の中を歩くよ』と言ってくる人がいます。それは10秒とかからないでしょう。このように、動く時間をとても細かく管理しようとする人がいますが、私としてはそれが最善の方法とは思いません。しかし、それでもうまくいくことはいきます。
秒単位や数分単位ではなく10分ごとに区切るといい理由は、こうすることにより体に少々の負担をかけ持続力を養えるからです。もう階段を上っただけで疲れることはありません。考えてもみてください。毎日10分ずつマラソンの練習をする人がいるでしょうか。マラソンランナーは長距離を走って持続力をつけますよね。日々の生活でも同じことです。毎日の生活に役立つ程度に、ある一定の間は続けて体を動かしましょう。
次に、どのように日々の活動を測定し、忘れずにオフィスのイスから離れるかをお教えします。
歩数計であなたの基準値を計りましょう
まず、普段どれくらい動いているかを計りましょう。歩数計で歩数を計るのが最も簡単だと思います。Amazonで購入するのもよいし、iPhoneやAndroidのアプリを使ってもいいでしょう。
まず30分歩いてみて歩数を計ります。私の場合4000歩弱です。歩く速さや歩幅は人によって違うので、歩数もそれに基づいて変わります。
次に基準となる毎日の活動量を計りましょう。朝起きてすぐ歩数計をつけ、その日ベッドに入るまでそれをポケットに入れておきます。これで普段の活動量が計れます。
私の場合、運動をしない日の歩数が2000歩と恐ろしく少ないです。1日に1.6kmも歩いていないことになります。もっと動かなければいけないことは明らかです。
毎日の行動を少し変えて目標活動量を達成しましょう
1時間に一度、1、2分立つだけで、座ることからくる悪影響を和らげられます。厳密には立つだけで動かなくてもよいのです。忙しく働いていると、立つことを忘れてしまいがちです。そこで1時間ごとにコンピュータのアラームを設定するとよいでしょう。Macでは、「設定→日付と時間→時間のお知らせ」から設定してください。Windowsでは、「コントロールパネル→ツール→タスクスケジュール」で設定してください。
アラームだけで物足りない場合は、ソフトウェアをダウンロードするとよいでしょう。Windowsを使っている人は、『Workrave』や『Breaker』などが無料でお勧めです。Macには『Time Out』がいいでしょう。時間がくるとお知らせしてパソコンの画面が薄暗くなるので、イスから離れざるを得なくなります。
小刻みの時間をどう活用するかはあなた次第です。動きたくなければじっとしていてもよいです。机を離れることなく、少し動きたければ次のことを行うとよいでしょう。
立って20秒間その場で行進し、足を伸ばしたまま上半身を下に曲げて20秒キープします。最後の20秒で少し歩き回りましょう。
私はiCadeを目の高さまで持ってきて、立っている間も何かしら作業をしています。数分間ただ立っているだけというのは苦痛で、常に何かをしていないと気が済まないたちなのです。ストレッチをしたくないときにこういったガジェットは目的らしいものを与えてくれます。
くだらないCMの間に立って動きましょう
テレビCMにはうんざりしますよね。20年間変わらない車のCMを見て時間を無駄にするのではなく、立ってエクササイズしCMの時間を有効に使いましょう。
CM中に建設的なことをしようと、私は、仕事机ではなくリビングテーブルにToDoリストを置いています。ゴミを外に出したり、洗い物をしたり、ゴミ箱を掃除したりと、短時間でできることを書き留めておきます。これでCMを見なくてよくなります。
オンラインゲームで遊んでいるときは、ゲームの終わりに近づくと立ち上がるようにしています。1人用のゲームをしているときは、プログラムを立ち上げている間に立ちます。
大事なことは、座ってしている活動の多くには少し休憩をはさめる瞬間があるということです。読書中、1、2章読み終わったら立ってみてください。ボードゲームをしているときは、各戦が終わったら立ち上がりましょう。座り続けるのではなく、立ってください。簡単ですよね。
1時間に一度立ち上がること、そして1日30分動くことが大切です。これだけです。太っていない限り、座る弊害を和らげるためにエクササイズをしたりジムに通ったりする必要はありません。1日を通して動いていることが大事なのです。
Thorin Klosowski(原文/訳:駒場咲)
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