20歳になったJリーグ開幕がうれしいFP山崎(@yam_syun)です。スカパー!でひいきチームの試合は100%観戦しています(弱小の頃からのレッズサポ)。今年はホームゲームを何度か見に行きたいものです。

さて、今回は「お人好しのあなたが投資でカモにされる基本的仕組み」を考えてみたいと思います。もしあなたが「自分は初心者だからプロのアドバイスに期待する(自分で勉強する気はまったくない)」と「今みたいに株価が上がっているとき乗り遅れたらもったいない(もちろん自分で勉強する気はあまりない)」をセットで感じていたら、ネギを背負ったカモでしかありません。

あなたがだまされるのはなぜでしょうかお人好しほどカモられる世界へようこそ

マネーの世界においてカモられるのはとても致命的です。というのは「新商品のクッキー食べてみたけど、外れだったわ」となっても、日々消費する数百円の中にムダづかいとして消えていきますが、「老後のための500万円を投資してみたら、半分に減っていたわ」というのは消費財の損失とは比較にならないほどダメージが大きいからです。

この例え話だと250万円の損失ということになりますから、食品の外れ(数百円程度)で、かつ一過性の損失とは比べものにはなりません。老後の20年の家計に影響を及ぼします。マネーの世界において、損失可能性をコントロールする重要性はここにあります。

投資に保守的な判断をするのは正しい考えで、自分の理解が及ばない商品に手を出さないのは重要なことです。しかし、インチキ投資話の多くは魅惑的なので、欲の皮が突っ張るあまりダマされる人が後を絶ちません。

投資商品以前の、ネズミ講レベルのインチキ金融商品や、エビの養殖場のようなあやしい投機話、非上場株式や外貨取得を通じたインチキ儲け話にだまされる人のほとんどは「自分の欲の皮の分厚さ」を思い出してみるべきです。責めるべき理由の半分は自分の中にあります。

そして、「仮にダマされたとしたらどうか」を考えてみて、投資額を決定することが大切です。仮に財産の25%しか注ぎ込まなければ、最悪でも損失は25%に抑えられるわけですが、儲け話に目がくらんでいる人は、「25%しか投資しなければ儲かったときの利幅も小さい!だから財産の全額を投入する!」と考えてしまうわけですが、そこにカモにされる基本的心理があります。

そして、欲の皮が張っている人だけでなく、「お人好し」もダマされるのがこの世界なのです。

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「情報の非対称性」を冷静に考えてみたい

情報の非対称性、という議論があります。これは消費者問題でよく取り扱われるテーマです。

典型的な例として、「製造・販売側」がもっている情報と「購入者側」がもっている情報に格段の差がある場合に、トラブルの証明責任をどちらが負うかが問題となります。訴えたのが「購入者側」であっても、工場の内情は「製造・販売側」しか知り得ないわけで、「購入者側」が証明できず、泣き寝入りになっては困ります。消費者訴訟などでは、「製造・販売側」に問題がないことを購入者がどこまで証明するべきかが、いつも争点となります。

金融商品の販売の現場でも情報の非対称性は大きな問題となります。マーケットにより近く、そもそもの金融商品の設計に携わっている側の金融機関と、いち消費者のどちらが細かい事情に通じているかは明らかです(厳密には運用会社と販売会社は異なる金融機関ということもあるので、金融機関の間の情報格差もある)。

金融機関のほうが情報の優位性をもっていることから、金融機関には法令の定めに従った情報開示や商品説明の義務があります。また適合性の原則などの規範が求められます。これは「売るべき相手をちゃんと選んで売れよ。何も分かっていない素人にややこしい商品を口八丁手八丁で売るのはNGだよ」というもので、客の投資知識レベルや経験、財産状況を踏まえて、無理のない商品を売るように、ということが求められています。

情報の非対称性で有利な立場にある金融機関が、その知見を自分たちの利益のためだけに使うのではなく、客のためにもちゃんと使え、というわけです。

しかし、結果としては適合性の原則等を遵守するため、金融機関は顧客の情報を収集することになります。投資目的や現在の年収、資産状況、家族構成、エトセトラをカードに記入させることで、売る側は「売るための情報」をさらに豊富に取得し、より有利な状況になる難しさもあります。

カモにされる側は、もともと自分が不利な状態でスタートしている取引であることを自覚する必要があります。

情報の非対称性を軽く考える人ほどカモにされる

問題は、こうした「情報の非対称性」が消費者サイドに不利な状況であることについて、あまりにも軽く考えている人がが多いことです。「プロにお任せすれば、きっとよりよい商品を私に教えてくれる」と思うわけです。こういう考えをする人はすでに、情報の非対称性の罠に陥っています。

「個人情報をたくさん提供すれば、よりよい商品を提案してくれる」と思うのはお人好しのカモです。自分の財産状況を素直にカミングアウトすることで、自分の背中に背負っているネギの量と自分の体型(鴨肉の量)を自己申告しているカモネギなわけです。

「投資についてはよく分からないから、金融機関の詳しい人に選んでもらおう」と考えることも、お人好しのカモまっしぐらのコースです。相手はあなたが金融商品を購入すれば利益を得る立場であることを軽く考えているからです。

本当に、あなた本位のアドバイスがもらえると思いますか? あなたにとって本当にベストなアドバイスではなく、金融機関が金融庁に叱られない程度(かつ金融機関が絶対に損をしない)のアドバイスがくるとは考えられませんか? そもそも、いいアドバイスかそうでないかの見分けはつかないのではありませんか?

確かに、日常においては専門家に専門領域についてアウトソースすることは当たり前のように行われています。車の修理を自分でやらずディーラーに頼むようなものであり、専門家を使うことがまずいわけではありません。しかし、車検においてガソリンスタンドで頼むか、自動車用品のチェーン店で頼むか、購入したディーラーで頼むか比較する程度には、投資も比較検討が必要です。

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プロの詐術にカモられないシンプルなルール

プロが本気であなたをミスリードしようとすれば、誰でもその被害にあうこと確実です。むしろ悪質さの程度が低いほど、実は気をつけたいくらいです。

営業のプロは、例えば以下のようなトークを巧みに使いこなします。

  • 一部が正しいことを言う(全部が正しいとは限らない)
  • 誰でも同意できる一般的な話を引き合いに出す(反論できずなんとなく同意せざるを得ない)
  • 聞かれなければ余計なことはいわない(自分のセールストークに不利なことはいわない)
  • あなたの心の底の欲望をうまく引き出す(投機心をくすぐってくる)


こうした情報の非対称性、セールストークから自分の財産を守るのは簡単ではありません。しかし、投資をまったくしないのもトクをしない局面が増えてきています。そこで、個人が可能な対策を考えてみます。今回提案するのは以下の4ルールです。

1.相手に過度な期待はしない

そもそもの過度な期待は投資においてカモられる一歩目です。美しいパンフレットに胸躍った時点でもう勝負は負けている、ぐらいに考えたほうがいいのです。ファンドマネージャーもアドバイザーもあなたをネタに飯を食っているという事実をしっかり受け止めなければいけません(あなたも誰かをネタに飯を食っている会社員なのかもしれませんが)。

2.商品理解ができないものは絶対に買わない

「なんかすごそうだけどよく分からないな」と思ったらその商品が理解できるまで買ってはいけません。買って失敗したときにその理由が分かる程度に仕組みを理解してからでも遅くはありません。買わなければ損をすることもありませんし、買わなければカモられることは絶対にないのです。

3.仮に相談を受けたとしても投資金額の上限は自分で決める

購入金額について相談することもカモの典型です。購入金額は必ず自分で決断します。それはつまり「どこまで損をしてもいいか、自分の責任の取れる範囲を自分で決める」ということです。50万円しか買わなければ損も50万円以上にはなりません。無理な金額を購入してカモになるのが一番愚かです。

4.相談を受けず自分で投資判断はする

そもそも、相談を受けなければいい、ということも一度考えてみるべきです。相談せずに自分で決めて自分で買った場合、同じ損失であっても「カモられた損」ではなく「自分で決めた結果の損」です。きちんと投資家として成長することも自分で決めたことで可能になります。ネット証券などを使えば否応なく自己責任で判断をすることになり、それはあなたのトレーニングにもなります。

カモになることは簡単で、カモになった人は自分がカモになったことすら分からないことすらあります。しかし、カモにならないためには少しの工夫が必要です。ぜひカモられない努力をしてみてください。

(山崎俊輔)

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