専業主婦だった著者が、スーパーマーケットのパートタイマーとして時給760円で働きはじめたのは39歳のとき。3年後には店長に抜擢され、来客数と売上を3倍に。さらに5年で年収は1000万を突破し、現在は人材育成・組織活性化コンサルタントとして活躍中 ── 。『社員もパートもみずから動き出す 心の報酬の与え方』(中 昌子著、阪急コミュニケーションズ)の著者がたどってきた道のりは、それ自体が映画のようです。
著者が確信しているのは、「わくわく感が可能性を引き出してくれた」こと、そして「部下にわくわく感を与えるのはリーダーの役目であるということだとか。では、リーダーにとって必要なこととはなんでしょうか? Chapter 5「みんなを巻き込むリーダーになる」から要点を引き出してみました。
かっこいいリーダーとはどんなリーダーか(152ページより)
リーダーのわくわく感は部下に伝染していくといいます。つまり、上司のわくわく感が強いほど、従業員の成長は加速する。そして「かっこいいリーダー」の条件は、
- 誰よりも笑顔で生き生きと仕事をしている
- 情熱と強い思いがある
- 本気で部下を指導・育成する
- 手柄を自分のものとせず、何かあったときは部下を徹底的に守る
ということ。リーダーの能力ではなく、リーダーの努力と情熱にこそ、部下はついてくるというわけです。
「何をいまさら」もルールに組み込む(160ページより)
著者はスーパーの店長に就任すると、全従業員が同じレベルの仕事ができるように業務マニュアルを作ったそうです。それも、身だしなみ、接客用語、接客態度、声の出し方に至るまで、具体的にどう動けばよいかを詳細に記したのだとか。仕事の質を保つためには、「何をいまさら」といいたくなるようなことも、ルールとして共有することが必要だと考えたからだといいます。
手間のかかる作業ですが、会社の成長を考えるならば早い段階でルールを決めて浸透を図る方が、質の高い仕事ができ、会社の成長も加速するそうです。
「当たり前行動」の数を増やす(164ページより)
チームワークは、当たり前の日常業務を当たり前にこなしながら強化されていくもの。たとえば職場における当たり前行動には、次のようなものがあるといいます。
- 自分からすすんで挨拶をする
- 人に仕事を手伝ってもらったら「ありがとう」と言う
- ホチキスの針を切らしてしまったら、きちんと補充してからしまう
- ゴミが床に落ちていたら拾う
- トイレはきれいに使う
たしかに、どれも当たり前。でも、それを徹底させることが大切だというわけです。そしてなにより、リーダーの当たり前行動を増やすこと。
ミーティングを効果的に行うために(167ページより)
著者がコンサルティングを担当しているある企業では、ミーティングに次のようなルールを設けているそうです。
- 定期的開催(ただし、緊急時はその都度)
- 事前にテーマを告知する
- 進行役は持ち回り
- 全員が発言する
- メンバーの話は最後まで聞く
- 発言の後は拍手をする
- NOだけを言わない。NOの理由と代替案を提示する
- ミーティングの成果をまとめ、参加できなかったメンバーとも共有する
ただ闇雲に話し合うだけでは、「思いをひとつに」することは困難。そこで、効果的に行なうためのルールが必要になってくるというわけです。
経営者・リーダーの5つの関心(176ページより)
最後に、著者がいう「経営者・リーダーの5つの関心」をご紹介しておきます。
- 部下、従業員以上に自分の仕事に関心を持つ
- 部下、従業員以上に自分の会社に関心を持つ
- 部下、従業員以上に自分の顧客に関心を持つ
- 部下、従業員以上に自分と一緒に働く仲間に関心を持つ
- 部下、従業員以上に自分に関心を持つ
トピックひとつひとつが響いてくるのは、「スーパーでパートとして働いていたとき」の話が原点にあるから。当たり前すぎて忘れかけていたことを、本書が思い出させてくれるかもしれません。
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(印南敦史)