納得しないと動かない症候群』(松本幸夫著、フォレスト出版)の著者は、27年にわたり多くの企業研修を行なってきた人物。しかし最近、若者に対して違和感を覚えるようになったそうです。つまりそれを、本書のタイトルに冠したわけです。

第1章「『納得しないと動かない症候群』とは何か」からその「違和感」を抜き出してみると、下記のようになると思います。

  • (石橋を叩いて)渡る理由がハッキリしないと渡らない。叩くことすらしない(19ページより)
  • つまらなければ「笑う必要ナシ」と考えている(23ページより)
  • 納得できないものはすべて「レベルが低いもの」という根拠のないプライドがある(26ページより)
  • 状況的に細かく説明しないとわからない(27ページより)
  • 「結論」「ノウハウ」を知りたがり、人生訓などの「抽象度の高い概念については無反応(41ページより)

かつての「しらけ世代」や「新人類」がそうであったように、人生経験の少ない若者は年上から非難されがちです。そんなこともあり、若者たちを「平成生まれは納得しないと動かない」と決めつけているところには抵抗も感じました。しかし、それはともかく本書の本質は、第4章「若者の体質を改善させる」と第5章「『納得』させるためにあなたがすべきこと」に集約されています。そして、特に後者が重要ではないか、とも。そこでこの章から、「納得できる上司の話し方3大ポイント」に焦点を合わせてみましょう。1.

断定表現を使って自信を示す話し方をする(164ページより)

人は自信のある人のことを信用するもの。そこであいまいな言い回しをせず、「必ず」「絶対」などの言葉を織りまぜながら、上司の自信を伝えるべきだそうです。

2.

短文で話すよう心がける(165ページより)

文章が長いと自信を示せず、「言いわけがましい」表現になってしまうため、バシッと短文で話すべき。それだけで、部下の納得度はグンと上がるのだとか。

3.

力強い声で話す(167ページより)

これは、声にメリハリをつけることだそうです。内容にかかわらずメリハリをつけると、「わかりやすい=説得力がある」話になるといいます。

次に、「上司の指示の出し方3大ポイント」を見てみましょう。

1.

「ニュースステーション」式納得力(169ページより)

ニュース番組のように、「おもな項目をはじめに伝え」、「そのあとに、ひとつひとつを伝えていく」スタイルが重要。全体の展望を眺めさせ、全体の流れを説明しておくというわけです。

2.

クドいくらいがちょうどいい(128ページより)

「くどいな」というほど細かく伝えてちょうどいいのだとか。「なぜそれをするのか」「すると、こんなメリットがある」と、わかりやすく説明すべきだといいます。

3.

プライドには触れないように(175ページより)

実積、キャリアと無関係に「プライド」だけはやたら高い若年世代を変えようという場合、「結論を先に」は御法度。まずヤンワリと明らかな事実を指摘し、体調などを気遣っているふうに注意することが大切なのだとか。なんだか面倒ですね。

最後に、こののち紹介されている「ホメる」ことの重要性です。

1.

ホメたら必ず理由を説明せよ(180ページより)

話したあとに理由をつけて「なぜなのか」を示すことで、納得度はグーンと高くなるといいます。

2.

これまでホメられていない点を探してホメよ(182ページより)

極力、「これはホメられていないな」という点を見つけ出してホメるようにすると、さらに喜ばれるのだとか。

3.

第三者にもホメておけ(183ページより)

本人にではなく第三者にいうと、いいことも悪いことも、必ずいつか本人の耳に入るもの。だからこそ、「陰ボメ」は有効なのだそうです。

先述したように、「平成生まれは納得しないと動かない」と世代でひとくくりにすることには疑問も感じますし、それとは別の次元で、「なぜ、ここまで気を遣わなければならないんだ?」という感情も否定できません。が、若い世代のみならず、すべての人々との交流術と考えると、参考になる部分はあるように感じました。

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(印南敦史)