言語学習をテーマにしたブログ「fluentin3months.com」を運営しているBenny Lewisさんは、21歳を過ぎてから語学学習を始め、今では10カ国語以上を話すまでに! いかにして学習したのか、そのやり方を聞いてみましょう。
私は21歳になるまで、新年を迎えるたびに「今年こそスペイン語を使えるようにする」という目標を立ててきました。けれども、いつもうまくいきませんでした。大学を出て電子工学のエンジニアになった時点では英語しか話せなかったのです。スペインで6カ月暮らす機会があっても、決まり文句をいくつか覚えただけで乗り切ってしまったし。新年の目標として語学を学ぶことにした多くの人は、若いころの私と同じような闇雲なやり方で、その目標に取り組んでいるのではないかと思います。
今では私は語学学習が得意です。これまでに勉強した言語は20カ国語以上。そのうち半分以上の言語を十分に話せます。流暢といってよいレベルなのは8カ国語。ここに書くいくつかのヒントが役に立って、皆さんが若いころの私のような見当違いを繰り返さずにすむことを願っています。何をしたいのか、目標を明確にする
特に問題だと思うのは、目標があいまいだったり、達成不可能だったりするせいで、始める前にくじけてしまう人が多いことです。「スペイン語を(フランス語を/日本語を)使えるようにする」と一口に言っても、程度はさまざま。そもそも「中国語を習得する」ってどういうことでしょうか。ネイティブ並みに話せること? 食事が注文できれば十分? 作文まで必要? そしてその目標をいつまでに達成したいですか?
何よりも必要なのは、目標と期限をできるだけ具体的に設定することです。目標は必ず達成できるものにし、期限は今から数カ月以内に設定しましょう。
例えば、「6カ月後には打ち解けた話ができるようになる」という目標はどうですか? 「3週間後には道を尋ねられるようになる」、「2カ月後には日常生活や仕事のことを話せるようになる」、「今月末までに食事の注文ができるようになる」でもいいですね。まずは数カ月以内で達成できる目標を立てましょう。「いつか」ネイティブと間違われるようになりたいという思いだけで、計画を立てずに動き始めていませんか? 具体的に、そして現実的に、何をいつまでにしたいのか決めましょう。
試験のように堅苦しく考えない学校の試験のように、合格か不合格かを気にするのはやめましょう。言語はコミュニケーションの手段です。その言語を使えるようになれば、程度の差はあれ「成功」です。「不合格」はありません。あるとしたら、何もしなかった場合だけ。完璧主義はやめましょう。外国語で食事が注文できたのなら、文法が間違っていようが、単語のチョイスがおかしかろうが、成功には違いありません。自信を持っていいですよ。
現地に行かなくても、会話はできるようになる現地に行かなくても、その国の言語は十分に習得できます。このことを証明するため、私は今度のエジプト旅行に備えて、それまでの3カ月間、ブラジルの奥地で生活しながら、エジプト・アラビア語にどっぷり浸かってみようと決めました。今はその2カ月目。ブラジルにいながらネイティブスピーカーとエジプト・アラビア語で会話している動画(英語字幕付き)を、私のブログで公開しています(RSSフィード)。エジプト・アラビア語の習得に向けて、私は具体的な目標を定め、間違っても気にせず、毎日Skypeを使ってネイティブスピーカーと会話しています。本当に簡単です。嘘じゃないですよ。がんばって勉強したし、自分がバカなんじゃないかと思うことも何度もあったけど、努力して時間をかけた甲斐はありました。素晴らしい文化に出会う準備ができたんですから。
その言語で一番関心のあることに集中する「何をいつまでにできるようになりたいか」という目標ができたら、自分が一番優先したいことに努力と時間を費やすのが得策です。逆に言えば、「誰にでも」当てはまる「完璧な唯一の」外国語学習法なんて存在しないのです。例えば、私は単純に、その言語のネイティブスピーカーと打ち解けた話ができるようになりたい、本当の友達になりたいと思っています。外国語を学んでいる人なら誰でも抱くような、当たり前な目標だと思われるかもしれませんが、実際はそうでもありません。少なくとも、それは誰にとっても最優先事項というわけではありません。
その言語で書かれた文学に興味のある人もいるでしょう。漫画や映画を楽しみたい人、文通がしたい人もいれば、言語ごとの文法や言葉のはたらきを勉強するのが楽しい人だっています。私はどのタイプの人にも、自分が一番関心のあることに、最初から飛び込んでいくのをお勧めします。それに没頭すれば、あとでその言語のほかの領域に移動しても、学ぶのがずっと簡単になっているでしょう。
私の場合はよく旅行に行くので(これまで旅行に費やした期間は延べ10年以上になり、おかげで世界について多くのことを学びました)、一番関心があるのは会話です。だから会話を最優先に勉強しています。この要素が十分できるようになれば、あとは読み書きの習得も、場合によってはその言語を仕事に活かすことも、ずっと簡単に達成できるようになります。学生時代は語学の試験で赤点スレスレだった私でもできるんですよ!
会話最優先の人へのお勧めネイティブとの会話を最優先にしたいのなら、古くさい教科書を持って部屋に閉じこもっているのは無駄です。生身の人と、今すぐに、理想的には毎日少なくとも30分以上、会話をしましょう。ほかの何をするときでも、この会話セッションの準備に利用してやろうという心構えでいましょう。私も座学はしますが、それは「今日の会話セッション」のための準備です。6カ月後とか2年後とかに「完璧に」使えるように勉強しているわけではありません。いつだって、何かの単語が出てこなかったり、もっと上達しなければいけない要素が見つかったりするもの。このことを最初から心に留めて、とにかく実際にその言語を使ってみましょう。
その言語が使われている国に住んでいない、手近にネイティブスピーカーのツテもない、という人でも使える完全に無料のリソースで、私が特にお勧めしたいのは、「italki」と「Verbling」です。italki(私のプロフィールはこちら)では、ランゲージ・エクスチェンジ(お互いの母語を教え合う勉強法)の相手を見つけてレッスンの予定を組めます。評価システムがあるので、間違いに付き合ってくれる頼もしい先生を探せます。Verblingはもっと一期一会で、チャットルーレット方式で無作為に選ばれたネイティブスピーカーとつながります。
忘れないでほしいのは自分も相手も勉強中なのだということ。間違ってもいいんです! 間違うことは、外国語学習には欠かせない大事な過程なのです。
ほかにも、短期間での上達に役立つリソースをいくつか外国人の多い大都市に住んでいるのなら、「Meetup.com」を探せば、同じ言語を勉強している人の定期的な集まりを見つけられるかもしれません。バックパッカーの交流サイトとして知られる『Couchsurfing』も、都市と言語を指定した仲間探しの機能が優れているので、ネイティブとの交流に使えることに気づきました。
生身の相手との一対一の会話セッションのほかに、私が準備や勉強に使っているリソースには次のものがあります。
『Anki』:iPhoneとAndroidに対応したフラッシュカード・アプリ。Android版は無料。iTunes Storeでは有料ですが、iPhoneでも「脱獄」すれば『Cydia』経由で無料で使えるようになります。入力済みのカードデッキのオープンなデータベースがあり、優れた単語リストをいろいろダウンロードできます。 「Memrise」:このサイトでは、単語リストに暗記のヒントをつけて公開しています。語呂合わせや写真の効果で、単語を忘れにくくなります。 その言語によるデジタル・コンテンツ:言語学習者向けの掲示板を使って、関心のある言語や方言によるニュースサイトやブログのお勧めを尋ねてみましょう。私がよくやるのは、インターネットのアクセス数調査を行う「Alexa」の国別ランキングのトップ100を使って、その国の人が定期的にチェックしているサイトを知るやり方です。それから例えば、スペインで人気のある「Meneame」は、スペイン語版の「Reddit」みたいなもので、読みたくなる記事が毎日アップされています。「Stumbleupon」で言語を設定しておけば、その言語で書かれた優れたコンテンツで、自分の興味に合ったものを見つけやすくなります。それから、コンピューターやソフトウェアの設定をいじって、メニューの言語を変更してしまうのもいいですね。自分の最優先事項に合わせて学習法を変えていきましょう。これは、ほとんどの万人向けの語学教材とは真逆のやり方です。さて、これで今年こそ、語学習得に成功するヒントが見つかりましたね。努力すること、学習法を最優先事項に合わせること、それから「言語を勉強するというより使う」という心構え。これで成果が出ますよ!
Benny Lewis(原文/訳:江藤千夏、合原弘子/ガリレオ)