「なぜDIYプロジェクトを始めないの?」という質問に対して、「全てをイチから学んでいる暇なんかないんだよね」なんて回答をよく耳にしますが、実はこの言い訳は的外れです。何かを使用するにあたっては、その分野の専門家でなくても構わないのです。「何を作りたいのか」だけが明確であれば、それ以上の知識はプロジェクトを開始する時点では不要です。DIYプロジェクトを完成させるのに必要なのは、アイデアとそれを実現するための基本的なノウハウだけです。
最も効果的な学習方法が「実際に体験してみること」なのは、いまさら人に言われなくてもご存じかと思います。実体験とは、つまり不格好な姿をさらすことであると同時に、失敗を糧に何かを学習することでもあります。「新しいDIYスキルを身につける」とは、「実際に手を動かしてみること」と同じです。作業を始めるには決心が必要です。新しいスキルを身につけることは簡単ではありませんし、簡単ではないからこそ意味があるとも言えます。
ポッドキャスト「Still Untitled: The Adam Savage Podcast」の最近のエピソードで、人気TV番組『怪しい伝説(Mythbusters)』の司会であるアダム・サヴェッジ(Adam Savage)氏は、独学について下記のような意見を述べています。
最も大切なのはプロジェクトそのものです。自分の時間を投資するに値する何かがない限り、プロジェクトをやり遂げることは困難です。自分にとって、それは最終的にできあがるエンドプロダクトそのものです。スキルを学ぶために行列に並んでみたところで、そのスキルを使ってどうしたいが明確でない限り、それは絵に描いた餅のようなものです。「これを作りたいので、このスキルを身につけたい」というビジョンが大切です。例えば、優れた溶接技術を身につけるには多くの知識や経験が必要ですが、自宅にコートハンガーを作るくらいなら、さほど難しくはないのです。
サヴェッジ氏が強調するのは「スキルが目的なのではなく、その先にあるエンドプロダクトが大切である」ということです。ほとんどのDIYプロジェクトに必要な溶接技術は、高校生が技術の授業で習う程度なのです。
このコメントはイメージイラストレーターOlly Moss氏が最近Twitterに投稿した下記のツイートとも通じるところがありました。
This is an idea about creativity that I find myself believing more and more every day. twitter.com/ollymoss/statu...
— Olly Mossさん (@ollymoss) 2013年1月2日
日々の生活における創造性とは、「誰かが◯◯を作ってくれたら良いのになぁ」と考える人と、「◯◯が自分で作れないだろうか? 作れたら最高なのだけどなぁ」と考える人の違いではないかと思う。
Moss氏のこの発言には多くのコメントが寄せられていました。「何かを作るのに必ずしも手先が器用である必要はなく、必要なのはアイデアとそこにたどり着くまでに必要な忍耐力である」というのが彼の主張です。
もちろん、DIYプロジェクトの目的はエンドプロダクトを完成させるところにあるわけです。その完成には少しのスキルがあればよく、専門家レベルである必要はありません。そこにはつらい修行も、住み込みの丁稚奉公もありません。ねじをとめることができればテーブルを作ってみることはできます。家具デザインの図面が書けなくても、自分が使う用の机くらいは作れるかもしれません。シェフになるための修行をしなくても、おいしい料理の作り方は覚えられます。プロジェクトを立ち上げ、エンドプロダクトを目標に進んで行けば、かなりの確率で欲しかったものを完成させることは可能です。
そして、DIYプロジェクトを始める前と終わった後とを比較して考えると、エンドプロダクトが完成しただけでなく、その過程で新しいスキルを身につけることも決して少なくないでしょう。プロジェクトで得た知識は他のプロジェクトにも役立てられ、それを繰り返していくことで、さまざまことに対応可能な立派なジェネラリストになれるかもしれません! 「99U」が指摘するところによると「エキスパートジェネラリスト」は一般的に創造性を高めてくれる働きがあります。「新しいアイデアを実行していくことそのものがクリエイティビティである」とも言えるかと。
必要なのはスキルではなく、そのスキルによってもたらされるエンドプロダクトであると訴えるサヴェッジ氏やMoss氏のコメントは、そんなDIYの素晴らしさをあらためて教えてくれるよいリマインダーではないでしょうか。ついつい忘れがちですが、どうやって作るかが重要ではなく、作ることが大切、なんですよね。
Thorin Klosowski(原文/訳:まいるす・ゑびす)
Photo by Windell Oskay