こんばんは編集委員の早川です。最相葉月さんの『絶対音感』(新潮文庫)なんて本がベストセラーになったことがありました。絶対音感といえば、どこか天才音楽家だけの特別な能力、みたいなイメージで持ち上げられることもよくあります。しかし、ピアノ早期教育が盛んな日本ではそれほど珍しい能力ではなくて、かなり多くの人が持っているようです。さらに、実は持っていることに気がつかないまま過ごしている人も多いのです。
かくいう筆者も絶対音感を持っていますが、大学時代に始めてそのことに気づき、驚いたことがあります。なにせ筆者の頭の中では「ド」は「ド」として言語のように聞こえていてそれが当然だと思っていたので、そうでない人がいるというのはすごく不思議なことだったのです。■ 絶対音感にはどんなものがあるの?
a)特定の楽器だけわかる
b)楽器音ならわかるパターン
c)どんな音でも音程に聞こえてしまう
d)キロヘルツ単位でわかってしまう(440kHz、442kHzなど)
などなどいろんなパターンがあるようです。
筆者の場合はb)程度です。しかし、もうc)やd)などになると、車や飛行費の騒音に音程を感じたりオーケストラのチューニングまでできたりしてしまうわけで、いったいどういう感覚なんだろうと思ったりするわけなのです。
■ どれくらいの人が絶対音感をもっている?
スマートフォンのアプリ『かんたん絶対音感トレーニング』でのスコアを見てみると
このうち「easyモード」は単音(ひとつの音)を聴いてのテストなので、90〜100点くらいだとおおむね絶対音感があると考えらます。全挑戦者のうち10%くらいというデータが出ていますが、どうでしょう、結構多く感じるのではないでしょうか。この手のアプリにチャレンジする母集団については考慮の必要がありますが、結構な数の人が絶対音感を持っているといえます。
■ 絶対音感のメリット、デメリットは?
・メリット
- 曲をすぐ覚えられる
- ソラで頭の中で譜面を組み立てやすい
- 音大入試などでは有利
・デメリット
- 移調で混乱してしまう。
- 移調前提の楽器(管楽器など)が不慣れ
といったところでしょうか。
筆者は鍵盤奏者なのですが、バンドで演奏しているとき、現場で急遽「キーをひとつあげる」なんてことに遭遇します。そんなときに器用に「内部的にキーを一音上げて」弾く人がいますが、筆者はそれができずに苦労しています(すべて楽譜を書き直さないと、弾けない)。
■ どうやったら絶対音感が身に付くの?
幼少期の教育が必須とよくいわれます。確かに、子供の頃のピアノ教室やソルフェージュの授業などで、知らず知らずのうちに身につけたという場合も多いようです。とはいえ、大人になってからでも取得するのは不可能ではありません。
特に「単音のピアノ音判別」程度なら、後から簡単なトレーニングをすることで身につくことも多いようです。この辺りは言語に似ているでしょうか。例えば、母国語以外の言葉を取得するのに大人になってからでもはできけれど、どうしても発音に限界が残ってしまったりするみたいな...。
■ 結局絶対音感とは何?
絶対音感とは、「440kHz」=「ラの音」という基準で恣意的に決めた西洋12音階で音をラベリングする能力、のこと。あればそれなりに便利だけど、それは音楽の能力や感性とは全くの別物。かといって、他人の感覚を共感することは難しく、自分の聞いている"音"への感覚ががはたして他の人とまったく同じ物なのか、違うのか、やっぱり気になりますよね。
さて、自分の絶対音感が気になった人は、ぜひこちらのアプリで試してみてくださいね。
(早川大地)
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