ライフハッカー編集部様標準的なズームレンズがついたデジタル一眼レフカメラを持っています。おおむね満足しているのですが、そろそろ新しいレンズを買ってみようかな、と思っているところです。どんなレンズを選べばいいでしょうか?
Optically Limitedより
デジタル一眼レフカメラに付属していたというレンズは、おそらく標準的な18-55mmズームレンズでしょう。汎用的に使える便利なレンズですが、たしかに物足りないと思うのも分かります。シャープな写真が撮れるわけではないし、特別な機能もありません。
新しいレンズを買うなら、きっと何かしら特徴のあるレンズを選びたいはず。レンズ選びの前に、まずはレンズの基礎知識を知っておきましょう。本記事では(1)絞りと焦点距離について、そして(2)レンズの種類について解説します。(1) 絞りと焦点距離について
レンズの基礎知識と専門用語は、レンズ選びに必須の知識です。まずは、レンズの記号表示の読み解き方を解説します。店頭でレンズを見ると、例えば「18-55mm f/3.5-5.6」のような記号が目に入るはずです。この記号はレンズの特性を表しているのですが、専門知識がなければその意味も分かりません。
・ズームレンズと単焦点レンズ
ズームレンズと単焦点レンズの違いは重要なポイントです。ズームレンズはご存知のとおり、ズームインとズームアウトの操作が可能で、被写体を拡大して撮影できます。一方、単焦点レンズにはズーム機能はないので、被写体に近づきたい場合は、自分の足で歩いていかなければなりません。
では、単焦点レンズの利点は何でしょうか? それは、比較的安価で手に入ること、シャープな写真が撮影できること、そして絞りの開きが大きいこと(=光を多く取り入れるため、暗い場所での撮影に強い)の3つです。また、一般に単焦点レンズのほうがひとつひとつの機能を見たときに高い性能であることが多いです。とはいえ、お金をかければ、性能も高く汎用性にも優れたズームレンズを買うことも可能。レンズを交換する手間が省けるのは明らかな利点です。ズームレンズがひとつあれば様々な写真が撮影可能になりますから。
ズームレンズ、単焦点レンズともに「焦点距離」に着目する必要があります。焦点距離は、たいていはミリメートル(mm)で計測され、レンズと撮像素子までの距離を表します。簡単にいえば、焦点距離が小さいほど画角が広くなり(つまりズームアウト)、焦点距離が大きいほど画角が狭くなる(ズームイン)ということです。例えば、狭い部屋で撮影するとき、焦点距離が18mmのレンズを使うと部屋の大部分を写真に収めることができますが、85mmのレンズでは部屋のほんの一部しか写せません。単焦点レンズには焦点距離がひとつしかなく、35mm、50mmなどシンプルに表記されます。ズームレンズは焦点距離に範囲があり、18-55mmのように表記されます。これは、ワイド側が18mm、ズーム側は55mmまで焦点距離が変わることを示しています。
・絞り
レンズの特性を表す指標には、前述の焦点距離ともうひとつ、「絞り」があります。絞りを「開く」とレンズを通る光の量が多くなり、絞りを「絞る」とレンズを通る光の量は少なくなります。絞りは「絞り値」で表され、絞りが開いているほど絞り値は小さく(f/1.8など)なります。絞りが絞られるほど絞り値は大きく(f/5.6など)なります。
絞りが開かれたレンズ(すなわち絞り値が小さいレンズ)は光を多く集めるため、暗い場所での撮影に強くなります。上の画像は絞りが開かれたレンズの写真です。たくさんの光が前面ガラスから背面の穴まで通り抜けているのが見えます。背面の穴が小さいと(すなわち絞りが絞られていると)通り抜ける光の量も少なくなります。見て分かるように「絞り」とは単なる概念ではなく、レンズを実際に目で見て確認することができます。
絞りを絞ると(すなわち絞り値を大きくすると)レンズを通る光の量は減ります。では、何のために絞りを絞るのでしょうか? 絞りを絞れば「被写界深度」が深くなり、画面のより広い範囲にピントが合うようになります。例えば、風景の撮影などで、カメラが狙っている飛行機だけでなく風景全体にピントを合わせたいときがあるはずです。その場合は絞りを絞ります(すなわち絞り値を大きくする:f/12など)。反対に、絞りを開くと(すなわち絞り値を小さくすると:f/2.8など)、風景全体のシャープさは失われてしまうかもしれません。とはいえ、風景すべてにピントを合わる必要がない場合もあります。例えば、ポートレイトを撮るときに絞りを開いて撮影すれば、人物だけにピントを合わせ、背景をきれいにぼかすことができます。上の写真をもう一度見てください。ピントが合っているのはレンズ背面の穴の周囲だけです。絞りを開けばこうした効果が得られるのです。
・まとめ
「焦点距離」と「絞り」について理解すれば、レンズの表記を読み解き、意味を理解することができますね。手元にズームレンズがあれば、きっと「18-55mm f/3.5-5.6」のような表記が見つかるはず。「18-55mm」が意味するところは分かりますね。「このズームレンズはワイド側は18mm、ズーム側は55mmまで可変である」という意味です。「f/3.5-5.6」という表示は、「18mmまでズームアウトしたときの絞り値がf/3.5であり、55mmにズームインしたときの絞り値がf/5.6である」ということを示します。
では、実際に撮影をするとき、これらの値は何を意味するのでしょうか。それを知るためには、レンズの種類とその特徴を理解する必要があります。
(2) レンズの種類
レンズの種類と、その特徴を説明します。レンズは焦点距離によってさまざまな種類に分けられます。一般的に、画角が広いレンズほど奥行きが強調され、画角が狭いレンズほど奥行きが平坦になります。ズームレンズを動かしたり、複数の単焦点レンズを取り替えて、焦点距離の違いが写真にどのような影響を与えるか確かめてみてください。
レンズはその種類によって焦点距離の範囲が決まっています(例えば「50-100mm」などと表記されます)。同時に、カメラ本体のセンサーにも注意が必要です。標準的なデジタル一眼レフカメラはAPS-Cセンサーを内蔵しています。APS-Cセンサーは焦点距離を約1.6倍に拡大します。つまり、50mmのレンズが80mmレンズ相当になるということです(50 × 1.6 = 80)。これは非常に重要なポイントです。カメラがAPS-Cセンサーを内蔵しているかどうかでレンズの選び方が変わってくるからです。APS-Cセンサーではなくフルフレームセンサー(35mmフィルムに相当)を搭載しているカメラなら焦点距離の拡大は起こりません。
それでは、焦点距離別にレンズの種類を見ていきましょう。
・魚眼レンズ(12mm以下)
魚眼レンズは最も画角が広いレンズです。上の写真のように、画角が広すぎて画像が丸く歪んでしまうこともあります。このレンズはフレーム内に風景全部を収めたいときや、奥行きを誇張したいときに使われます。よくペットや人がカメラのレンズを覗きこんで、面白い顔に写っている写真がありますね。魚眼レンズを使うとあのような効果が出ます。また、狭い場所での撮影や、写真に非現実感を出したいときにもよく使われます。ちょうどドアの覗き穴が魚眼レンズと同じ効果を持っています。
・広角レンズ(18-30mm)
広角レンズは魚眼レンズと同様に奥行きの深さが特徴ですが、魚眼レンズより効果は小さめです。広い景色を写真に収めたい場合は広角レンズが向いていますが、少しゆがみが生じます。例えば、水平に置かれたはしごを撮影すると、写真では曲がっているように写ります。上の写真を見てください。写真奥の壁を下から上に向かって見ていくと、壁が内向きにカーブしているように見えるはずです。高価な広角レンズなら歪みを補正する機能を持っています。また、Photoshopなどのツールでも歪みの補正は可能。まとめると、広角レンズは奥行きが深くなる反面、画像に歪みが生じます。この効果をうまく使ってください。
・標準レンズ(35-85mm)
標準レンズは人間の肉眼に最も近いレンズです。ナチュラルな写真を撮りたいなら、標準レンズを使いましょう(50mmレンズは人間の肉眼に近くなるように作られていますが、35mmレンズのほうが肉眼に近いという人もいるようです)。
標準レンズはナチュラルで美しい写真を撮ることができます。標準レンズであれば絞りが広くて明るいレンズ(f/1.4, f/1.8, f/2, f/2.8あたり)を安価に見つることができます。ポートレイトに限らず風景のクローズアップ写真を撮る場合、50mmレンズが最も適していますが、ポートレイトには85mmのほうがいいと言う人も多くいるようです(奥行きがより平坦になるのがその理由のひとつです)。際だった効果は狙えませんが、汎用的で使い勝手のいい標準レンズは、誰もが持っておくべきレンズだといえるでしょう。
・望遠レンズ(100-300mm)
被写体に近づきたくても近づけない場合は、望遠レンズを使います。歩いていかなくても被写体に近づくことができます。その反面、非現実感が出るほど奥行きが平坦になります(例えば、カメラに向かって歩いてくるふたりの人物がいて、その距離は前後にかなり離れているとします。しかし、望遠レンズで撮影すると、まるでふたりが隣同士で並んでいるかのように写ります)。空間を平坦にする効果が必ずしも悪いものだとは限りません。上の写真のように、望遠レンズはたとえ遠くにあっても、狙った被写体を美しく浮き立たせることができます。
また、望遠レンズを買うなら、少しお金をかけて「手ぶれ補正機能」が付いたものを選んでください。望遠レンズでとらえたものはすべてが強調されます。手ぶれも強調されてしまい、写真がブレやすくなります。三脚を使うなら別ですが、手持ちで撮影することが多いならば、手ぶれ補正機能をおすすめします。
・スーパー望遠レンズ(300mm以上)
スーパー望遠レンズなら空に浮かぶ月の細部さえも撮影できます。また、遠くのものを撮るだけでなく、上の写真のようなクールな効果を狙うこともできます。背景がきれいにぼけて完全になくなっていますね。望遠レンズでは奥行きがとても浅い写真が撮影できるので、被写体を美しく浮き出させることができるのです。
・その他、特殊なレンズ
ほかにも特殊なレンズはいくつかあります。マクロレンズはものすごく近い被写体を撮影でき、肉眼の何倍にも接近した写真を撮ることができます。ティルトシフトレンズは特定の領域を選んでピントを合わせることで、ミニチュアのような効果を作り出します。その他にも、例えばLens Baby社は写真の一部だけをぼかせる特殊なレンズを作っています。こういった効果は、標準レンズでは決して真似できません。ただし、ビギナーであればひとまずは手を出さないほうがいいでしょう。コストもかかりますし、より高度な撮影技術が必要です。まずは標準的なレンズを選び、うまく扱えるようになったら特殊なレンズを試してください。
写真はどこでも楽しめる素晴らしいエンターテイメントです。新しいレンズを選んだら、じっくりテストをしながら撮影を楽しんでくださいね!
それでは、ライフハッカーより愛をこめて。
Adam Dachis(原文/訳:伊藤貴之)
Photo by Andre Kuzmik (Shutterstock), Claire Gillman, bgrimmni, Todd Ryburn, Isaac Wedin, Fabian Ortiz, and me..