もしかしたら時代は、我々が信じて疑わなかった考え方が見直されるべきタイミングに差しかかっているのかもしれない。それを肯定するか否定するかは別としても、少なくともそんな気づきを与えてくれる書籍が『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(イケダハヤト著、星海社)です。

ご存知の方も多いでしょうが、著者はブログを中心とした情報発信などによって生計を立てている人物。著者は本書の冒頭でも、非常に重要なポイントを突いてきます。

僕は「貧乏」というのは非常に重要なコンセプトだと考えています。これから僕たちが生きる時代は、「普通に過ごしていれば、年収が右肩上がりになり、35年ローンで家を買って、老後は年金暮らし......」などという牧歌的な未来ではありません。

(18ページ)

つまり、「だからこそ、『貧乏』を楽しむ術を身につけるべきだ。その方が未来的であり、同時に前向きでもある」という考え方です。違った表現を用いるなら、誰もが気づいていながら「気づかないふり」をしていたに違いないポイントをついているのです。そして、そこまで言及できるほど考え抜いているからこそ断言できるのであろう、未来を生き抜くためのヒントが本書には随所に隠れています。そのいくつかをご紹介しましょう。

貧乏は「自由」だ(20ページより)

著者はブログ運営、執筆、講演・研修、企業へのマーケティングコンサルタントで年間500〜600万円の売上を計上しているものの、それ以上年収を上げたいとは思っていないとか。むしろ「300万円あれば家族を養っていけそう」なので、今後は年収を下げるそうです。なぜなら、売上目標が低いから。クルマも家のローンもないので、300万あれば充分生きていけると断言します。だから、「貧乏」は考えようによっては自由だというのです。

自由を売るくらいなら貧乏であれ(28ページより)

著者がそういう考えに至ったのは、短いサラリーマン生活のなかでの辛い経験の影響が大きかったからだそうです。「なぜ、たった年収300万円のために、危険を冒してまで儀式めいた「出勤」をしなければならないのか」と感じたというわけです。そして、自由を売って月給をもらうなら、不安定でも貧乏でも、自分の人生に多くの裁量を持っていたいと考えたのだとか。

お金とは、人とつながらないための「免罪符」(48ページより)

そして著者は、「金より、つながり!」だと断言します。人的なつながりさえ豊かであれば、お金は少なくても、あるいは全然なくても大丈夫。もっといえば、積極的に人とつながり、誰かを助けることができる人は、お金を払わなくても様々なメリットを享受できるということ。そして、その際のプラットフォームがインターネットだというわけです。

「買う」について改めて考える(158ページより)

そして最終章では、ウェブサービスと「消費」あるいは「所有する」ということについて触れています。

僕たち都市に生きる若者たちは、「所有・独占するなんてナンセンス」という新しい価値観を身につけた上で、既に自衛を始めています。

そんな観点に基づき、ここでは「シェアしあう」、「格安物件と高額バイトで生きのびる」、「オンラインの無料教材で学ぶ」など、そのために役立つ様々なアイデアを紹介しています。

いわば本書は、可能性が狭まった時代に、時代に則した発想力とインターネット等のメディアによって生き抜くための指南書であるともいえます。主張にブレがないので読みやすく、納得できるポイントも多数。いまある自分に少なからず不安を感じているなら、ぜひ一度手にとってみてください。

本書を手に取った方は、どんな感想をもったでしょうか。Facebookページでも下記のコメント欄でも、ぜひ教えてください。

(印南敦史)