「自分は話下手だから」「あがり性だから人前で話すなんて到底無理」などと思い込むあまり、人前で話す機会を避けてしまう人は少なくないかもしれません。しかし<思い込み>を取り除くことで、どんな人も、どんな場面でもしっかりと表現きるようになると主張するのが、『「いいスピーチでしたね」と言われる話し方』(金井英之著、すばる舎)。

著者は都内を中心とした7カ所で話し方教室を開設し、各企業、団体で講演会、社員教育などを担当している人物。そんな経験に基づき、本書でも様々な角度から効果的なスピーチのしかたを説いています。そんな中、特に興味深く感じたのは「伝わるように話すための3カ条」という項目。話の上手さ以前に大切なことだと思うので、紹介します。1.主語と話題のバランスをとる(110ページ)

上司への業務報告などでも、時系列式にダラダラと状況を列記して説明するのは禁物。聞き手はイライラしてしまいますし、何を言いたいのかがまったく伝わらないそうです。大切なのは、自分が言いたい「主題」を引き出すこと。そして決まった主題に、必要な部分だけを肉づけしていけばいい。きちんと伝えるためには、話の中の無駄な贅肉を削ぎ落とすことが大切だというわけですね。

2.シンプルに話す(111ページ)

話の長さを3分間くらいにまとめることと同様に大切なのが、ひとつひとつのセンテンスを短くまとめること。話をするときに適度な間が入ると、聞き手にとっては格段にわかりやすくなるのだとか。そこでセンテンスはできるだけ短く表現し、長くとも一文が80〜100字程度で収まるようにするのがいいそうです。

それから話を考える際には、「主部と述部がわかるように」構成することが大切だとか。実際に話すときは言葉が出てこなかったり、言葉の順序が逆になったり、同じ言葉が繰り返されたりするので、主部と述部がわかりにくくなるのだそうです。例としてあげられているのが、次の文章。

私は小学校の頃、サッカーが大好きで対外試合にも出るほど実力もありましたが、父はプロ野球が大好きで父に連れられてプロ野球を見に行っているうちにプロ野球の魅力にとりつかれてしまい今は野球が大好きです。

と話すよりも

私は野球が大好きです。

小学校のころはサッカーが好きだったのですが、父の影響で今は野球が大好きです。

と、話した方が圧倒的にわかりやすい話になります。

(同書、112ページより)

つまり文章は短くまとめるのが原則。文が短ければ主部と述部が離れず、聞き手も理解しやすくなり、話し手も話の筋立てを考えやすくなるとか。そして、短い文を積み重ねていくようにすれば、話はシンプルになるそうです。

3.わかりやすい言葉で話す(113ページ)

日本人は人前に立つと「自分を大きく見せたい」という意識が働き、難しい言葉を使いたがるといいます。しかし、それでは理解しづらくなるだけ。

顧客が来社の折には仔細の注意を払い、顧客の精神状態を損ねたり立腹させることのないように品位と格式をもって対応してください。

と言われてもわかりにくく、心にも響きません。しかし、

会社にお客様が見えたときは接客に気を使ってください。

間違ってもお客様の気分を害したり怒らせることのないように礼儀正しく接してください。

(同書、114ページより)

というようにわかりやすい言葉で話す方が効果的で、相手も受けとめやすくなるそうです。

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(印南敦史)