「トヨタ式生産方式」とは、戦前のアメリカでの自動車産業方式にならい、トヨタ自動車が提唱した方法論。「7つの無駄の削減」「ジャストインタイム生産方式」「自動化」などを主軸としたパワフルな考え方は、「Kaizen」(カイゼン)として海外でも通用する言葉にもなっています。『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』(原マサヒコ著、扶桑社)でも頻繁に使用される「カイゼン」もやはり、「トヨタ式生産方式」のこと。
トヨタ自動車に入社後、ディーラーメカニックとして5000台以上の自動車を整備してきたという著者は、整備技術の社内No.1を競う「トヨタ技能オリンピック」にわずか23歳で優勝。「カイゼン」のアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を達成したという人物です。つまり本書は、実際の体験をもとに「カイゼン」のあり方を紹介した書籍。
小説形式になっている点には個人的に疑問を感じましたが、しかし「カイゼン」の本質がわかりやすく紹介されていることは事実。それらは自動車産業以外の現場でも応用できると思うので、ご紹介したいと思います。1.いつも机が汚い人の仕事は絶対に捗らない(17ページより)
「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」の<5S>を徹底することによって、業務に置けるムリ・ムダ・ムラを排除する。それがカイゼンの第一歩だそうです。
2.拙くとも素早い仕事こそが人の心を動かす(45ページより)
ていねいに返事しようとして遅くなるくらいなら、少し拙くてもいいから速く反応することが重要。頭で考えてばかりいるよりも、動いてみて見えてくるものもあるということ。
3.「プロフェッショナル」が仕事を滞らせる(65ページより)
ひとつのことだけする「単能工」として、やる前に「向いていない」、「できない」と思わないこと。それは自分で壁を作っているにすぎないので、「多能工」になってやってみる。多能工化して業務の幅が広がれば、視野も広がることでしょう。
4.仕事は「言われたとおり」やってはいけない(91ページより)
人間としての知恵が加わっていない仕事は、ただの「動き」。なにが必要なのか、どうしたらいいのかを徹底的に考え、行動することが「働き」である。
5.真の解決とは問題の本質を突き詰めること(115ページより)
問題解決に対する考え方は「根本原因の解決」。土から出てきたモグラを叩くのではなく、モグラが住み着かない環境を作るべき。問題にぶつかったとき「なぜ」を5回ぶつけてみれば、真の原因が浮き上がってくる。
6.「パッと見」でわからなければ意味がない(139ページ)
誰が何をやっていて、どういう状況なのかが、パッと見てわかる状態になっていることが大事。部品の在庫管理をする際、在庫数がわかるように小さな札を立てる「カンバン方式」、生産工場のラインで不具合が見つかったとき、ぶら下がっているロープを引っ張るとランプがついてラインが停止する「アンドン」など、工場での取り組みはその参考になるといいます。
7.目標は非常識なほど劇的な効果を生み出す(163ページ)
常識的な目標を立てれば、現在の延長としてのアイデアしか出ない。非常識な目標を立てれば、斬新なアイデアを出さざるを得なくなる。無茶な計画を立ててみて、知恵を結集して進めていけば、いつの間にか実現しているものである。非常に頷かされる話です。
生産工場でのしごとだけではなく、あらゆる仕事に応用できそうだとは思いませんか。視点を変えて、これらの方法論現在の業務に反映させてみれば、なにかが変わるかもしれません。
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(印南敦史)