「自分のこれまでの功績によって、新しい職場で採用されるかどうかが決まる」といわれると、ついついうなずいてしまいそうですが、真実とも限らないようです。スタンフォード大学およびハーバード・ビジネス・スクールの研究によると、人間には無意識に、これまでの功績や実績よりもこれからのポテンシャル(潜在能力)への期待を重視する傾向があるのだそうです。

継続的に行われた調査の結果(英文)、2年の職務経験があり、リーダーとしての実績がある候補者よりも、リーダーシップのポテンシャルを測るテストで高得点を上げた候補者を優先する傾向があるということが明らかになりました。

同様の傾向は、他の分野でも見受けられています。

研究によると、受賞歴があり、認められたこともあるアート作品やアーティストよりも、これから賞を受けそうなものを好む傾向が私たちにはあります。すでに有名な一流レストランよりも、これから有名になるかもしれないレストランやシェフを高く評価する傾向もあります。

あるコメディアンの広告をFacebookに2パターン掲載する実験をしました。1つには批評家が「世間は今、彼のウワサでもちきり」と言った内容を書き、もう1つには「1年後には彼が大ブレイクしているかもしれない」と書きこみました。すると、彼のポテンシャルにフォーカスを当てた後者の広告は、クリック数やいいね!の数が飛躍的に多かったのです。

研究者によると「ポテンシャルには不確定要素が多い分、より興味深く思え、気を引かれがちになるのではないか」と説明しています。「これから」という部分がポジティブな感情を与え、ついついその人や会社を応援してしまうのでしょう。

この結果に基づいた話をすると、たとえ実務経験がなくとも「自分のポテンシャルを考慮すれば十分にできる仕事である」と判断できる仕事に挑戦してみる場合は、これまでの実績だけにとらわれず、ポテンシャルに焦点を当てた話をすると採用される可能性が高くなるかもしれません。少なくとも、ハーバード・ビジネス・レビューによるオススメは、「ポテンシャルを高く売る」ことなのだそう。

The Surprising Secret to Selling Yourself | Harvard Business Review via The Career Artisan

Melanie Pinola(原文/訳:まいるす・ゑびす)

Photo by Sergej Khakimullin.