正直、最初は「芸人本でしょ」とたかをくくっていたかもしれません。しかし偏見はいけませんね。お笑いコンビ・カラテカの入江慎也が独自のコミュニケーション術を紹介した『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』(入江慎也著、アスコム)は、予想以上に実践的な内容でした。「何かひとつ、自分の武器を持とう」「やらないより、やって怒られよう」「『できないことはできない』と言う勇気!」など、目次に並ぶタイトルを見ても、ビジネスのシーンに応用できそうな項目ばかり。語りかけるような文体も読みやすく、一気に読み進めることができます。
そんななか、特におすすめする価値があるなと思ったのが、お礼の仕方についての項目です。
1.「ごちそうさまでした!」はまず2回
『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』(122ページ)
「飲みに行ったときこそ、後輩力を発揮するチャンス。こういうときに気遣いできる人は、仕事でも評価されますよね」ということで、後輩はみんなの注文をまとめ、常に気を遣うべきだと主張しています。そして支払いの際にも相手が財布を出したタイミングで、最初の「ごちそうさまでした!」そして店外へ出て、支払いをすませたところを出迎えながら、2度目の「ごちそうさまでした!」を必ず言いましょうとも。些細なことかもしれませんが、たしかにこういう配慮は大切ですね。
2.終わりよければすべてよし!
『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』(124ページ)
相手に気持ちよく帰ってもらえれば、その記憶はきっと相手には残っているもの。だから「ご馳走になったときは直接メールすればいいんです。わざわざツイッターを利用するなんて、お礼をしている自分をみんなに見せたいのか、本当にお礼を言いたいのか、よくわかりません」
たしかに。実はこれ、とても重要なポイントだという気がします。
3.お礼はベストタイミングを狙って送る
『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』(126ページ)
入江さんが「3度目の『ごちそうさまでした!』のメールを送るのは、翌日のお昼、時間で言えば12時15分ごろ」だそうです。言うまでもなく、お昼休みでメールを見てもらいやすい時間帯だからですね。これは「ぼくが勝手に思い込んでいる時間帯」だといいますが、しかし「先輩の毎日のスケジュール、習慣を把握し、『自分のメールを1番しっかり読んでもらえそうな時間帯』を狙って、ピンポイントで送信する」といった配慮は欠かせないでしょうね。
4.メールは一斉送信するくらいなら、最初から出さない方がいい
『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』(128ページ)
入江さんは「同じ文章のメールを一斉送信するくらいなら、最初から出さない方がいいと思うんです」と言っていますが、これはビジネスの相手に対するメールについてもいえることですよね。事実、一斉送信メールを受け取ってうんざりした経験のある人は少なくないでしょうから。
逆に「みんなのメールが集中しそうな時間帯をあえてはずし、その相手がひとりでじっくりと自分のメールを読んでくれそうな時間帯を狙う。ベストなタイミングで届いたメールは、いつものメールより数十倍のインパクトがあります」という言葉に説得力があります。
5.感謝の気持ちは思いっきり伝える
『後輩力 凡人の僕が、友だち5000人になれた秘けつ』(130ページ)
照れ屋が多いという事務所(吉本興業)の先輩の話を引き合いに出して、入江さんは「お礼をするときに、とにかく感謝の気持ちを思いっきり伝えましょう」と強く主張します。「たとえ返信がなくても、後輩はやることをやるべし、なのです。そして、一度やりはじめたことは続けるべきで、途中でルールを変えたり、急にやめたりするなら、最初からやらない方がいい」。
このあたり、吉本で上下関係を学んできた入江さんならでは、という感じですね。
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(印南敦史)