相手に伝わる良い文章を書くコツは「Less is more(少ないほど、豊かである)」。簡潔に書くということです。しかし、簡潔で明瞭な文章を書くことは思ったより難しいもの。どの言葉を削ればいいのか...どうすればもっと明快な文章になるのか...。
メディア調査会社「Frank N Magid Associates」のニュースコンサルタントで、元TVニュースレポーターのDanny Rubin氏が、実例を挙げながら「簡潔さのパワー」について解説しています。
「とりわけ専門家の間では、知的な印象を与えるために、冗長な方法で文章を書かなければなければならないという一般的な誤解が存在します。」(#1)
ごめん、もう一回やらせて。
「人はよく、難しい言葉を使って、長い文章を書くほうが賢く見えると勘違いしています。」(#2)
おっと、もう一回だけやらせてもらうよ。
「賢く見せるために、文章を長くしたり難しい言葉を使ったりする必要はありません。」(#3)
ほら、このほうがいいでしょ?
多くの人が、3番目の文(#3)を書くべき時に、1番目のような文(#1)を書いてしまいます。私見ですが、大学の論文課題が元凶です。大学の論文では書くべき枚数が決められています。私たちは、決められた枚数になるまで文章を無駄に膨らます術を身につけてしまったのです。
現実社会では、誰も送付状(カバーレター)や履歴書、プレゼン資料を喜んで読みません。たいがい、退屈で苦痛なものです。最悪なのは、自分のスキルを超えたものを書こうとして、混乱した文章を書いてしまうことです。
簡潔に書けば、ポイントを素早く明瞭に伝えることができます。言葉を浪費する必要もなければ、読む人の時間も減らせます。きっと、雇用主や採用担当者は、あなたを頭が切れて礼儀がある人物だと見なすでしょう。しかし、そのコツを学校で教わることはめったにありません。むしろ国語の教師たちからは嫌われてさえいます。大丈夫、誰でも使えるコツがあります。
友達に話すように書いてください。インターネットでよく使われる隠語や省略語を使え、という意味ではありません。私はいつも執筆に行き詰まると、PCから離れて自分に問いかけます。「結局、なにが言いたいんだ?」そして、能弁に語ろうとする代わりに、友達に話すような平易な言葉で書くようにします。いったん話し言葉で書きあげたら、今度は赤ペンを持って添削を始めます。先ほどの例を使いましょう。使用前:「とりわけ専門家の間では、知的な印象を与えるために、冗長な方法で文章を書かなければなければならないという一般的な誤解が存在します。」
使用後:「賢く見せるために、文章を長くしたり難しい言葉を使ったりする必要はありません。」
まず何よりも先に、ストレートな言い方に直しました。そのほうが自信を感じさせます。
簡潔な文を書くために、私は文字通りPCから離れて「何が言いたいんだ?」と自分に尋ねます。賢く見せようとするのをやめれば、言葉は自ずと出てきます。
また、それぞれの文の中で使う言葉の数にもとても注意します。振り返ってみて、今書いたひとつひとつのすべての言葉が必要不可欠であるかを吟味します。「この言葉を削っても意味は伝わるか?」と、自分に問いかけます。さらに、「この文を削っても段落の意味は伝わるか?」、「この段落は本当に必要か?」と、問うのです。
スピードが鍵です。あなたの履歴書を見てくれる人たちの時間を無駄にしてはいけません。大きな段落が5つもあるようなだらだらと続く文章を書かないように。必要不可欠なことだけを書くように自分によく言い聞かせてください。あなたの人生すべてを知ってもらおうなどと思わずに、大事なポイントを1つか2つに絞って書くようにしてください。
添削が済んだら、もう一度添削してください。それが済んだら、また戻ってもう一回です。カバーレターや履歴書を特別に褒められることはないかもしれません。しかし、よく練られた簡潔な文章はよい印象を残すでしょう。
なにより、あなたは目立つはずです。大学は就職活動のプロセスにはそれほど役立ちません。しかし、簡潔さのパワーの使い方を献身的に学んだ人は、いつだって際立つのです。
Danny Rubin(原文/訳:伊藤貴之)