公私ともに長男、川田十夢です。今回から3回連続で、僕が発明したライフハックについてご紹介したいと思います。
まず、今回のネタ元となった「眼力王」はご存知でしょうか? いまから約23年前にヤングマガジンで連載されていた怪盗漫画です。
主人公である眼力王は、自らの目玉から出続けるビームを制御できません。だからいつもサングラスをかけています。この能力をいかして、世界中の金庫を破って宝石を盗んでは、最愛の女性にプレゼントします。その都度、「こんな高価な宝石なんかよりあなたの素顔がみたいわ。」と言われてしまい、最愛の人をうっかり見つめてしまいます。恋が終わります。いつまでもかなわぬ恋、呪われた人生。江戸川乱歩の小説世界にも通ずる、独特の世界観が展開されています。平井一郎という作者名は、おそらく江戸川乱歩の本名:平井太郎から取っているのだと思われます。
そこでわれわれAR三兄弟の出番です。血塗られた物語をいかに拡張(ライフハック)し、眼力王が抱いた孤独や悦びを現実のものとするか。腕の見せ所です。
Photo by HANAWA hiromi我々は、まずARの基本となるマーカー技術を進化させました。マーカーを必要とせず、顔を顔として認識し、その眼の位置をマーカー代わりの根拠としてビームを発動させるという技術です。
はい、これでまずは眼力王ARと呼ぶべき試作は完成しました。でも、ここで終わってはライフハックになりませんよね。ちゃんと、現実に機能しなくてはいけない。そこでわれわれは、新たに現実と仮想をつなぐハイパーリンクを手作りで用意することにしました。以下がその材料です。
- Arduino Fio:2,495円
- XBee-PRO シリーズ1 2個 : 3,200 x 2 = 6,400円
- XBeeエクスプローラUSBドングル:2,495 円
- フラッシュペーパー 1枚 350円
- ミニモーター低速ギヤBOX(4速):903円
- スチールウール:105円
- 9V電池:180円
- 電池ケース:110円
- みの虫クリップ少々:350円
- ブレッドボード2個 150円 x 2 = 300円
合計:13,688円
このユニットと、目を根拠とした眼力王ARを無線でつなぎます。拡張現実空間のなかで、ビームに接触しているか否かを判定するプログラムを動作させます。そうすると、以下のような現象を導くことができます。
はい。確かに燃えてますね。これ、眼力王ARによって出したビームによって生み出した現象です。要するこれではじめてちゃんと現実に機能する新しいライフハック「AR三兄弟の眼力王」が完成しました。
ちなみにこの「AR三兄弟の眼力王」ですが、顔と思しきものは全て反応します。漫画からでも、一万円札の福沢諭吉からでも、自由に目からビームを出すことができます。ただし、眼力王に登場した美女からはビームは出せません。コンピューターが顔を認識するために必要な、はっきりとした鼻が存在しない絵柄だからです。ああ、哀れなり眼力王。誰もが眼力王体験できる仕組みを作ってもなお、彼が愛した女たちにその深い孤独は伝わらないのであった。
次回(9月4日公開予定)は「夜明けのスリットスキャン」という名の、空間をねじ曲げる感じのライフハックをご紹介します。川田十夢でした。
(川田十夢)
川田十夢:公私ともに長男。著書「AR三兄弟の企画書」(日経BP)絶賛発売中。twitterアカウントは@cmrr_xxx。8/30(木)怪談ppt. @東京カルチャーカルチャー、8/31(金)対話のスケッチ(鈴木康広とのトークイベント)。8/6-9/14 「AR三兄弟は、GMOとくとく通信で得をするのか、損をするのか展」。今回紹介した「AR三兄弟の眼力王」の展示は8/31(金)まで開催しています。