米ショートストーリー作家のジーン・スタフォード(Jean Stafford)氏なら「幸せな人に、楽しみなんて必要ない」と笑いとばすでしょうが、イヤな気持ちにさえならなければ良い気分になれる、というのがこれまでの研究が示すところのようです。良い気分になるためには、そのための原動力が必要です。また、楽しみを持つことこそ、幸せな生活を送るために重要な要素。ある研究では、楽しみを持つ人はそうでない人に比べて20倍も幸せを感じていることが明らかになっています。

筆者は、最近、楽しみを見つける人々の行動パターンに気づいたそう。それはズバリ、ミッションに取り組むこと。何か達成しようというミッションがあれば、活動がより楽しくなるのです。

 例えば、筆者のある友人は、安い手袋を目当てにフリーマーケットやアンティークショップに出掛けることを楽しんでいました。彼女は「20ドル以上は払わない」というマイルールを設定。もともと、店頭で値段の交渉をするのが好きなタイプでしたが、このようなミッションを持つことで、当てもなく過ごすことが少なくなり、より楽しめるようになりました

この観点で言えば、何かを収集するというのは、ミッションを持つためのポピュラーな手法のひとつです。筆者の娘さんはシーグラスを見つけると毎回大喜び。シーグラスを探すことで、ビーチをより楽しんでいます。また、お母さんはサンタクロースの飾りを探すことに長年ハマっているとか。

メジャーリーグ全スタジアムのゲームに行きたがっている筆者の友人のように、モノだけでなく「経験」も収集の対象となりえます。できるだけ多くのマラソン大会で走ってみる、お気に入りのアイスクリームショップで全フレーバーを制覇するといったことも同様です。筆者は、手紙を投函する、コーヒーを買う、ちょっとしたお使いをするなど、何かミッションがあるとき、外を歩くのがより楽しくなっていることに気づいたそう。そこで、ニューヨークのセントラルパークを歩く時はベセスダ噴水(Bethesda Fountain)を見るというミッションを課すようにしており、これによってウォーキング全体がより意義のあるものになっているようです。

実際、モノの収集における楽しみは、モノの所有だけではありません。探して入手するという「経験」も含まれます。つまり、モノをもらったり、買ったりするだけが楽しみではないのです。

写真を撮るというのは、旅行中のミッションとして典型的なもの。写真を撮ることで記憶を鮮明に残せるだけでなく、旅行中、周りの環境と自分を調和させることができます。とはいえ人によっては、写真を撮ることに集中しすぎて現実を楽しむ余裕がなくなり、かえって実体験の妨げになることもあるので注意。例えば筆者は、米コネチカット州ニューヘイブン(New Haven)を訪れた際、「観光客の写真を撮影しよう」と決めてから、歩き回るのがずっと楽しくなったとか。

裸足を見たら撮る、赤い家を見つけたら撮るといったように、日常生活の中で写真を撮ることに取り組んでいる人もいます。写真家のニコラス・ニクソン(Nicholas Nixon)氏は、1975年から2006年まで毎年、妻と3人の娘のモノクロ写真を撮影。ポートレート集『The Brown Sisters』としてまとめ、大きな注目を集めています。

では、なぜ、ミッションに取り組むと幸せにつながるのでしょう? 筆者は幸せについてより考えるうちに「成長しているという気持ち」の重要性に気づき、衝撃を受けたそうです。筆者の考えによると、これこそが幸せのための大きな原動力。ミッションを持ち、取り組むことで、この気持ちを創りだせると考察しています。

「ミッションを持つ」というと少々大げさに聞こえるかもしれませんが、その内容は、身近なものでも、一見ささいなことでも、何でもOK。「何か楽しいことないかなぁ」という方は、例えば毎朝ケータイで写真を1枚撮ってみる、といった小さなミッションからスタートしてみてはいかがでしょう。日に日に自分の成長が感じられて、幸せな気分も高まってくるかも。

Want To Have More Fun? Go On a Mission | The Happiness Project

Gretchen Rubin(原文/訳: 松岡由希子)