様々な職業や仕事を持つ人々が集まり、交流を深めながらそれぞれの仕事に取り組む「コワーキング」は、欧米を中心に新しいワークスタイルとして確立されつつあります。人と人とのつながりをベースとする仕事場とは、実際どのようなものなのでしょうか? その謎を探るべく、ロンドンのコワーキング・スペース3カ所を訪問してみました。
■The HUB Islington
まずは、ロンドンのみならず、サンフランシスコ、アムステルダム、ケープタウン、シンガポールなど、世界中にネットワークを拡大しているThe HUBの第一号スポット
「The HUB Islington」(記事冒頭画像)。私は今回、ライフハッカー[日本版]アーカイブ記事「世界のコワーキング・スペースが探せるオンラインプラットフォーム『Loosecubes』」でご紹介した「Loosecubes」を通じて事前に予約し、1日限定で利用させてもらいました。
地下鉄Angel(エンジェル)駅から徒歩約3分という比較的便利な立地。アートスタジオなども入居するビルの4階にコワーキング・スペースがあります。共同のデスクと机があるほか、予約制のミーティングスペースも完備。もちろん電源とWi-Fiは自由に利用OKです。プリンタ・コピー機などのオフィス機器のみならず、簡易キッチン、図書スペースまで備えられています。仕事スペースは、静かで落ち着いた雰囲気。天井のガラスから明るい光が差し込む心地良い空間で、仕事もバッチリ捗りましたよ。
またThe HUB Islingtonでは、定期的にワークショップなどのイベントを開催。「資金調達のコツ」や「社会起業家のためのガイダンス」など、スタートアップを対象とする実務的な講座も開かれています。つまり、このコワーキング・スペースは、人々が同じ場所で仕事をする場にとどまらず、起業家を育成する役割をも担っていると考えられるわけです。
■[SPACE][SPACE]は、ロンドン北部のハックニー・ロンドン特別区(London Borough of Hackney)にあるクリエイター向けのコワーキング・スペース。毎週木曜日は「JELLY」と銘打ち、コワーキング・スペースとして一般に開放されています。
このコワーキング・スペースは、グラフィックデザイナーやクリエイター、フォトグラファーらが多く利用。それゆえ共同デスクには、MacやWindowsマシンが複数台並べられていました。利用者は、備えられているマシンを使ってもいいですし、自分のPCを使って作業することももちろん可能です。
ちなみに、最寄り駅はロンドンのリパプール・ストリート駅(London Liverpool Street)からナショナル・レール(National Rail、英国鉄道)で10分ほどの「London Fields(ロンドン・フィールズ)」。ロンドン中心部からは少し離れた立地ですが、近年、ホットなエリアとして注目されるHackney(ハックニー)の街を、楽しみがてら訪問してみると良いかも。
■Google Campus 「Google Campus」は、グーグルが監修する、ロンドン東部のコワーキング・スペースです。主な利用者は、テクノロジー系のスタートアップやフリーランスのプログラマー、エンジニアなど。仕事用スペースが7フロアあるほか、イベントスペースも完備。2012年6月22日の「BBC Worldwide Labs」立ち上げ発表会(上画像)をはじめ、勉強会やネットワーキングイベントなどが定期的に開催されています。地下にはカフェスペースが広がっており、利用者同士の日常的なコミュニケーションの場となっています。また、カフェの掲示板には、利用者が主宰する企業や製品・サービスの宣伝チラシや、「モバイルアプリを検証できる人材、求む」とか「エンジニア、急募」といった手書きの求人情報などが、所狭しと掲示。コワーキング・スペースが、初期段階のプロモーションやリクルーティングにも活用されていることがわかります。
このように、三者三様のコワーキング・スペースを実際に訪問してみて、「コワーキング・スペースは、ヒトを中心とするコミュニティである」と言われるゆえんを改めて実感しました。例えばフリーランスでの仕事や起業の準備段階では、どうしてもネットワークから孤立しがち。それゆえ、仕事仲間を見つけたり、将来のスタッフや将来の顧客に出会う場として、コワーキング・スペースが一定の機能を果たしています。言い換えれば、「コワーキング」は単なる一時的なトレンドではなく、ある程度の必要性をもって生まれた合理的な働き方のひとつといえるでしょう。
また、これら3つの例でもわかるとおり、コワーキング・スペースには、それぞれ特徴があります。ゆえに、自分に合ったコワーキング・スペースを選ぶには、ロケーションだけでなく同業者の仲間を見つけたいのか、様々な業種の人々と知り合いになりたいのかなど、「自分がそのコワーキング・スペースに何を求めるか?」を明らかにした上で、それぞれの特徴を十分吟味したほうがベターです。「百聞は一見に如かず」ということで、トライアルで実際に利用してみる、オーナーさんから話を聞くといったことも有効的だと思います。
みなさんも、日本で、または旅先の国で一度コワーキングしてみてはいかが?
(松岡由希子)