生活習慣病が騒がれる昨今。自分の体重や体脂肪率は気になりますよね。体重計に体脂肪率やBMIが表示されるものも多くなってきました。がしかし、それを鵜呑みにするのは危険かもしれません。なぜなら計測方法の問題で、簡単に数値が変わってしまうからです。

 

そこでプチマッスルライフでは「健康のために運動をしたいけど時間がない」、「ダイエットしたいけどこの方法は効果的なの?」、「筋肉もりもりマッチョになりたい!」などなど、広い範囲で情報を提供していきたいと思います。初回は体脂肪率についてのあれこれを大公開!

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 みなさんは家に体重計をお持ちですか? 「体脂肪計」は体重計としては高級品ですが、そこが落とし穴。体脂肪は推定しているだけなので、信頼性が低いのです

一般的に知られている体脂肪計は両手で持つタイプ、両手・両足を付けるタイプがあり、身体に微弱な電流を流して電気抵抗を測定する「生体インピーダンス法」という方法で測定します。家庭用のものもジムなどにあるものも、測定法は同じです。

筋肉は水分量が多いので電気を流しやすく、脂肪は水分量が少なくて電気が流れにくい。つまり、電気抵抗が大きければ脂肪が多く、電気抵抗が小さければ筋肉が多いと推定できるわけです。過去に測定した統計データを元に、「これくらいの身長・体重で、これだけの電気抵抗なら、体脂肪率はこれくらい」と判断して数値は表示されます。体脂肪計各メーカーが独自に研究・開発してるので、同じ人でも測った機器のメーカーごとに、体脂肪率が異なって推計されてしまうこともあるようです。次に、面白い例を2つご紹介しましょう。

1つ目。「体脂肪率(の数字)を減らそう!」とがんばって、食事も摂らずに猛烈なトレーニングをすると、摂取水分量が減り、汗をかいて体内の水分量が大きく減ってしまうプチ脱水状態になります。ここで電気抵抗を測ると、「電気が流れにくいから体脂肪ばっかり」と判定され、体脂肪率が増加するのです!

2つ目。男女問わず本格的なアスリートの場合、体組成(筋肉と脂肪のバランス)が一般人とかけ離れているので、統計データがあてはまりません。日常の激しいトレーニングで慢性的な脱水状態なので、体脂肪計で測るとありえないくらい高い体脂肪率だと推定されてしまうこともあるそうです! そのため、一部の体脂肪計には「アスリートモード」があり、同じ電気抵抗でも「あなたがアスリートなら、もっと低いこれくらいの体脂肪率でしょう」と判定してくれる機能がついているものもあります。

さらなる問題は、電気抵抗は簡単なことで(手・足裏に汗をかいている、など)変わってしまうということ。朝起きたばかりと就寝前、食前・食後、トイレに行く直前・直後、測定の時間。小さな要素で体内の水分バランスは大きく変わり、電気抵抗=体脂肪率の数字も激しく変化します。前日との差があまりにも大きかった...という経験のある方もいるのではないでしょうか。

本格的なアスリートの場合、スポーツ科学研究室ではぶら下げて水中に全身を沈めた状態で体重を測ることで正確に体脂肪率を推定する、水中体重秤量法(水中体重測定法)が使われます。アルキメデスの原理に基づいた測定法で、次のように計算します。

  1. 身体の体積の水重量だけ体重が軽くなるため、身体の体積が分かる。
  2. 体重と身体の体積から、体脂肪量・率をかなり正確に推定できる。理由は、同じ体積だと脂肪は軽くて筋肉は重いから。


普通のジムでは装置が大きすぎる上に、測定される側に苦痛があったりする(息を吐ききって測定する)ので、水中体重秤量法は使われず、体脂肪計で推定します。他にも、体脂肪率の測定方法には空気置換法、二重エネルギーX線吸収法、皮下脂肪厚法(キャリバー法)など様々な方法があります。

以上を踏まえた上で、同じ条件(1日の生活パターンの同じタイミング、同じ機器)で測って、体脂肪率が増えているか? 減っているか? を気にするのが、体脂肪計の正しい使い方でしょう。

(大山奏)