「嫌なことは寝て忘れろ」、「寝ちゃうにかぎる!」といったことをよく聞きますが、あながちそうとは言い切れないようです。嫌なことがあったことにすぐ寝てしまうと、記憶だけでなく、感情反応までもが睡眠を介して「守られ」残ってしまうことが、研究で明らかになりました。
Photo by Wavebreakmedia ltd/Shutterstockマサチューセッツ大学アマースト校の神経科学者レベッカ・スペンサー氏が率いる研究チームによる科学的検証結果が、米神経科学専門誌『ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス』に掲載されています。実験内容は次のようなものです。
18歳から30歳までの男女106人を対象に、戦争や自動車事故などの否定的な感情に訴える写真を含めた複数枚の画像を見せ、それぞれに対する感情的な反応を1~9でランク付けする「格付け評価」をしてもらいました。その後、被験者の半数に睡眠をとらせ、12時間後に再び画像の評価を行いました。
英紙『Daily Mail』によると、1回目と異なる画像を含む様々な画像を見せた結果、睡眠を挟んだグループは、1度見た写真でも「不安」などの負の感情があまり緩和されていなかったそうです。一方で、睡眠を挟まなかったグループの方が、2度目に写真を見せられたときに比較的落ち着いた反応をみせたとのこと。一連の実験結果から、こころの傷(トラウマ)になりそうな出来事に遭遇したあとにすぐ寝てしまうと、その出来事を記憶として保持するだけでなく、そのときに抱いた感情も定着する危険性があるといえます。
嫌なことがあったりすると、夜眠れなくなる...なんてことはよくありますよね。これは防衛機制として、いや~な感情的記憶を残したくないために、脳が眠ることを拒否しているからかもしれません。ある意味、非常に健康的な生理反応だと言えます。怒ってイライラが募ったり、ムカムカ不快な気分の時などは、ネガティブな気持ちのまま無理矢理「ふて寝」するよりも、しばらく起きていて心の整理をつけてから眠った方が良いのかもしれません。
Sleep preserves and enhances unpleasant emotional memories | Medical Xpress
Jason Chen(原文/訳:kiki)