こんにちは、和食料理人の箱石昇平です。
今年もあっという間に年末を迎え、寒さも日を追うごとに増してきましたね。冬の献立に欠かすことのできないのは、何といっても「鍋料理」でしょう。昨今ではカレー鍋やトマト鍋など、鍋の種類も多岐にわたりますが、ご家庭で鍋といえば、やはり水炊きや湯豆腐などのシンプルな鍋料理の頻度が多いですよね。そして、これらの鍋の味の決め手は鍋のスープではなく、「ポン酢」です。
皆さんのご家庭では、既製品のポン酢を利用されていると思いますが、是非一度自家製のポン酢を作ってみてはいかがでしょうか? そうは言ったものの、自家製のポン酢を作るには買い慣れない材料から揃えなくてはならないし、経験のない方がほとんどでしょうから、どうしても敬遠してしまいがちだと思います。
そこでまずは、最も簡単な既製品のポン酢を美味しくさせる一手間からご紹介し、その後に本格派自家製ポン酢の作り方をご紹介します。
- 既製品のポン酢
既製品といっても様々な種類があるので、ここでは特に指定しません。ご家庭に常備している物でお試しください。 - 100%果汁のオレンジジュース
濃縮還元のオレンジシュースでも良いですが、やはり香りが違ってくるので、純粋な果汁のオレンジジュースをオススメします。もちろん生のオレンジを絞った果汁なら、なお良いでしょう。
- 既製品ポン酢10に対し、オレンジジュースを1~2の割合で混ぜる。
- 少なくとも一時間、時間的に余裕があれば一日置きましょう。混ぜ合わせた直後だと味が馴染まず「喧嘩」をしているので、しばらく寝かせることで味に「丸み」が出ます。
たったこれだけで、既製品特有のケミカルな味と刺々しさが無くなり、オレンジの甘味と香りによってフレッシュさが増し、味に丸みが生まれて深い味わいになります。飲み比べていただければ、違いがわかるはずです。
どんなに出不精な方でも、混ぜるだけの簡単作業なら出来ますよね? 実は、自家製ポン酢も作業は全く同じ「混ぜるだけ」です。同じ混ぜるだけで、もっと本格的な味わいを出せるなら、試してみたいと思いませんか?
それでは、本題の自家製ポン酢の作り方をご紹介します。
- 濃い口醤油:10(200ml)
- 柑橘果汁(ダイダイ、カボス、スダチなど):10(200ml)
- みりん:2~4(40ml~80ml)
- 鰹節:1(20g)
- 出汁昆布:0.2(4g)
これらを混ぜ合わせて一週間ほど寝かせた後に、ザルなどで鰹節と昆布を濾します。先ほどの既成品ポン酢とは違い、各調味料の味が馴染むには時間がかかります。最低一週間は寝かせてください。ポン酢は完成して濾した後でも、寝かせれば寝かせるほど味が丸くなり、深みが出ます。利用頻度も多く、日持ちするので、多めに作っておくと良いでしょう。
これで自家製ポン酢の完成です。覚えてしまえば非常に簡単だと思います。
- ポン酢の旨みを決めるのは鰹節と出汁昆布です。表記よりも多めに入れても構いません。より旨みが増します。
- 一週間寝かせてザルで濾す際に、ポン酢以外の水分や汚れは劣化の原因になるので、混入しないように容器や器具を良く洗い、乾かしておきましょう。
この自家製ポン酢の配合比率を基本に覚えておけば、さらに工夫を加えてプロ顔負けのオリジナルポン酢を作ることもできます。素材例をいくつか挙げてご説明しましょう。
- たまり醤油
味が重厚になり、深みが出ます。ただし、味が非常に強いので、入れすぎに注意してください。 - 穀物酢、米酢、千鳥酢
酸味が際立って、パンチのある味になります。柑橘果汁とのバランスを考えて、入れすぎないようにしましょう。 - 柑橘果汁ミックス
色々な柑橘果汁を混ぜれば、それぞれの特徴を生かした複雑な味わいが得られます。これを応用したのが、先ほど紹介したオレンジジュースです。 - 煮切酒
昆布のグルタミン酸と反応して、旨みが増します。 - 焼昆布
昆布は酒で湿らせてからオーブンなどで焼くと、磯臭さが消えて味が非常にまろやかになります。 - 厚削り節
一般的な鰹節よりも出汁が濃厚に出ます。
これらの羅列した素材を全部入れることが一番美味しいというわけではありません。作り手の味覚によって美味しさは千差万別ですし、同じ素材でも、メーカーや値段によって味は変わっていきます。基本の配合比率を乱さないようにアレンジすることを念頭に置いてください。
最後のおさらいとして、私がオススメする自家製ポン酢の配合をご紹介します。
- 濃い口醤油:10(200ml)
- たまり醤油:1(20ml)
- ダイダイ酢:10(200ml)
- 千鳥酢:1(20ml)
- 煮切酒:3(60ml)
- みりん:4(80ml)
- 鰹節:2(40g)
- 出汁昆布:0.3(6g)
全体的に力強い味に仕上がります。寝かせて丸みが出ると非常にバランスが良いので、オススメです。鍋料理にはももちろん、脂の乗った焼き魚との相性も抜群ですよ。
経験のない方には非常に難しいと思われがちな自家製ポン酢も、一度作ってしまえばその美味しさにやみつきになること請け合いです。皆さんもオリジナルポン酢を作って、様々な料理を楽しんでみませんか? 是非お試しを!
(箱石昇平)