牛乳は、そのままグビグビっと飲んでよし、朝食のシリアルにかけてよし。また、唐辛子で口の中がヒリヒリしたときに飲むと辛さがおさまったり、にんにく料理のあとのニオイ対策にも効果があります。そこでこちらでは、私たちの身近な飲み物である、牛乳の保存期限について、詳しく採り上げてみましょう。
ご存知のとおり牛乳は生もの。時間が経てば、やがて腐ってしまいます。米国で市販されている牛乳パックには、「販売期限(sell-by)」もしくは「消費期限(expiration date)」を表示。日本でも、牛乳のほとんどに「消費期限」が明示されていますが、捨てるのは気が引けて、この期限が過ぎた後もなんとか飲めないものか...? と思ってしまうのが人情ですね。
ヨーグルトのようにドロドロになっていれば、明らかに「飲まないほうがよさそうだ」と判断できますが、一見しただけでは判断つきかねることもあります。そのようなときは往々にして、におったり、味見をしたりと、自分の嗅覚や味覚を頼りにしがちですが、必ずしも、これだけでは正しく判断することは難しいそうです。
そこで、食品衛生の専門家に「期限切れの牛乳を飲んでも、安全なのか?」「もしそうだとしたら、いつまでなら大丈夫か?」について、詳しく聞いてみました。米国の表示をもとにした見解ですが、日本の皆さんも参考にしてみてください。
■「販売期限」と「消費期限」とは?米フロリダの料理教室「Lincoln Culinary Institute」の講師Peter Bonet氏によると、「販売期限」には、小売店が販売を止めなければならない日が、「消費期限」には、牛乳が正しく保管されている前提で、これを廃棄すべき日が、それぞれ表示されているとのこと。
ただし、米ニュージャージー州「Public Health institute」のDrew Harris会長によると、この「消費期限」や「販売期限」はそれほど標準化されたものではないとか。米国では、牛乳は連邦政府ではなく、州が管理しているため、その期限の定め方は若干異なります。汚染しやすいがゆえ、生乳の販売を一切禁止している州もあるくらいなのです。
そこで、Pasteur博士は、牛乳を殺菌するためのプロセスを発明。「Cornell University Milk Quality Improvement Program」の論文では、「華氏45度(摂氏約7.2度)という限界値に近い温度での冷蔵保存という条件で、牛乳の中の細菌の量がどれくらいになるかをチェックし、これに基づいて保存期限を定めている」と記述されています。一方、Bonet氏は、華氏38度(摂氏約3.3度)以下での保存を推奨しています。
この論文によると、飲用に適しているかの測定方法のひとつは、細菌の一般生菌数(SPC)です。新鮮な搾りたての牛乳では、1ミリリットルあたり500未満で、1000になると、生乳の供給か加工装置の中で感染したおそれがあると考えられるそうです。牛乳を販売する際は、1ミリリットルあたり2万が、規則で定められた上限となっています。
消費者が購入後、華氏45度(摂氏約7.2度)で冷蔵保存した場合、牛乳は6日以内に飲めなくなります。この時点では、SPCが1ミリリットルあたり100万を超え、ビミョウな味がすることもあります。
最適に低温滅菌加工され、正しく保存されていても、販売期限は搾乳されてから21日を超えてはならないと定められています。14日を過ぎると、殺菌加工プロセスで生き残った細菌が、最終ステージに達するそうです。
これらを踏まえると、大まかに牛乳を安全に飲める期間は、販売期限から5日間保存できるとして、販売期限から実際の購入日を引き、「5」を足した日数。たとえば、販売期限が8月27日の牛乳を8月17日に買ったなら、27-17+5=15で、15日間となります。消費期限が明示されているなら、それに従いましょう。
■牛乳の種類や保存方法は関係ある?Harris会長によると、低温殺菌、生、超低温殺菌、脂肪分、冷蔵庫から出しっぱなしになっていた時間、冷蔵保存場所など、様々な要因があるそうです。もちろん、基準は一定の条件に基づいて定められているようですが、実際に安全に飲める期限は、消費者が購入後に牛乳をどう扱うかによります。もちろん、牛乳は常に冷蔵保存すること。できるだけ長い期間で消費したいなら、テーブルやキッチンに1~2時間、置きっぱなしのままなんてことはNGです。また、Bonet氏によると、まとめ買い派の方は、超低温殺菌のものを選ぶとよいとか。これは、牛乳がより長く、熱い状態で殺菌処理されているためです。
■飲む人によって違いはある?Harris会長は、「牛乳を飲むのが誰なのか? に注意すべき」と指摘。細菌への感染のしやすさは人によって異なります。特に、子ども、高齢者および、免疫に欠陥のある人には十分注意すること。また、においではわからない細菌もあるので、「特段の異臭がしないから安全だ」と判断するのはNGです。飲みきれなかった牛乳は、潔く廃棄しましょう。また、自分の牛乳に他の人が直接口をつけると、牛乳に細菌が移ることもあります。必ず、飲む量だけコップに移してから、飲みましょう。
Jason Chen(原文/訳:松岡由希子)
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