オンライン上でデータを同期、保管、共有するサービスでは『Dropbox』が一番有名で人気もありますが、かといってこれがベストなのかといわれると、そうでもありません。最近あったDropboxのセキュリティの問題や個人情報露出を心配している方々が、Dropbox以外の他のオンラインストレージを調べたりしているため、最近Dropboxに打って変わるサービスが注目を浴びています。

Dropbox以外に有名なオンライン同期サービスでは『Windows Live Mesh』、『SpiderOak』、『SugarSync』、そして『Wuala』などがあります。簡単にデータを同期できるため、今までDropboxをオススメしてきましたが、Dropboxに使える小技は、他のサービスを通しても使用できますし、他社サービスはDropboxよりも多い容量を提供してくれたり、柔軟性に秀でていたり、セキュリティをより高めてくれたりなど、Dropboxより魅力的に感じる部分も多いです

 ■これらのサービスは何をしてくれるのか

これらのサービスは全般的に無料のオンラインスペースを提供し、ファイルを保管もしくはバックアップ可能な状態にして、多数のコンピューターやモバイルデバイス間での同期を可能にしてくれます。全てMacとWindowsに対応しており、サービスによってはLinuxや他のモバイルプラットフォームにも対応しています。

下記のチャートでは、この5つのサービスが対応しているプラットフォーム、容量、そして追加容量にかかる金額などが比較されています。お急ぎの方はこれを参考にしてくださいませ。

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Linuxユーザーの方々は、残念ながらDropbox、SpiderOak、そしてWualaしか使う事ができません。お持ちの携帯が、Windows MobileもしくはSymbianを搭載しているのであれば、SugarSyncが一番用途に合っているかもしれません。

オンラインストレージを選ぶ時には、容量やギガバイト単価より考慮すべき事が実は多いです

■独自の機能

これらのサービスをお互いに比較すると、それぞれに長所と短所があります。それでは各サービスの機能を紹介しましょう。

Dropbox

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ローカルネットワーク上の同期に優れたパフォーマンスや、使いやすさ、そして豊富なサードパーティツールが多数存在しています。例を挙げれば、 「SideCLOUDload」、「Dropbox Screen Grabber」、「Dropbox Linker」など、他にも沢山あります。さらに、『Outlook』や『Thunderbird』などのデスクトップメールクライアントを複数のコンピュータで同期させる方法は、Dropboxの特殊な同期方法を採用しているため、Dropboxでのみ使用可能です。そして、料金を支払わなくても、容量を増やす方法がたくさん存在します。


Live Mesh

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Microsoftが提供するこのファイル同期サービスは、バックグラウンドで作業するのを得意としています(作業していることに気づかないほど)。ストレージは、Live Meshをローカルストレージとして使うか、『SkyDrive』が提供している5GBのオンラインストレージを利用可能です(25GBまで増やせます)。Microsoftが提供しているので、予想できるかもしれませんが、WindowsユーザーはLive Meshを通して、他のOSユーザーより恩恵を受ける事ができます

例えば、Live Syncでネットに接続されたWindowsコンピューター間を、遠隔操作で(「Remote Desktop Connection」と同じ様に)『Microsoft Office』と『Internet Explorer』の設定が同期できます。「Office Web Apps」で作業したオンラインドキュメントが保存されるのがSkyDriveなので、SkyDriveとの総合化も可能です。


SpiderOak

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ユーザーの情報を一切観覧せず、頑強なセキュリティを売りにしている(下記参照)SpiderOakですが、他にも他社サービスとは違った高機能サービスを提供しています。

SpiderOakは、パソコンと携帯デバイスを同期するだけでなく、外付けハードディスクやネットワークボリュームも同期できます(例:デスクトップ、ラップトップ、USBドライブを全て同期可能)。バックアップ、アップロード、同期されたデータについての詳細な情報も提供しているので、データの管理には安心できるはずです。さらに、友達を一人紹介する毎に、1GBの要領がもらえるのも魅力の一つでしょう(紹介によって増えるスペースは最大50GB)。


SugarSync

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SugarSyncは、Dropboxができる事はほとんどできますが、残念ながらLAN同期ができなかったり、APIサポートが弱かったりします。しかし、その分メディアストリーミングやモバイル機器の同期(Android OS搭載機器のフォルダや写真の自動同期サービスなど)に秀でており、フォルダの選択、パーミッションやパスワード設定なども長所の一つです。

SugarSyncのウェブインターフェイスは、Dropboxより機能的で、写真とファイルを別途に保管できたり、ウェブアプリ上での編集もできます。操作が直感的で、非常に便利です。サービスに登録すると5GBのスペースがもらえ、紹介毎に500MBのスペースを追加で得られます。


Wuala

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スイスのHDDメーカーLaCieの提供するサービスで、SpiderOak同様、データを暗号化してバックアップ、同期します。登録時には1GBのフリースペースしかもらえないので、他社のサービスと比べると少なく感じるのですが、Wualaでは特殊な方法で容量を増やす事が可能です。追加容量分を購入するか、パソコン上にある使用していないハードディスクの容量を交換する事で、増やす事ができます(例:外付けハードディスクの余っているスペースなど)。


■使いやすさ

一つのフォルダにドラッグアンドドロップ

どれがシンプルに使えるかと言われると、Dropbox以上に簡単に使えるサービスは無いでしょう。Dropboxフォルダが作成され、そのフォルダにファイルを入れると、まるで魔法のように共有している他のパソコンへ同期されます。そして、所持しているパソコンとの同期だけでなく、他人とのファイル共有も非常に簡単です。Dropboxのサイトへ行って「共有」タブを押し、共有したいフォルダもしくはファイルを選択。あとは、共有したい相手のメールアドレスを記入するだけで共有ができます。


Dropboxと似て非なり:複数のフォルダが使用可能

SugarSyncも「Magic Briefcase」のおかげで、Dropboxと同じような機能が使用できて便利ですが、複数のフォルダを多数のパソコンに同期させると、管理がちょっと大変になるかもしれません。


見て分かりやすい

DropboxとSugarSyncには、便利なトレイアイコンがあり、MacとWindowsの対応に優れています。そして、フォルダをみるとマークが付いており、フォルダ内のファイルアップロード状況が一目でチェックできます。容量をオーバーしそうになるか、オーバーしてしまった場合にも、ちゃんと通知されるのがうれしいです。


昔ながらのファイル管理インターフェイス

SpiderOakとWualaのユーザーインターフェイスは、簡単で理解するまでには時間がかからないのですが、他のサービスの「フォルダにファイルを全て放りこむスタイル」に比べると、多少の計画性と一考が必要になります。

Live Meshは同期するフォルダを一つずつ選択しないといけませんが、どのフォルダを同期させバックアップするのかを選択する事で、もう少し管理しやすくなるはずです。シンプルさを求めるか、高機能を求めるかによって、選択肢は変わると思います。以前説明した「シンボリックリンク」や『Dropbox Folder Sync』を使用したDropboxフォルダ外にファイルやフォルダを同期する方法を使えば、Dropboxのワンフォルダアクセスより管理しやすいはずです。


同期とは別のバックアップ

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ご紹介した5つのサービスの内、SpiderOakのインターフェイス・システムは、他のサービスに比べて、セットアップが紛らわしく感じる事でしょう。他でセットアップする場合、同期・バックアップしてほしいフォルダを選択し、後はお任せするだけで良いのですが、SpiderOakの場合、先にバックアップしたいフォルダやファイルを選択し、そのファイルやフォルダがアップロードされるまで待たなくてはいけません。

その後、どのフォルダをどの機種と同期させるのかを選びます。バックアップと同期を分ける事で、バックアップしておきたいけど、他の機種とは同期させたくない...といったケースに役立ちます。もし何かあった場合、同期とバックアップを分けておく事でリスクを分散させる事が可能です。ただし、ユーザーの立場から考えると、不必要なステップが一つ増える事になるので、面倒と感じられるかもしれません。

Wualaも、同様にバックアップと同期を分けており(Wualaの場合はSpiderOakと違い、最初にバックアップをする必要がありません)、この2つのサービスは、同期以外の他のオプションを望む人達が使用するには優れたサービスかもしれません。


■セキュリティと個人情報保護に関する方針

セキュリティに関しては、SpiderOakとWualaが優れています。Dropboxと違い、データを解読するのに必要なパスワードが、使用するパソコンにしか保存されません。SpiderOakは「ノーパスワードストレージ」を提唱しており、SpiderOak社では、データはもちろん、ファイル名すら誰も覗けないようしているそうです。

最近起こったDropboxの認証システムのバグや、理解しがたいサービス規約の変更、そしてDropbox社員がファイルにアクセスできるという事実から、Dropboxの評判は以前に比べ、大分下がっています。この問題によって、大きなセキュリティの問題があるとは思いませんが、機密性の高いデータなどは、Dropboxに保管する前に暗号化するのをオススメします(Dropboxだけでなく全てのサービスで、重要なファイルは暗号化したほうが良いでしょう)。他社サービスはセキュリティを重要視しているため、Dropboxの方針とは違う方向性をとっています。下記にあるのが、他社サービスのセキュリティに対しての声明文と発表です。

SpiderOak

SpiderOakでは、ユーザーのパスワードや暗号キーを保管したり調べたりしません。SpiderOakの社員ですら、ユーザーのデータにアクセスできないという事です。我々のZero-Knowledge(ゼロ知識、関与しない)をベースとしたプライバシーへのアプローチは、ユーザーの信頼を裏切れないという思いから来ています。

SpiderOakは、最近2重暗号認識システムを既存のシステムに加えたそうです。

SugarSync

我々は皆様のデータを安全に保管するため、業界内最高と呼ばれる手法をとっています。皆様のファイルは、TLS(Transport Layer Security、インターネットにおいて情報を暗号化して送受信する方法)を使って送信され、128ビットAES(アメリカの暗号規格)で暗号化された後、クラウドに保管されます。これらの方法で、オンラインバンキングなどで使用されるほどの高い安全性を保証します。

Live Mesh

「Technet」の投稿文によると、Microsoftのサーバーに保管されているファイルは、アクセス制御により守られていますが、暗号化はされていません。


Wuala

全てのファイルは、皆様のデスクトップ上で暗号化されています。そして、パスワードは使用しているコンピューターに保存され、それを使用しない限り、サービス提供者である私達も、皆様のファイルやパスワードにはアクセスできません。Wualaでは、実証された暗号化技術(AES、RSA、そしてSHA)を使い、皆様のデータを安全に保管しています。

簡単にまとめると、ファイルを安全に保管するために必要な手段をとり、そのポリシーも徹底しているSpiderOakとWualaが、セキュリティに関しては一番良いと思います。しかし、何かがあってからでは遅いので、例えサービスが安全だとしても、機密性の高いデータをオンラインで保管する場合には、できるだけ自ら暗号化して保管してください

■パフォーマンス

筆者がテストした際には、DropboxとLive Meshがパフォーマンス面では一番良かったそうです。その理由は、ローカルネットワーク上での同期が可能であり、他社のサービスのように、オンラインサーバーにいちいち接続しなくても良いからとのこと。

DropboxのLAN同期とLive Meshのローカルシンクは素晴らしい独自性を持っており、他のパソコンとの同期にかかる時間を短縮できて、非常に便利です。そして、同じネットワーク上に無いコンピューターやモバイル機器とも楽に同期できます。それ以外のパフォーマンスは大体ほぼ同じで、ファイルをアップロードした時や削除する時のパフォーマンスも、ほとんど変わりませんでした。

全てを試してみて、SpiderOakが最初のフォルダアップロードをする際、Wualaより速かったのですが、その分リソースも大量に消費していました。そしてバックグラウンド上では、SugarSyncが他のサービスに比べて、一番システムリソースを使用していました。

■共有

全てのサービスで、ファイル共有は簡単に設定できます。共有したいファイルやフォルダを右クリック、もしくは選択して、共有したい方のメールアドレスを記入するだけです。

WualaとSpiderOakの場合、グループを作成するか「共有ルーム(Share Rooms)」を使って、、一度に複数の人へデータを発信できるので(SpiderOakは独自のRSSフィードも搭載)、共同作業の環境を簡単に作れます。

共同作業のため、フォルダを共有する機能やクラウド上のファイルへのアクセス権を認める他、この5つのサービスでは、保管ファイルへのパブリックリンクを作成可能です(Facebookにリンクを張ってファイルに直接アクセスできるようになど)。SugarSyncには、Facebookの写真に直接貼り付けが可能になる便利な機能もあります。

Dropboxの残念な点の一つが、他人と共有したファイルの容量が、自分のDropboxの容量を消費してしまうという事。例えば、1GBしかDropboxを使っていないとしても、友人がファイルを共有し、それが1GBのファイルだと、Dropboxの容量を2GB使う事になります。そして、他社のサービス同様、パーミッションを管理する事が難しくなっているので、共有と読み込み専用のフォルダが必要となる場合は、SugarSyncが一番その用途に合っているかもしれません。SugarSyncは、どのフォルダを読み込み専用にするか、暗号をかけるかが設定できるからです。設定によっては、グループでの編集や管理がしやすいWualaも良いでしょう。

■結論

以前説明したように、一つだけではなく、複数のオンラインストレージサービスを使う事によって、与えられたフリースペースを有効的に使う事ができます。仕事関連のドキュメントには、SpiderOakやWualaを使い、モバイル機器に音楽をストリーミングする際にはSugarSync、ローカルネットワーク上にあるパソコンへの同期やバックアップする時にはLive Mesh、そして日常的ファイルにDropboxなど。

使い分けるのが面倒な方は、優先順位で選べば、どのサービスプロバイダーが一番合っているかわかるかもしれません。簡単でサードパーティサポートが一番豊富なDropbox、安全性に優れているSpiderOakとWuala、Windowsユーザーにとって利点が多いLive Mesh、そして、一番豊富な機能と多数のプラットフォーム対応を売りにしているのがSugarSyncです

皆様はどのオンラインストレージがオススメですか?

Melanie Pinola(原文/訳:JD)