「仕事の時間が自由に決められ、好きなことして、収入が得られる」なんてほど、フリーランスは甘いものではないようですが、では、実際どのようにして、フリーランスの仕事を進めていけばよいのでしょう?

こちらでは、フリーランサー歴18ヶ月の筆者による、フリーランスを成功させるためのコツを、ご紹介しましょう。フリーランサーとして既に仕事をしている方や、近い将来独立を希望している人はもちろんのこと、新規事業の立ち上げなどにかかわっている会社員の方々にも、参考になるヒントが示されていますよ。

日産自動車やヒューレットパッカート、ランドローバーといった大手企業を相手に、ソーシャルメディアマネジャーとして仕事をしていた筆者が、フリーランスとして自宅で働きはじめたのは、2009年2月のこと。以降、18ヶ月のフリーランサー生活を通じて、以下の13の教訓を得たそうです。

 

1: ミッションステートメントを書こう(ただし非公開)

1~2文程度の短い表現で「何を目指して、どんなことをしていくのか?」を端的にあらわす、ミッションステートメントを書き起こそう。また、自分が特にフォーカスしたいものを決め、書き出しておこう

これらはあくまでも非公開にして、自分だけにとどめておき、ビジネスや仕事の方向性がブレたり脱線したりしないために、時折、振り返ること。その仕事を受けるべきかどうか? を判断する、基準のひとつとして利用するのもよい。

2: ポジティブな面に目を向けよう

失敗ばかりに目を向けて行き詰るのではなく、ここで得たものを、別の仕事やプロジェクトに生かすという発想を身につけよう

たとえば、子どものための国際支援団体「Save the Children」に勤務していた、Jerry Sternin氏は、当時ベトナムで問題になっていた、子どもの栄養失調を解決するべく、6ヶ月間、ベトナムに派遣された。水不足や栄養の軽視など、6ヶ月では到底解決しえない問題が山積していた中、彼は、別の発想から、この問題に取り組んだ。同じ農村部において、同じ経済状況・同じ衛生状態で生活しながら、病気に苦しむ子どもと、健康な子どもがいることに着目し、両者の違いについて調査したのだ。すると、一度に多くの食事を摂る子どもは病気にかかりやすいのに対して、一日何度かにわけて食事を摂る子どもは健康である、という傾向が明らかになったとか。彼の発見はシンプルなものだが、課題解決に向け、大きな成果をあげたという。

3: ビジネスを成長させるために重要なタスクを特定しよう

自分のビジネスをスタートさせたら、できるだけ早く、やるべき重要なタスクを特定し、優先度を上げてこれに取り組もう。最初は、他の仕事との調整が大変かもしれないが、自分の決めたスケジュールにこだわって継続しておくと、自然と、ビジネスのために重要なことを、優先して取り組めるようになる

ちなみに、私は、以下のようなことを重要タスクとしていた。

  • ブログ記事を書く
  • ニッチなことをリサーチする
  • ウェブサイトを立ち上げる
  • ウェブサイトを宣伝する

4: まずは始めよう

正直、今日、この記事を書く気分ではなかった。もちろん、この記事を通じて世の中に訴えたいと思っていたし、そのためのアイデアも頭の中にはあった。自分の記事に対して、どんな反応が来るのかも楽しみだ。でも、なんとなく書きたくない...。そんなときは、まず300文字だけ書いてみて、残りは別の日に取り組むようにしている。最初の300文字が書ければ、あとはどれだけでも書き進められるものだ。実際、この記事も、結局は同じ日に書きあげた。

このように、大きなタスクで気が重くなっているときは、まずは少しだけ取り掛かかろう。一歩踏み出すことで、タスク遂行に向けたパワーがみなぎってくることもある。もしそうならなくても、タスクは少しは進行している。

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5: 「勤務時間」を決めよう

「せっかく、仕事の時間を自由に決められるようになったのに、いまさら『勤務時間』って...」と感じるかもしれないが、勤務時間を決めることで、プライベートと仕事にケジメをつけることができる。

自宅で仕事をしていると、食事をとりながらメールをチェックしたり、シャワーを浴びながらブログ記事のネタを考え、すぐにPCに向かうということも可能だが、普段の生活を犠牲にし、長時間仕事すると、むしろ生産性が低下する。

6: 本当に必要なものにだけにお金を使おう

お金を稼ぐことよりも、これをうまく貯めることの方が難しい。自分で仕事を始めると、「あれも必要」、「これも欲しい」と、稼ぎよりも使い道ばかりが頭に浮かぶこともあるだろう。PCや本、ソフトウェアなど「これは仕事に必要だ」と感じたときは、買う前に「これがなかったら、本当に仕事ができないのか?」を自分に問うてみよう。

7: 「プライベートより仕事を優先」で

フリーランサーは、自分が自分のマネジャー。誰に気兼ねすることもなく、友人と出かけたり、家族との時間を過ごすことも可能だが、誘われるままに応じてしまうのはNG。あくまでも、仕事を優先させ、プライベートとのメリハリはきちんとつけること。

8: 仕事にはオープンな姿勢で臨もう

自分をどうマーケティングし、どのように稼ぐかにもよるが、ビジネスは人と人とでやっていくもの。「プロフェッショナルとして」とか「ビジネスライクに」を過剰に意識して、自分を飾る必要はない。

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9: 自分の「マーケティング」を自分でやろう

デザイナーはアイデアを発想する人、エンジニアはアイデアを具体的に仕立てる人、マーケターはこれを売る人、といった役割分担は、もはや機能しない。自分で自分を売り込むマーケティング活動が必要だ。マーケティングは、ウェブの広告枠を買うことだけではなく、他のブログにコメントを残す、ブログ記事を書く、メールに返信するといったことも、マーケティングのひとつである。

10: 「困っていること」に商機あり

お金を稼ぐ上で、もっとも簡単な方法のひとつは、人々の問題を解決するということだ。人々の不安や不便は、有望なビジネス機会である。では、この商機をどうやって見つけるのか? それは、自分が普段感じている不便や、問題に注目することだ。自分が困っていることは、他の人々にとっても、そうである可能性があるのだから。

11: 自分もマーケットの一員になってみよう

ターゲットとするマーケット層が、何を求めているのかを知るベストな方法は、自分自身がマーケットの一員になってみることだ。机上の空論で時間を費やすよりも、マーケットに自分も関与することで、ターゲット層が実際どのように感じているか? を知るほうが効率的。たとえば、以下のようなことがわかるだろう。

  • 製品のお気に入りポイントはどこか?
  • 他のシステムや、ソリューションの気に入らないところはどこか?
  • 顧客として、どう扱って欲しいと期待しているか?
  • 何かを買うときの動機や、きっかけは何か?

12: 商品やサービスを実際にリリースしよう

電子書籍『Cloud Living』に取り組んでいたとき、残り3週間になったところで、自分でリリース日を設定し、これを守ることにした。1ヶ所誤りはあったが、その他は完璧な出来だった。

『Cloud Living』は、そもそも、同じテーマで30ページほどの電子書籍をリリースしたとき、読者から多く寄せられた質問に答えるべく、書いたもの。読者の反響によって、いい作品ができたと感じている。中途半端なものや、自分の満足していないものを世の中にリリースしろ、と言っているわけではないが、ユーザからの質問や反響によって、一度リリースされた製品・サービスが、作り手にとっても、ユーザにとっても、よりよいものに改善されることはある。一度も日の目を見ないものよりは、90%の出来だが、世の中にリリースされているもののほうがよい。

13: 自分の上司は自分

どう時間を使うか? 何をするか? は、自分次第。自分が、自分の上司であることを意識しよう。ヒトはとかく、他人から「これやって」とか「締め切りは〇曜日ね」と一方的に命令されると、やる気がそがれるもの。自分で、自分の仕事や人生をマネジメントすれば、より楽しく、より多くのことを成し遂げることができるだろう。

フリーランサーにとっては、自分が「営業部長」であり、自分が「マネジャー」であり、自分が「経営者」。様々な役割や視点・スキルが求められますが、これこそ、フリーランスの醍醐味かもしれませんね。この記事は、あくまでも一つのガイドライン。自分の仕事スタイルを、改めて振り返る上で、参考にしてみてください。

このほか、フリーランサーさん向けの記事としては、「フリーランスの仕事の スケジューリングにはスイスチーズ方式が効果的」や「面倒な仕事もサクっと効率化!フリーランスのためのハック術10選」などもご参考まで。

Living Self-Employed Online: The Manual They Forget to Give You [ViperChill]

Glen Allsopp(原文/訳:松岡由希子)