■憧れの1枚の写真写真を撮るのは、とても高価な趣味でした。
中学生くらいのころです。
カメラも高かったし、レンズも(一眼レフを使っていたので)高かったし、リバーサルのフィルムとなるともう、1枚撮るのはよっぽどのシャッターチャンスでないとありえなかったし、現像費がまた死ぬほど高かったのです。リバーサルだとポジなので、印画紙に焼くことはありませんでしたけれども、ネガを使うとこれがまた高かった。大きく伸ばすとさらに高額でした。
そのころに較べると...。
■たくさんの写真
現在、写真はとてもポピュラーになり、デジタルカメラは何千枚も写真を撮れ、携帯電話では位置情報のついた写真まで撮れるようになりました。
いま、「シャッターチャンス」と書いて気づいたのですが、そういえば最近、シャッターチャンスなんて言葉を耳にすることもなくなっている気がします。わざわざチャンスをねらってシャッターを切る必要がなくなっているためです。
ところが、撮った写真をどうするかは、依然としてまだかなり原始的な状況にある気がします。
活用する方法は、まだ充分練れているとは言い難い気がするのです。
わたしが、この数年で、いちばんすごいなと思う写真関係のソリューションは、撮った写真をすぐにWebにアップロードできる『Eye-Fi』です。
ご存じのように『Eye-Fi』は、無線LANを使って、撮った写真をWeb上の写真サービスにアップロードできるSDカードシステムです。初期設定は必要ですが、デジタルカメラの記憶媒体を『Eye-Fi』にすればよいというのは、きわめてわかりやすく優れていると思います。
ただし、『Eye-Fi』を使っても解決できないことがあって、それは写真に対するタグづけです。
■タグづけをどうする?
撮った写真をどう使うかと、タグづけをどう簡単にするかは、切っても切り離せないセットの動作です。シャッターチャンスがなくなって、ほとんど無尽蔵に写真を撮れる時代には、タグづけもシジフォスの責め苦になりかねません。
いかにタグづけを簡単にするか、できるならキーボードを使わずに、というのが、タグづけの最大のテーマです。キーボードを使わないでタグづけしたいとすると、考えられる方法は、
- 画像を解析する
- 画像の周辺情報を解析する
- 画像以外の周辺情報を解析する
などいろいろあります。『FoodLog』では画像の中身を(食事であるという前提で)解析しているみたいですし、GPSの位置情報がついていればそれを使う、などという方法も、だいぶ進歩してきました。
もちろん、顔認識技術もかなり進歩してきています。
■ドラッグ&ドロップでタグづけ
このように、外部の技術も進展していますが、まだやられていないこともたくさんあるように思います。
たとえば、ごくベーシックなことなのですが、あらかじめタグを用意しておく、という方法でも、まだまだやられていないことがあるんじゃないかと思ったのです。
具体的にいうと、あらかじめ用意したタグにしたがってフォルダを作り、そのフォルダに写真を入れることで、フォルダの分類とタグづけを同時に行うのはどうだろうか、と考えました。
ドラッグ&ドロップはファイル操作の基本中の基本なので、それを使って、タグづけできれば、これほど簡単なことはないと思います。
タグづけができたら、ついでにFlickrにアップロードするのもありです。
タグづけの周辺を容易にすることで、タグづけを手軽にしようと考えました。
■なにもしなくてよいシステムをめざす
というわけで、今回試作した『MyPictures2Flickr』は、My Picturesフォルダを監視して、デジタルカメラから写真を転送したら、規定のキーワードでフォルダを作り、フォルダへの分類を完了すると、順次転送した写真をFlickrにアップロードします。
『Eye-Fi』と同様に、タグをつけずに、単に転送するだけならなにもする必要がありません。
ライフハッカーでは、よく「**する**個の方法」みたいな記事を目にしますが、なにもしなくてよいのが、いちばん簡単だと思うのです。
■準備はいろいろ
準備はいくつか必要です。

Flickrのアップロードには、Flickrのメール投稿インターフェースを用いているので、投稿先のアドレスと、送信に使うメールアドレスをいれる必要があります。
Flickrの投稿先のアドレスは、Flickrにログインした状態であれば、[confirm]ボタンを押して確認できます。
デジタルカメラからの転送開始から、タグづけ(リネーム)までの時間と、アップロード開始までの時間を設定する必要があります。
タグづけ用のフォルダ名を設定する必要があります。
■タイムリミット内にタグづけを終える必要あり
以上の準備を終えたら、デジタルカメラをつないで、写真をPCに転送開始です。
つぎつぎとタグづけ用のフォルダができますので、そのフォルダに、転送した写真を移動してください。
デフォルトでは5分後に、タギング(リネーム)を開始し、10分後にFlickrにアップロードを開始します。アップロードしたくない写真は、privateまたはbadまたはnotuploadという名前を含むフォルダにいれてください。
フォルダわけすることで、タグづけを完了できる、タグづけのために、特別な作業を必要としないのが『MyPictures2Flickr』の最大の特徴です。
5分(10分)の制限が、最初はけっこうきついかもしれないので、少なめの写真でお試しいただくのがよいかと思います。ばたばたしちゃうかもしれません。
■制限とか今後の展開とか
Flickrやメールインターフェースを使用するため、いくつもの制限をもっています。
まず、写真の転送は1分間に1枚に限定しています。50枚の写真を転送するのには、待ち時間を含めて約1時間かかります。
先日の『岡崎中央図書館事件』ではありませんが、『MyPictures2Flickr』の試作版を使って、100枚程度の写真をいっきに転送のテストをしたところ、Gmailの単位時間あたりの転送量を超えていたらしく、12時間にわたって使用禁止になってしまいました。
スパム送信者と思われたようです。
これを回避するための制限を加えました。
My Pictures以下のサブフォルダを含むフォルダにあらかじめおいてある写真は転送のターゲットにはしませんが、新規ファイルのみを抜き出すときに、My Pictures以下をすべて調査するので、あまり容量が多い場合には、時間がかかることがあります。
時間がかかるとまあたいてい碌でもないことが起きるのは、プログラムではもう相場が決まっているようなものなので、それはすこし心配です。
試作したプロトタイプでは、タグづけのための規定のキーワードを、予定表から自動的に取得しています。日記帳に書いておけば、それを自動的にタグづけに流用できるのです。先日の『CookpadLoger』とも連動する機能をつけています。
この機能をリリースするためには、予定表/日記帳ソフトをリリースするか、オープンな予定表/日記帳システムを自由に使えるようになっている必要があるのですが、そのようなものがあるのかないのかのレベルから議論していく必要があるのかと感じています。
ちなみに、最短のリリース可能性でいえば、Googleカレンダーから予定を取得してタグづけに利用することなら、できるのではないか、と思っています。個々のプロトタイプはできているので、連携して動作させられれば動く可能性があります。
いきなりリリースしない理由は、『MyPictures2Flickr』のターゲットを『Flickr』と『Googleカレンダー』の両方を使うユーザーに限定しないためです。シンプルなものでないと使われないとか、機能が豊富過ぎて設定がめんどうになる、というのも消極的な理由のひとつです。
まあ、まずはともあれ、現状の『MyPictures2Flickr』をご覧いただいて。それから考えてみようかと思います。
一度設定して使い慣れれば、基本的には写真をクラウドにアップロードする作業に関して、まったくなにもしなくてよくなるのです。なにもしなくてよいのはとても楽です。もっとも、アップロードしすぎて、Flickrのフリーの範囲をしばしば超えがちなので、その点が悩ましいところです。
WindowsXPで動作テストしています。動作には、.NET Framework3.5が必要です。
(美崎薫)