料理に使うアルコールはすぐに飛ぶ、とか、電子レンジでおいしい紅茶は入れられない、とか耳にしたことはありませんか。「Kitchen Myths」では、これらの「伝説」を検証しています。

1. 表面に軽く焦げ目を付けると肉汁を閉じ込めることができる

ウソ

確かに、カレーやシチューのお肉は、一度炒めてから煮込むとおいしくなりますが、これは肉汁を閉じ込めたからではないようです。同じ大きさの肉のかたまりで、表面に焦げ目を付けたものと、そうでないものの調理後の重さを比べてみました。その結果、両方ともほぼ同じ重さでした。つまり、表面に焦げ目を付けても、肉汁は閉じ込められるわけではない、ということになります。

では、なぜ表面を焦がしたものがおいしく感じるかというと、それは「メイラード反応」が見られるからだそうです。これは、プロテインと糖分とが、高温で結びついて化学反応が起き、新しいフレイバーが生まれるというものです。レシピの中には、この化学反応を見越して「表面を焦がす」手順を取り入れているものもあります。

ソース:On Food and Cooking by Harold McGee, Simon & Schuster, 1984.

 

2. ベーキングソーダを冷蔵庫、冷凍庫に入れておくと臭いを吸収してくれる

ウソ

これは、ベーキングソーダを売るための、うまいマーケティング術だと言えます。よく調べてみると、ベーキングソーダには臭いを吸収する力はあまりない、ということがわかりました。むしろ、冷蔵庫に入れる食品はラップできっちり包んだり、冷蔵庫の中を頻繁に掃除したりする方が、臭いを抑えることができますよ。

ソース:http://www.newton.dep.anl.gov/askasci/chem00/chem00388.htm

3. オムレツやスクランブルエッグを作るときには、牛乳の代わりに水を入れた方がいい

どちらともいえない

どうやらこれは、牛乳を入れると卵が固くなるから、ということで言われているようです。実際「Cook's Illustrated」が試してみたところ、水が入ったスクランブルエッグはフレイバーの点で劣るし、ふわふわにはなりませんでしたが、牛乳を入れたものとの差はあまりありませんでした。ふわふわにしたいのであれば、クリームを入れるといいですよ。

ソース:The Best Recipe, Boston Common Press, 1999.

4. 寿司とは生魚のことである

ウソ

これは、日本人には常識ですが、外国人の中にはよくわかっていない人も多いので、生魚が食べられないという理由で、寿司を敬遠している人がいたら、説明してあげてくださいね。

5. ロブスターは茹でられるときに、痛みのあまり叫ぶ

ウソ

これは二つの点で間違っています。ロブスターは叫ばないし、痛みも感じません。そもそも、ロブスターを茹でるときに聞こえる音は、殻の間にたまった空気が外に出ることで発生しています。これで、茹でるときの罪悪感が少しは減ったでしょうか。

6. 料理に使ったアルコールは全部飛んでしまうので、食べるときには全く残っていない

ウソ

アルコールは沸点が水より低いから、水が沸騰する頃には全部気化してしまう、と信じている人は多いことでしょう。しかし、調べてみたところ、調理が終わった後でも、アルコール分が残っていることがわかりました。たとえば、沸騰した水にアルコールを加えて、15分加熱しただけではは45%、2時間半加熱を続けてやっと5%まで減る程度です。加えたアルコール分にもよりますが、加熱したからアルコールはなくなる、は正しくなかったんですね。

ソース:US Department of Agriculture Nutrient Data Laboratory

7. フライパンを温めてから油を入れるとくっつかない

ホントだけど...

たしかに、熱したフライパンに油を入れてすぐに食材を加えると、くっつきにくくはなりますが、これがくっつかなくなる唯一の方法ではありません。フライパンと一緒に油を熱しても、くっつかなくなるのは同じで、むしろこの方法の方が料理しやすかったりします。なぜなら、油の状態を見て、食材を入れていい温度まで温まったかどうかが、わかりやすいからです。

8. アルミの調理器具を使うとアルツハイマーになる

ウソ

そもそも、この説がどこからきたのかというと、アルツハイマー患者の脳から、普通の人より多いアルミニウムが検出された、というリサーチです。

アルミニウムがアルツハイマーを引き起こすかどうかは、はっきりわかっていませんが、患者の脳から高い数値が出るから、おそらくそうだろう。ということは、アルミニウムに触れない方がいいということで、広まりました。しかしその後、アルミニウムがアルツハイマーを引き起こすのではなく、アルツハイマーになったことによって、脳にアルミニウムが蓄積されることがわかりました。

ソース:Alzheimer's Society

9. 料理にはやっぱり電気よりガスコンロ

ウソ

電気コンロでは、まともな料理ができないという人は結構いますよね。確かにガスコンロの方が本格的ではありますが、電気コンロの方がいいこともありました。たとえば、弱火にしたときの安定度、沸騰するまでの時間、熱効率、後片付けのしやすさ、という点では電気の方が勝っていました。つまりは、電気でもガスでも一長一短ということです。

10. よく熟れたトマトを切るには、歯がギザギザのナイフを使わなければいけない

ウソ

といっても、もちろんギザギザナイフを使ってはいけない、というわけではありません。普通の包丁で切れないから、ギザギザを使うというのであれば、おそらく普通の包丁を研ぐ必要があるのでしょう。ちゃんと研いである包丁を使えば、熟れたトマトを薄く切ることは可能です。包丁の切れ味を試すために、わざわざ熟したトマトを切ってみる人もいるくらいです。

11. オリーブオイルで揚げ物はできない

ウソ

オリーブオイルは低温で煙が出てしまうので、揚げ物に向いていないという人は多いですが、できないわけではありません。ただし、オリーブオイルは他の揚げ油より高価で、一度揚げ物に使ったオイルは再利用しない方がいいので、あまり使いたいと思う人はいないかもしれませんね。

12. 調理前の肉に塩をふってはいけない

ウソ

この説の元になっている考え方は、塩をふると肉汁が外に出てしまって、フレイバーがなくなるから、というものです。確かに理論上は、塩には水分を外に出す働きがありますが、肉の場合はそれほど変わらないようです。それに、数々のレシピや、有名なシェフが調理するのを見てみると、やっぱり生の肉に塩をしています。水分が出ておいしくなくなるんだったら、そんなことはしないはずですよね。

13. バナナを冷蔵庫に入れたら食べられなくなる

ウソ

確かに、冷蔵庫に入れたバナナの皮は茶色になってしまいますが、向いてみると中身はそれほど熟れていません。冷蔵庫に入れることによって、熟すスピードは遅くなるからです。

ソース:Chiquita Banana web site and personal experience

14. 電子レンジでおいしい紅茶はいれられない

ウソ

電子レンジで温めたお湯だと、紅茶がおいしくないのは、おそらくカップの上の方だけが沸騰した状態で、ティバッグを入れてしまったからでしょう。電子レンジの中で沸騰したなと思ってから、5秒から10秒そのまま沸いた状態にして、お湯の中にティバッグを入れれば、やかんで沸かしたお湯をカップに注いだのと同じことになるので、おいしいお茶がいただけます。

お茶の種類によっては、沸騰したお湯では温度が高すぎて、香りが壊れてしまう可能性もあるので、注意してください。また、電子レンジの中で長時間沸騰を続けると、耐熱カップでも割れることがあるので、気をつけてください。

ヘー初耳、というもの、ありましたか? そんなこともう知ってたよ、というものもあったかもしれないですね。他にもお料理に関するウソ、ホントをお待ちしています。

Kitchen Myths [Peter Aitken's Pages via brainpicker]

Kevin Purdy (原文/山内純子)