『フリーエージェント社会の到来』や『ハイ・コンセプト』などの著書で、来るべき未来の社会を鋭く予言し大きな影響を与えているダニエル・ピンク。そのダニエル・ピンクが次に取り組んだテーマはモチベーション!
ダニエル・ピンクの名前は知らなくても、TEDでの講演「やる気に関する驚きの科学」という動画は日本でも話題になりましたから、ご存じの方も多いのでは。
本書では、モチベーションをPCのOSになぞらえて
- モチベーション1.0 生存の欲求基づく生理的動因
- モチベーション2.0 アメとムチ、報酬と罰型
と分類しています。
現在の企業や社会では、働くと給料が貰えて怠けると罰があるモチベーション2.0が主流です。しかし、アメとムチ型のモチベーション2.0では、例えばワールドカップで活躍するような一流のサッカー選手、報酬が約束されているわけではない芸術家たち、Wikipediaをコツコツと更新する人たちなどの行動は説明がつきません。
彼らは、報酬が期待できるから活動するわけではないでしょうし、怠けたから罰が待っているわけでもないでしょう。
そこには、今まであまり知られていなかった、生存への欲求、アメとムチ以外の人間心理が隠されていたのです。
続きます。
モチベーション3.0は人間の「学びたい」「創造したい」「もっと世界をよくしたい」という心理に基づく、内なる欲求に基づくものです。これを企業でうまく利用し成果をあげているものでは、Google社の20%ルールが有名ですね。
モチベーション3.0に大きな影響を与える3つの要素があります。
- 自律性
- マスタリー(熟達)
- 目的
の3つです。
自律性に関して言えば、時間や手法をガチガチに管理されていて自由度が低い状況では、やる気が出ないのも分かるような気がします。マスタリーに関しても、毎日毎日同じ事の繰り返しでレベルアップが見込めないような事では、これまたやる気が出ないでしょう。
最後の目的も、同じ事をやるにしても高邁な目標があると、やはりやる気に大きな影響がありそうですよね。
日々の仕事や、プライベートの英語学習などで、「どうにもやる気が...」という方は、この「自律性」「マスタリー(熟達)」「目的」の3つの項目がうまく設定されているか確認してみてはいかがでしょう。
仕事のやり方は変えるわけには行かない場合も多いでしょうが、「目的」の設定ひとつでやる気が変わるかもしれません。面白いですよね。
そして、モチベーション3.0に欠かせない、もう一つの重要な概念が「フロー」です。仕事やなにかに集中していると、周囲の音が聞こえてなかったり「おっと!もうこんな時間か」となることがたまにありますがアレです。ゴルフの石川遼選手は「ゾーン」と呼んでいますね。
このフロー状態は、アメとムチで行動している場合にはなかなか入りにくく、内なる欲求に基づき集中しているときに入りやすいようですが、自由自在に入れるようになりたいですね。「気がつけばもう原稿ができあがっていた!」という感じで。
本書の第3部には、このモチベーション3.0に役立つツール類が紹介されています。それも個人用・組織用・保護者用とわけてそれぞれ9つずつです。
個人的にモチベーションを上げたいと思っている方にはもちろんですが、会社の社長さん管理職の方で「給料さえ払っていれば文句ないだろ!」という思考の方にはぜひ読んで欲しい一冊です。
(聖幸)