普段はソツなくタスクをこなすアナタでも、どうもアイディアを形にできない、ということはありませんか。そういうときは、プロジェクトリストを見直した方がいいかもしれません

David AllenのGTDや、その他のシステムを使って、アイディアを紙やデジタルフォーマットで整理している人は、情報収集という点では、うまくいっていることが多いのですが、そこからタスクを遂行する段階になると、どうもひっかかってしまうことがあります。

それは、いくら情報が整理整頓されても、どんどんたまっていって、実行が追いつかないからです。そのままでは、せっかく浮かんだいいアイディアも、日の目を見なくなってしまいますよね。そこで、今回はプロジェクトを見直して、達成可能なリストを作る方法を紹介します。後半は楽しいおまけもありますよ。

 

■そもそも、なぜリストは肥大するのか?

061210_3953.jpgPhoto by pixelstar

私たちは、ユビキタスで情報整理ができることを知り、ものすごい力を得たように感じました。そして、どんな情報でも捕まえておこうとしました。例えば、知り合いの誕生日、ちょっとした用事、ご飯を食べているときに思いついたアイディアなど、一昔前だったら、すぐ頭の片隅に追いやられてしまうようなことです。ユビキタスを使いこなせば、第二の記憶を得たような気分になりますよね。でも、それが間違いの元だったりします。第二の記憶ツールには、どんどん情報を溜め込めるので、いつの間にか膨大な量のデータがたまってしまい、制御不能に陥るのです。

■プロジェクトは「今」のためのもの

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よく陥りがちな状況として、プロジェクトリストをウィッシュリストにしてしまう、ということがあります。そうすると、本当に今すべきことと、将来の目標や希望などが、リストの中に混在してしまい、どこから手をつけていいかわからなくなることがあります。カオスになっているリストを整理し直すというのは、長めの週末のタスクとして悪くはありませんが、逆に言えば、ある程度まとまった時間がないと、取りかかれない作業なので、なかなか実行できないかもしれませんね。

そこで、「今」のためのプロジェクトリストを作る、ことを提案します。つまり、リストには、今しなければいけない大切なものを書くということです。たとえば、大学院進学を考えていて、リサーチを始めているのであれば「大学院」が「今」のタスクとして、プロジェクトリストに入ります。この際、学位を取ることや、卒業後の進路については脇に置いておきましょう。

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そんなの当たり前だ、と思う人もいるかもしれません。取りかかってもいないことを、プロジェクトリストに入れる人なんているわけない、と思う人もいるかもしれません。でもこれは、私たちがよくやってしまう間違いなのです。私たちに必要なことや欲望は、時間とともに変わるものです。一週間前、一ヶ月前、三ヶ月前には大事だと思っていたプロジェクトも、今はそれほどのものではなかったりしますよね。

まずは、アナタのプロジェクトリストをひっぱり出してください。これから大改造をするので、以下の質問に答えながら、整理していきましょう。

1. 「それは大事ですか?」

もちろん、その項目をリストに入れたときには、大事なものだったのですよね。でも、今でもそれは大事ですか? これは、自分にとって大事であるべきだからという理由で、リストに入れ続けるのはやめたほうがいいです。本当に自分にとって大事なもの、ゴールに結びつくものを残しましょう。もし、大事かどうかわからないものがあったら、決断できないようなものなのですから、思い切って切り捨ててください。

2. 「今はいい時機ですか?」

そのときにはいいタイミングでも、もしかしたら、今は時機を逃してしまったかもしれません。来年またチャンスがあるかも、という項目は、「今」のためのプロジェクトリストに入りません。「いつか/たぶん」というリストに移しましょう(このリストが「おまけ」です。後半に詳しく触れます)。

061210_103441.jpgPhoto by cema

3. 「そのプロジェクトには少なくとも、最初にとるべきアクションが含まれていますか?」

はい、今でも大事で、時機的にもちょうどいいプロジェクトが手元に残りましたね。では、そのプロジェクトに関して、アナタの頭の中には最初のアクションがありますか? もしないのだとしたら、そのプロジェクトは残念ながら、取りかかることなく奥に押しやられてしまう可能性大です。

上の三つの質問には本気で答えましょう

アナタが、この記事をここまで読んでくれたということは、アナタのプロジェクトリストは飽和状態で、どうしようもなくなっているから、ですよね。ということは、リストの切り捨てには、お情け無用です。アナタがプロジェクトリストを作ったのは、効率よくプロジェクトをこなして、自由な自分の時間を作りたかったからですよね。プロジェクトリストに埋もれて、自分の非力さを感じたいなんて人は、おそらくいないはずです。だから、今あなたにとって本当に大事なものだけを、リストに残しましょう。

ここまでの4つのルールに基づいて整理された、アナタのプロジェクトリスト、ずいぶんスリムになっていませんか? ここからは、おまけの話です。

「いつか/たぶん」リストといいアイディアは、明日のために

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ずいぶんすっきりしてしまったプロジェクトリストを目の前にして、不安になってしまう人もいるかも知れません。夢や希望はどこにいったの? と、思うかもしれません。パリでのお菓子修行や、ベースギターを習う、という項目は、プロジェクトリストから姿を消してしまいました。でも、それでいいんです。

もちろん、現実からかけ離れた夢や目標を持つのは、すばらしいことです。仕事に関する理想、庭の改造についてのアイディア、外国語の習得、サンバを踊る、など、アナタが幸せな気持ちになるアイディアは、どうぞ持ち続けてください。ただそれらは、プロジェクトリストではなく、「いつか/たぶん」に入れておくべきだ、ということです。

じゃあこんどは、「いつか/たぶん」リストが、アイディアであふれ返ってしまうじゃないか、という人がいるかもしれませんね。それはかまわないのです。なぜなら、「いつか/たぶん」リストは、プロジェクトリストのように、何度も見返すものではないので、必ずしも整理整頓されていなくてもいいからです。でも、この中には、アナタをハッピーにするものが詰まっているのですから、時々は見てみましょうね。

「いつか/たぶん」は先延ばしリストではありません

勘違いしてはいけないのは、「いつか/たぶん」リストは、今やりたくないことを入れる場所ではないということです。今すぐ「いつか/たぶん」リストを見直して、ズルして紛れ込ませていた、先延ばしプロジェクトは抜いてくださいね。

「いつか/たぶん」はクリスマスのためのウィッシュリストではありません

もう一つ認識しておきたいことは、「いつか/たぶん」リストは、将来のためのアイディアや、アクションが詰まっているところだということです。お気に入りドラマの、ブルーレイボックスセットを書いておくところではありません。そういうものや、読みたい本、買いたいアルバムなどは、別のリストとして保存しておきましょう。

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「いつか/たぶん」リストを時々チェックする

少なくとも週に1回は、「いつか/たぶん」リストの中から一つ二つ取り出して、チェックしましょう。妄想に浸るもよし、いつそのプロジェクトに取りかかれるかを、具体的に考えるもよしです。

少なくとも一つはプロジェクトリストに移動させる

せっかく「いつか/たぶん」リストを見直したのですから、一つぐらいは夢を現実化すべく、プロジェクトリストに移動させましょう。この作業を時々するように習慣づけないと、仕事のタスクにばかり追われて、燃え尽きてしまうかもしれませんよ。

「いつか/たぶん」リストが意味する深層心理は何か

こんなセミナーがあります。参加者は二人一組になり、一人は自分が何をしたいか、何が欲しいかを相手に言います。そして、もう一人は「じゃあそれが手に入ったら、次はどうする?」と尋ねます。これを何回も繰り返すのです。そうするとつまるところは、その人が求めている本来の欲望、要望、ニーズが見えてくるというわけです。たとえば、「結婚したい」の先には「誰かに愛されたい」があり、「ホームシアターシステムをセットアップしたい」の先には「そして回りから尊敬されたい」が、あったりするわけです。

061210_55279660.jpgPhoto by dnabil

さらに、ホームシアターの例をもっと掘り下げてみましょう。これは、とってもお金のかかるタスクですよね。それなのにこれを達成させたいと思うのは、なぜでしょうか? もしかしたらその人は、家族や友人をもっと楽しませたい、と願っているのかもしれません。ホームシアターが本当に欲しいのか、それとも楽しませたい思いが強いのか、どちらなのか考えるチャンスにもなるかもしれません。

自分でもそれまで気付いていなかった、自分自身のニーズを発見するのは、なかなか面白いですよ。そして、そのニーズを「いつか/たぶん」リストから、プロジェクトリストに移動させる日があれば、そのニーズが得られる日が近いというわけです。なんだかワクワクしてきませんか?

Jason Fitzpatrick(原文/訳:山内純子)