早寝早起き、整理整頓、腹八分目などなど。現状の課題を認識し、これを克服するための目標をアレコレ立ててみるものの、長続きせずに元の木阿弥...なんてことは、よくありますね。では、なぜ自分を変えることは、こんなに難しいのでしょう? こちらでは、このテーマについて、心理学の観点から採り上げてみたいと思います。
米誌「Fast Company」でDan Heath氏は、ある心理学の実験を紹介しながら、自分をチェンジさせることの難しさについて、説明しています。
この実験では、まず、焼きたてのチョコチップクッキーの香りが漂う研究室で、テーブルに2つのボウルを用意。ひとつには焼きたてのクッキーを、もうひとつにはラディッシュを入れておきました。被験者の学生を2つのグループに分け、片方には「クッキーは食べてもOK。ラディッシュはNG」とし、残りのグループには「クッキーはNG。ラディッシュはOK」と伝えて、様子を観察したそうです。「クッキーはNG」と指示された学生たちは、もちろん誘惑を抑えて、クッキーには手を伸ばさなかったそう。
さて、この実験に引き続き、もうひとつの実験を実施。絶対解くことのできない、図形パズルを彼らに解かせました。すると、クッキーを食べることが許されていた学生たちは、平均19分もパズルと格闘した一方、クッキーが食べられなかったグループは、8分であきらめてしまったそう。
これはどういうことでしょう?
心理学者の分析によると、自制心は「尽きうる」ものなのだとか。つまり、クッキーを食べられなかった学生は、クッキーを食べたい衝動を抑えることに、自制心を使ったため、その分、難解な図形パズルを辛抱強く解くための自制心が、より早く尽きてしまったのだと考えられています。
この理屈は、私たちの日常生活にも当てはまります。ある行動から新しいものに変えようとすると、自制心が必要となるわけですが、それが、ある時点で尽きてしまい、慣れ親しんだ元の行動に戻ってしまう、ということのようです。
この分析をかんがみると、自分をなかなか変えられないのは、意思の弱さや怠惰が原因ではなく、むしろ、有限な「自制心」を効率的に使えていないからかも。自制心そのものをコントロールすることも、チェンジ成功の秘訣のひとつといえるでしょう。
このテーマについてのHeath氏のレクチャーは、冒頭動画でご覧いただけます。ご関心のある方は合わせて、ぜひどうぞ!
Why Change Is So Hard: Self-Control Is Exhaustible [Fast Company]
Kevin Purdy(原文/訳:松岡由希子)