二日酔い...この恐るべき代物は、せっかく楽しかった前夜の思い出すら帳消しにしてしまうほどの威力があります。二日酔いになると、周りの人が「こうした方がいい」、「これはやらない方がいい」など、それぞれの経験を元に、それらしい治療法を教えてくれることも多いと思います。今回は、二日酔いに関する様々な迷信を解き明かしながら、本当に効く治療法をお教えしましょう

その前に、二日酔いにならないために一番の方法は、当たり前ですが「お酒を飲まないこと」です。飲まなければ二日酔いにもなりませんし、メタボや病気になる可能性も低いです。また、基本的に二日酔いに一番聞くのは「時間」と「水分」です。

そんなことは分かっていても、ついつい飲んで二日酔いになってしまうのも分かります。二日酔いでどうしようもない朝に、きちんと効く方法が知りたい人へ今回の記事はお送りします。お酒なんて一滴も飲まないという人も、周りの酒飲みさんのためによかったらどうぞ。

 ■二日酔いに関する迷信と治療法

どんな国や文化にも、二日酔いの治療法に関する怪しげな迷信は多々あります。アイルランドでは「友だちを湿った砂の中に首まで埋めるといい」と言われていたり、ハイチでは「二日酔いの原因となったお酒の瓶のコルクを回し、13本のピンでブードゥー人形に貼り付けるといい」らしいです。他にも、石炭から出る煙を吸い込むといいとか、ライムを腕にすりこむといいとか.......まったく迷信って怖いですね。何の根拠もないのは明らかなのに、みんなが信じるのですから摩訶不思議です。

  • 迎え酒をする

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    Photo by kthread.

    酒飲みの大好きな二日酔いの対処法が「迎え酒」です。残念ながら(当然ながら?)迎え酒は、二日酔いにはまったく効果がありません。二日酔いの時にお酒を飲んで、気分や頭痛が良くなるような気がするのは、アルコールによって一時的にマヒしているだけです。例えて言うなら、足の親指をどこかの角にぶつけてめちゃくちゃ痛い時に、「薬代わりだ」とテキーラのショットをあおるようなものです。それくらい、本当に一瞬の効果しかありません。

    本当にお酒を抜くには、ある程度時間が掛かります。二日酔いは、一晩掛けて体内に取り込んだ毒素(美味しいかマズいかは関係なく、お酒は体に毒ですよ)を、体が排出しようとしている途中なのです。ただ、時間が少し余計に掛かっているというだけなのです。

  • ジュースやコーヒーを飲む

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    Photo by chaps1.

    お酒を飲んだ後で、野菜ジュースやコーヒーを、大量に飲むと良いと言われることがあります。これは、ジュースやコーヒーは代謝が良くなる(利尿作用がある)という前提があるので、アルコールの排出にも、効果的だということなのでしょう。ですが、大量にジュースを飲むと、大量に糖分を摂取することにもなります。1970年頃に、大量にジュースを飲むのはアルコールの排出を遅らせるという研究結果(英文)がありました。利尿作用はアルコールの排出に効果的ですが、どうやらジュースを大量に飲んでも、二日酔いの解消には効果がないようです。

    お酒の後のコーヒーというのが、習慣になっている人もいますよね。コーヒーも利尿作用があるので、大量に飲めば、アルコールの排出には十分効果的です。ただ、大量にカフェインを摂取すると動悸がするので、二日酔いの症状をひどくする恐れもあります。しかも、二日酔いの時にコーヒーを飲むと、間違った判断をしやすいというレポート(英文)もあります。

    確かに野菜ジュースやエスプレッソを飲むと、酔いが覚めたり、気分がスッキリする気がしますが、ほどほどにしておきましょう。これさえ飲めば、アルコールを全部出してくれるんだというような、過剰な期待は持たないように。多少の効果はありますが、糖分や塩分、もしくはカフェインを、代わりに摂取しているのだということを忘れずに

  • 鎮痛剤を飲む

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    Photo by DraconianRain.

    二日酔いの頭痛だけは避けたいという気持ちは分かりますが、お酒を飲んだ直後に鎮痛剤を飲むのはやめてください。アスピリンやアセトアミノフェンなどの鎮痛剤は、それを飲んだ後で十分に睡眠を取れば、きちんと効果が得られます。ですが、これらの薬は胃や肝臓に負担が掛かります。特に、アセトアミノフェンは肝臓にかなり良くないので、お酒を飲んでいる最中に飲むのはやめましょう。せめて次の日の朝、二日酔いの頭痛が本当に耐えられないという場合にだけ飲むくらいに、とどめておきましょう。何度も言いますが、とにかく二日酔いの一番の薬は「アルコールを体の外に出すこと」です。

■お酒を飲む時に気をつけたいこと

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Photo by glennharper.

コルクにピンをどれだけ刺そうが、野菜ジュースをどれだけ飲もうが、残念ながら二日酔いを劇的に解消できないということは、分かりました。二日酔いにならないためには、お酒を飲まないことが一番だというのも分かっていますが、それでも飲まなきゃいけない、いや飲みたい時もあると思います。そういう時のために、次はお酒を飲む時に気をつけたいことをお教えしましょう。

  • しっかり水を飲む

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    Photo by darkpatator.

    水というのは、人体にとって素晴らしい万能薬です。お酒を飲む時に、同時に水もしっかりと飲んでいれば、ひどい二日酔いになることもないですし、二日酔いになったとしても、すぐに回復します。くれぐれも、お酒を飲んだ「後」・・・に水を飲むのではなく、お酒を飲んでいる間に一緒に水も飲むように心掛けてください。

    二日酔いにならない方法として、著者が個人的に実行しているのは「1杯のお酒に対して、1杯の水を必ず飲むこと」だそうです。ビールだろうが、ワインだろうが、テキーラだろうが、どれも1杯に対して水も1杯、このバランスが良いそうです。こうやって、お酒を飲む間に水を飲み、寝る前にもまた水を飲み、朝起きてからもさらに水を飲む、という風にしょっちゅう水を飲んでいると、アルコールがすぐに抜けるそうですよ。20杯のショットを飲むなら、コップ20杯の水を飲まなければいけないのですから、そもそも大量にアルコールを摂取できないのかもしれないですね。

  • ちゃんと食事をとる

  • 飲み物は、胃にダイレクトに吸収されて行くので(これは、コーラを飲むと太りやすい理由でもあります)、お酒を飲む前に、ちゃんと食事をとるようにしましょう。その理由として、食べ物がアルコールをある程度吸収してくれるというのは迷信で、正確には食べ物を消化する間は、アルコールが吸収されにくくなるのだそうです。食べ物がクッション代わりになってくれると言ったりしますが、実は文字通りだったという訳です。

    お酒を飲む時に、つまみをほとんど食べない人がいますが、これはお酒が体内に一番早く取り込まれてしまう飲み方です。脂質やたんぱく質を含んだ食物は、消化に時間が掛かるため、アルコールの吸収速度を抑えてくれます。せめてチーズや揚げ物などのつまみを、少しでも食べながら飲むようにしてください。

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    Photo by nathanborror.

    実は、飲んだ次の日は朝食も大事になってきます。飲んだ次の日は、朝食なんて食べたくないという人もいると思いますが、胃の中は最後に自分が口にしたものが、ゾンビのようにうろついているのです。いくら「色の薄いアルコールの方が二日酔いになりづらい」と言っても、胃の中がテキーラだけという状態は、ひど過ぎます。朝食には、炭水化物とたんぱく質を組み合わせたものがいいそうです。写真のような、パンとオムレツのセットなんて最高ですね。「朝食に、安くて美味しいブリトーを手作りしよう!」など過去記事も参考に、二日酔いのときも朝食を食べましょう。

■本当に効く治療法の見分け方

さて、ここまで二日酔いの治療法に関する迷信を暴いたり、そもそも二日酔いにならないための方法をお教えしてきました。でも、これからも怪しげな治療法を誰かに吹き込まれないという保証はありません。そういう場合は、以下のチェックリストを使って、二日酔いに本当に効く方法かどうかを見分けましょう。

  • 二日酔いじゃなかったとしてもそれをするか?

  • 二日酔いの治療法だと言っている割には、飲み過ぎた人への罰のように思えるものもあります。本当に二日酔いに効く方法なのかを見分けるために、その治療法を健康な状態でも取り入れられるかどうかを考えてみましょう。「水をたくさん飲む」→健康にいいです。「ビタミンBを多めに摂る」→全然悪くないです。「石炭の煙を吸う」→あり得ない。こんな感じです。

  • 治療法のメカニズムが明らかで科学的であるか?

    科学者レベルの知識が必要だと言っているのではありません。ただ、その治療法が細胞に働きかけていることが、論理的に分かればいいのです。迷信のような治療法の場合は、大抵「...不思議なことによくなるのです!」なんて言葉で締めくくられていたりするので、そういう怪しい部分がないかをチェックしましょう。もし科学的な根拠が少しでも疑わしいと思ったら、Googleで検索してみましょう。

    • 逆にもっと具合が悪くなりそうではないか?

      そんなこと、ちょっと考えれば分かりそうなものじゃないか、と思うかもしれませんが、意外と二日酔いの治療法には、具合が悪くなりそうなものがあるのです。映画『ロッキー』のように生卵を何個も一気飲みするとか、サウナに入ったり、ラップを巻いてランニングしたりして、大量に汗をかくとか、ビタミン剤を大量にまとめて飲むとか、どれももっと気持ち悪くなりそうです。当然二日酔いにも効きません。冷静になって考えてみてください。

    これで二日酔いに関する怪しげな迷信や、効果のない治療法にはもう惑わされませんね。二日酔いになりにくいお酒の飲み方も分かったことですし、今晩からは楽しく飲めそうです。でも、二日酔いにならないためには、お酒はほどほどが一番ですよ!

    [Hangover Cures: Myth, Legend, and Fact]

    Jason Fitzpatrick(原文/訳:的野裕子)