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1960年代のヒッピー文化を代表する米ロックバンド「グレイトフル・デッド(Grateful Dead)」。ヒットチャートを賑わすメジャーバンドではなかったものの、熱狂的なファンから絶大な支持を得ていました。もちろん彼らのカリスマ性が多くのファンを惹きつけていた面もありますが、ファンを徹底的に大切に扱う「顧客重視」の姿勢が寄与していた部分も大きかったとか。こちらでは、「グレイトフル・デッド」の例を採りあげ、顧客志向のビジネスのあり方について考えてみたいと思います。

 米誌「Atlantic」の記事では、「グレイトフル・デッド」の活動を、ビジネスの観点で考察しています。「顧客重視の経営」とか「カスタマーロイヤリティ」といった顧客を中心とした製品・サービスづくりは最近の主流ですが、「グレイトフル・デッド」は何十年も前からこれを実践している稀有な例だとか。一般発表前にツアースケジュールを知らせる専用ダイヤルを設けたり、よい席を優先的に確保したり、チケット価格を割引したりと、一部のファンにスペシャルサービスを惜しみなく提供することで、ファンのロイヤリティを獲得していったそうです。

また、バンドメンバーやスタッフなどで構成される取締役会を早い時期から設置したり、グッズ販売などのマーチャンダイズ事業も展開。「グレイトフル・デッド」をモチーフにしたTシャツは、今なお米国で人気です。もちろん、著作権侵害に対しては法的措置を徹底的に講じるなど、権利保護にも積極的でしたが、一方で、ファンには彼らのステージの録音を認めていました。これにより「グレイトフル・デッド」の音楽を知らない人々にも、プロモーションコストを費やすことなく、彼らの音楽を届けることができたというわけです。ファンから"口コミ"で新たなファンを掘り起こすという、ソーシャルネットワークマーケティングの原型とも言われています。

顧客価値をコアに据え、経営組織の体制をきちんと整えた上で、戦略的に事業を展開していた「グレイトフル・デッド」の音楽活動は、ビジネス面からも学ぶ点が多いですね。彼らの活動をカルチャーの観点でまとめた書籍としては『The Grateful Dead and Philosophy: Getting High Minded About Love and Haight』がありますので、ビジネスとは別の観点から見てみるのも興味深いかもしれません。

「グレイトフル・デッド」についてもっと知りたい!」という方は公式オンラインコミュニティもぜひ一度覗いてみてください。

Management Secrets of the Grateful Dead [The Atlantic via Clusterflock]

Lisa Hoover(原文/訳:松岡由希子)