そこかしこの郵便受けに、支払調書が飛び交う季節になって参りました。
今年は2月16日から確定申告の受付が始まります(還付の場合は2月15日以前でもOK)。利用件数は一応年々増えているようですが、「今年こそは」と試みたものの、敢えなく挫折した人が多いことで知られるe-Tax。
私自身も初めてのe-Taxは、てんやわんわで試行錯誤の連続でした。あまりにも面倒すぎるので「これは間違いなく1年後には覚えていない」と思い、作業メモを自分のブログにアップしておいたところ、翌年からはこれを見ながら作業したら、あまりに楽すぎたので、過去の作業メモをバージョンアップして、2010年版e-Taxの手引きとしてご紹介します。主にフリーランスの方向けですが、給与所得者の方にも、操作解説としてご参照ください。
■事前の準備 ■必要(あると便利な)ソフトの準備 ■帳票データの作成&送信■事前の準備
e-Taxソフトをダウンロードする前に、まずは諸手続およびハードウェアの準備が必要です。「e-Taxに対応するPCを用意する」のは省くとして、以下の3点を準備として行います。
- 「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」の提出
- 住民基本台帳カードの発行&電子証明書の発行
- ICカードリーダの購入
準備1:「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」の提出→この提出はオンラインでも可能です。オンラインなら即日で利用者番号が発行されるので便利です。オンラインでの提出方法は、下記の手順になります。
- 申請はこちらのページから。「ルート証明書インストーラ」のバナーをクリック。
- ダウンロードして、ルート証明書をインストール。
- Windows 7、Vista及びInternet Explorer 7以降であれば、「信頼済みサイト登録ツール」のバナーをクリック。
- ダウンロードしてダブルクリック。ウィザードに従って「登録する」→「完了」をクリック。次は「届出書の選択」へ
- こちらのページから「個人の方」をクリック。
- 遷移した画面で「次へ」をクリック。入力フォームが表示されるので、各項目を入力。
暗証番号(半角英数8桁以上)と納税用暗証番号(半角数字6桁)を登録する欄もあるので、2種類の暗証番号をあらかじめ作っておきましょう。- 送信すると「即時通知(開始届出書)」画面が表示されるので、印刷or保存。
- 「即時通知(開始届出書)」画面で、「次へ」ボタンをクリックして、「利用者識別番号照会」画面に進む。
- 利用者識別番号と暗証番号が表示されるので、印刷or保存。
これで利用開始の申請は完了です。
準備2:住民基本台帳カードの発行&電子証明書の発行役所にて「住民基本台帳カード」と「電子証明書」の発行申請を行います。すでに住基カードを持っているなら、電子証明書のみの発行でOK。両方持っていないなら、電子証明書の発行に住基カードが必要となるので、同時に発行手続きしてしまいましょう。
住基カードには写真付き・写真無しの2種類ありますが、e-Taxに使うだけなら写真は不要です。写真を持って行く手間が省けます。手数料は住基カードの発行に500円程度(一部の自治体では無料のところも)、電子証明書の発行に500円。合計約1000円が必要です。
住基カードの発行時にカード用暗証番号と、電子証明書用の暗証番号を設定します。所要時間は約30~40分くらいでした。
会社勤めの方に、もっともハードルが高いのが、この住基カードと電子証明書の発行。必要書類等を自分の自治体のWEBサイトから確認して、無駄足にならないようにしましょう。自治体によっては、書類申請を郵送で受け付けているところもあります。ただし、受取は本人確認書類を持った上で、本人が受け付け窓口に出向く必要があります。
3:ICカードリーダの購入■必要(あると便利な)ソフトの準備ICカードリーダーライターが必要になります。いまの時期なら、大きな量販店では特設コーナーもありますので、すぐに分かると思います。「公的個人認証サービス対応」と書いてあるものを選びます。私が住基カードを発行したときは、役所で、住基カードと一緒に、公的個人認証サービス対応機種の一覧表をくれました。それで確認するのもいいでしょう。ちなみにAmazonでは最安で1632円、ちょっとかっこよさげな省スペースタイプが1890円です。購入したら、最新版のドライバをインストールします。
以前申告した際には気づかなかったのですが、ここまでの作業をまとめた「電子申告事前準備ツール」が、NTTデータのサイトから無料でダウンロードできます(『確定申告の達人』を購入しなくても使えます)。こちらを使うのもいいでしょう。
お次は確定申告に必要な書類を作るソフトの準備です。「あると便利」としてあるのは、「確定申告書等作成コーナー」のサイトで、すべての書類を作ることが可能なためです。ただ、下記のソフトを使った方が、簡単に作業できるかと思います。「確定申告書等作成コーナー」での作成はこちらのサイトからWindowsなら「平成21年分事前準備セットアップ」のインストールを、Macならルート証明書のインストールを行う必要があります。
準備すべきソフトは下記の3つ。
- e-Taxに対応した会計ソフト
- e-Taxソフト
- 公的個人認証サービスソフト
1:e-Taxに対応した会計ソフト私が利用したのは『やよいの青色申告』。最近のWindows用個人用青色申告ソフトであれば、ほとんどe-Taxに対応しています。2010年用の主な青色申告ソフトとしては、
・『やよいの青色申告 10』
・『みんなの青色申告2010』
・『やるぞ!青色申告2010』
などがあります。体験版を提供している会社もありますので、使い勝手の良さは体験版でお試しあれ。
やよいユーザーの使い方の流れとしては、
- 「やよいの青色申告」で所得税確定申告書B(1・2表)・青色申告決算書・収支内訳書を作成して、e-Taxデータに書き出し。
- e-Taxソフトに、やよいで書き出したデータを取り込み&所得の内訳書(紙での申告時に、支払調書を記載するやつ)や、社会保険料の支払明細書(紙での申告時に、保険会社からの控除証明書を貼り付けるやつの代わり)、医療費の明細書(紙での申告時に、医療費の明細を入れる紙袋の代わり)など、申告必要な書類を「e-Taxソフト」で作成。株取引があったときの、分離課税用申告書や「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」、特定口座年間取引報告書も、e-Taxソフトで作成できる。
- 「e-Taxソフト」で電子署名&送信
という感じになります。
2:e-Taxソフトe-Taxソフトとは、国税庁が開発した無料の電子申告用ソフト。確定申告に必要な各種書類や、添付書類を作ることができ、また、電子署名を付けて送信することができます。
各種書類の作成については、前述の会計ソフトや、「確定申告書等作成コーナー」と機能が一部重複します。e-Taxソフトは、国税庁公式ソフトなので、すべての帳票を作成可能ですので、会計ソフトで作れない帳票をe-Taxソフトで作る、というわけです。
ちなみに、e-Taxシステムを開発したNTTデータから『確定申告の達人』というソフトも出ています。今年の個人用青色申告には、この『確定申告の達人 2010』がバンドルされているものもあります。こちらには、個人用の確定申告によく使われる書類の作成と送信(申告)を行えるソフトです。自分の確定申告に必要な書類が、すべて『確定申告の達人』で作成できるなら、e-Taxソフトの代わりにこちらを使ってもOKです。『確定申告の達人』で作れない書類があるなら、全部e-Taxソフトで作成&送信した方が、面倒くさくないと思います。
e-Taxソフトのダウンロードはこちらから。インストールウィザードの最後の画面で、「e-Taxソフトを起動します」にチェック入れたまま「完了」を押すと、すぐさま初期設定画面に移ってしまうので、ここではチェックを外しておきましょう。
3:公的個人認証サービスソフト■帳票データの作成&送信ダウンロードはこちらから。住基カード発行時に、役所で渡されるCD-ROMと一緒のソフトです。
インストール後、
→すべてのプログラム→公的個人認証サービス→ユーティリティ→ICカードリーダライタ設定で、「PC/SC対応」を選択し、接続しているリーダの名称を選択
という作業が必要です。でないと、ICカードを認識してくれません。
まず整理しておきたいのが、提出する書類です。これは、「紙での申告と同じ」と考えればOKです。税務署で配布しているパンフレット「所得税の確定申告の手引き」や、昨年度に提出した書類の控えなどを参照して、書き出しておくとスムーズに行きます。
一例として、私がe-Taxで申告(65万円所得控除の青色申告)したときは
- 確定申告書Bの第1表
- 確定申告書Bの第2表
- 所得税青色申告決算書
- 貸借対照表
→上記の4つは「やよいの青色申告」で作成可能でした。1と2は『確定申告の達人2010』でも作成可能。
- 所得の内訳書
- 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
- 特定口座年間取引報告書
→上記3つは「e-Taxソフト」で作成可能。紙で出す代わりに「e-Taxソフト」で作る、というわけ。5と6は『確定申告の達人2010』でも作れます。
- 平成21年分 医療費に係る領収書等の記載事項
- 平成21年分 社会保険料等に係る控除証明書等の記載事項
→この2つは、紙での申告の場合、控除証明書や領収証を添付する(確定申告書Bの第2表の裏に貼る)のだが、e-Taxの場合、その代わりに上記の2書類をeTaxソフトで作って申告します。つまり控除証明書や領収証を見ながら、e-Taxソフトにちまちま入力するのです。この2つも『確定申告の達人2010』で作成可能です。
- 平成21年分申告書等送信票(兼送付書)
→これはe-Taxのみで必要になる添付書類。 送付した書類の一覧表です。『確定申告の達人2010』でも作成可能です。
と、10種類の書類をデータ化して送付しました。
株取引がなければ、
●株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書
●特定口座年間取引報告書
は要らないので、フリーランスだと8種類の書類を送るという人が多いかと思います。住宅ローン控除を受けたり、寄付金控除を受けたりするときには、追加で書類が必要になりますので、税務署などで確認しておきましょう。
申告すべき書類が整理できたら、作成&送信の準備へ。ここまで来ればもう一息です。
■書類の作成
- 確定申告書Bの第1表
- 確定申告書Bの第2表
- 所得税青色申告決算書
- 貸借対照表
「やよいの青色申告」で入力
↓
e-Taxデータの書き出し
(「決算・申告」メニュー→「e-taxデータの書き出し」:画面の指示に従って入力→データ書き出し)
↓
任意の場所に保存
※やよいの青色申告がない場合やe-Tax未対応ソフトの場合、確定申告書作成コーナーで作成→データ書き出し(保存)
↓
保存したデータを、e-Taxソフトで作成する書類ができた後で、e-Taxソフトに取り込みます。説明は下記にて。
- 所得の内訳書
- 平成21年分 医療費に係る領収書等の記載事項
- 平成21年分 社会保険料等に係る控除証明書等の記載事項
- 平成21年分申告書等送信票(兼送付書)
↓こちらの画像をクリックすると、「e-Taxソフト」での、書類作成と送信手順が表示されます。
これでe-Taxでの申告は完了になります。
最後に忘れないでいただきたいのが、還付があるケースでは「e-Taxの場合、約3週間で還付金が振り込まれる」という点。申告完了から3週間経っても、還付金が来ないときには、先方での受信チェック漏れというケースもありますので、申告した税務署へ連絡しましょう。
また、電子申告の場合、医療費の領収証や支払い通知を手元に残しておけますが、ランダムに電子申告後に書類提出を求められることもあります(この通知が来た際に、税務署の方に伺ったところ約3割の人に送っている、とのことでした)。
長くなりましたが、一度e-Taxにしてしまうと、翌年からはかなり楽になります。昨年までだった電子申告による5000円の税額控除も延長されていますので、ぜひこの機会にe-Taxをどうぞ。
(常山剛)