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メタバースの可能性と課題を見た「Metaverse Japan Summit 2022」レポート

著者 酒井麻里子

2022.07.28 lastupdate
Photo: Metaverse Japan
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一般社団法人Metaverse Japanが主催する、メタバースに関するグローバルなカンファレンス「Metaverse Japan Summit 2022」が7月14日に開催されました。会場の渋谷ストリームホールでは、業界を牽引する有識者による多数のセッションが行なわれ、メタバースやWeb3の可能性について熱い議論が交わされました。

そのなかから、今後の潮流としてビジネスパーソンが特に知っておきたいビジネスとグローバル戦略に関する3つのセッションの内容についてご紹介します。

日本が世界に後れを取る構造的な問題とは

Web3メタバースが拓く新しい日本のデジタル経済」では、衆議院議員の平将明さんがオンラインで登壇。Metaverse Japan理事の長田新子さん、馬渕邦美さんの質問に答える形で、国家戦略としてのWeb3や日本が抱える課題などについて話しました。

Photo:Metaverse Japan

3月に公開された「NFTホワイトペーパー」でも、自民党デジタル社会推進本部のNFT政策検討プロジェクトチーム座長としてプロジェクトを牽引した平さん。「もともと日本のコンテンツやサービスの価値がグローバルから見て低すぎるという問題意識を持っていて、NFT(非代替性トークン)はその問題を解決できるものだと感じた」といいます。

「NFT、メタバース、DAO、DeFiといった新しい概念が登場して、ひとつの生態系として完成されつつある状況を見て、これは日本としても急いで取り組まなくてはと感じました」(平さん)

ただし、日本は法改正などに時間がかかることも現実。その理由は「構造的な問題」だと平さんは話します。

「新しい取り組みをどんどん取り入れて先端を走っているアメリカやイギリス、シンガポールなどは、新しい技術やサービスがあればまずスタートして、その後問題があれば判例を積み重ねてルールとしていく“英米法”を採用する国です。

一方で日本は、ルールを先にしっかりと固め、そのルールを変えないとグレーゾーンを解消できない“大陸法”が採用されています。その違いがあるので、どうしても2、3年の遅れは生じてしまうのです。

だからこそ、どんどん前倒しで動いてスピードを上げていなかければ、追いつけないと思っています」(平さん)

Photo:Metaverse Japan

「自分のなりたい姿で空間に入っていけるメタバースは、ダイバーシティやインクルージョンといった今の時代のさまざまな課題を解決できる可能性をもった世界観」だと魅力を語る平さん。

「日本はもともとゲーム産業に強みをもっていて、ノウハウやデザイン、キャラクターの蓄積もあります。ここで本気で世界に入っていくことができれば、その強みを発揮できるのではないかと思っています」(平さん)

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エルメスが提訴した「メタバーキン事件」や「メタバース痴漢」とは

メタバースの普及にあたっては、ルールの整備も重要になります。「メタバースのルールメイク」のセッションでは、弁護士の道下剣志郎さんと河合健さん、経済産業省の上田泰成さんが、実際にメタバース内で起きた2つの事件をもとに、メタバースでのルールづくりについてディスカッションしました。

Photo:Metaverse Japan

ひとつめの事例は、エルメスの高級バッグ、バーキンを模した製品がメタバース内で製造販売され、それに対してエルメス社が商標権侵害を理由に提訴した「メタバーキン事件」。

川合さんはこの事件について、「どのようなアイテムでも起こりうる普遍的な問題」だと話します。

「ブランド側が商標権を侵害されていると受け取る一方で、クリエイター側は、“あくまでも表現活動のひとつで実際の商品とは別物”という意識を持っている。そこにどう折り合いをつけるかが課題です」(川合さん)

さらに、メタバース空間は国を超えて人が集まる場なので、商標権などを根拠にする場合も、「どこの国の商標権を侵害したのか?」を明確にするのが困難になる可能性があるといいます。

「今後は事業者が商標をとる際に、リアルの商品がメタバースの中のアイテムに置き換わることを前提に保護対象範囲を拡充していくことが必要になってくるのかなと思います」(上田さん)

Photo:Metaverse Japan

もうひとつの事例は、メタバース空間の「horizon Worlds」内で、複数のユーザーが女性につきまとったり、アバターの体を触ったりした「メタバース痴漢事件」を取り上げました。

川合さんは、「現実の法律や条令を直接適用するのは現状では基本的に難しいので、プラットフォーム内の規約やルールを整えていくことが重要」だと話します。

上田さんは、「国際基準のような形でルールメイクしていくことは必要。ただし、何を不快な行為や人権侵害と受け取るかは国や文化によって異なる部分も大きいので、いずれは国や文化ごとのNGワード集のようなものができてくるかもしれません」と指摘します。

また、道下さんは「海外で評価の高いコンテンツを多く持つ日本だからこそ、率先してルールメイクの担い手となっていくべきだと思っています」と日本がルールメイクを担っていくことの重要性を強調しました。

「ライブゲーミング」が2020年代のゲーム体験のキラーコンテンツになる

より世界に目を向けたテーマのセッションも行なわれました。「日本からグローバルを目指すメタバースプロジェクトの今」では、REALITY株式会社の荒木英士さんをモデレーターに、XRプラットフォーム「STYLY」を提供する株式会社Psychic VR Labの浅見和彦さん、ゲーム実況アプリを提供する株式会社ミラティブの赤川隼一さんが登壇。

Photo:Metaverse Japan

「現在、特にメタバースとして何か取り組んでいるわけではないものの、私たちが信じる世界観を実現しつづけて、そこにユーザーがついてくることで、結果的にメタバースになっていくと考えている」と話す赤川さん。ミラティブでは、「ライブゲーミング」と呼ばれる領域に注力しているといいます。

「視聴者が配信者に対して回復アイテムを投げ入れたり、装備品をプレゼントしたりできるようになるもので、2020年代のゲーム体験における一番のキラーコンテンツになると信じています。これを突き詰めた先に、結果的にユーザーからメタバースだと思ってもらえる場をつくることを目指しています」(赤川さん)

Photo:Metaverse Japan

STYLYでは、XR分野の表現者を増やすことを目指し、世界各国のクリエイターに向けた育成やコミュニティ運営などを行うプロジェクト「NEWVIEW」を展開。

「プロジェクトではアワードも開催しているのですが、『日本に行ける副賞はないんですか?』とよく聞かれます。日本に行きたい、日本企業に就職したいと考える方は意外と多いですよ。

日本にはIPも含めて惹きつけるものがあると思うので、そこはフックにしていけるかなと思います」(浅見さん)

そして中川さんも、日本が持つ可能性について前向きな見解を示します。

「REALITYはグローバルで受けていますし、VTuberも世界に進出しています。国が違っても、人間の根源的な欲求みたいな部分はそう変わらないですし、本質的に良いビジネスモデルはグローバルでも通用しやすい時代になっていると思うので、日本企業はもっと自信を持つべきですね」(中川さん)

カンファレンスではこのほかにも、エンターテイメントやテクノロジー、自治体などさまざまな切り口でのセッションが行われ、メタバースの可能性について考える1日となりました。

Source: Metaverse Japan

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