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印南敦史の「毎日書評」

これからのリーダーシップに必要なのは「ゴール」と「エフィカシー」だ

author 印南敦史
これからのリーダーシップに必要なのは「ゴール」と「エフィカシー」だ
Photo: 印南敦史

部下にやる気がなかったり、職場全体が冷めていたりするのは、部下のせいでも会社のせいでもない。リーダー自身がたるんでいるから、チームがたるむのだ。

そう主張するのは、『チームが自然に生まれ変わる 「らしさ」を極めるリーダーシップ』(李 英俊、堀田 創 著、ダイヤモンド社)の著者。人工知能(AI)研究で博士号を取得したのち複数の会社を起業・売却し、「シナモンAI」というスタートアップを立ち上げた人物です。

現在は同社の技術責任者として、マレーシアを拠点に東南アジア諸国のトップクラスのAIエンジニアたちと働く毎日。つまりは自身がリーダーであり、上記の主張も自分自身に向けた戒めなのだそうです。

そんな著者は「どうすれば、メンバーのモチベーションを高められるのだろう」と悩んでいたころ、「リーダーシップ開発のプロフェッショナル」である共著者の李英俊さんと出会います。

つまり本書には、両者のノウハウが凝縮されているわけです。

人のパフォーマンスを高めたいとき、従来のリーダー論は人の「行動」を変えることを推奨します。 これは経営学などのリーダーシップ研究にも見られる傾向です。

「パフォーマンスの高いリーダー人材はこのような行動特性を持っている。だから、こうした行動を模倣すれば、優秀なリーダーになれる」というわけです。

しかし、それではリーダー自身もその部下も変わりません。

(中略) むしろ大切なのは、ものの見方です。 認知科学的に言うなら「内部モデル」です。 その人の認知が変わりさえすれば、行動は自ずと変化します。

(「はじめに あなたの職場はなぜ『たるんでいる』のか?」より)

こうした考え方に基づく本書の第1章「内側から人を動かす」のなかから、きょうは「『内面から人を動かす』とはどういうことか」に焦点を当ててみたいと思います。

部下のやる気は「火あぶり」では高まらない

たとえば給料が上がるというような“外因的な働きかけ”によってチームに行動を促そうとするリーダーシップは、あまり効果的だとはいえない。

著者はそう指摘します。「打っても響かない人材」が増えているのだとすれば、それは人を動かす価値観の中心が「外的なもの」から「内的なもの」へシフトしているからなのだと。

そもそも、「やる気」がないと行動を起こせないのは、当人の心のどこかに「やりたくない……」「自分にはやれない……」と言う気持ちがあるからではないだろうか。(48ページより)

いいかえれば、そんな後ろ向きの気持ちを“モチベーションというごまかし”によって奮起させ、「やりたくないけど、やるべきこと」「やれなそうだけど、やらないといけないこと」を自分やメンバーに押しつけてきたのが従来のリーダー論だということ。(46ページより)

「絶対にこれを実現したい!」―――「内側」から人を動かす原理(1)

つまり「外因的な働きかけ=モチベーション」を中心としたリーダーシップは、もともと無理を抱えているわけです。時代や環境などの条件のおかげで、そういった無茶なリーダーシップが“機能できてしまっていた”だけにすぎないということ。

しかし、それに気づくことができたいまは、人間にとってより自然な「内因的な原理に基づくリーダーシップ」を取り入れる絶好のタイミングなのだと著者はいいます。

なお、内側から人を動かす際の原理は、「ゴール」と「エフィカシー」に集約されるそう。

人を動かす内的な刺激として真っ先に思い浮かぶのは、「楽しさ」「好奇心」「情熱」などの感情。それらは、人の行動の原動力となりうるわけです。

たとえば楽器を弾くのが好きな人は、他人から「楽器を弾きなさい」と強制されたり、それに対する報酬を提示されたりしなくても(外的な刺激が与えられなくても)自発的に楽器を弾くという行動をとることでしょう。

とはいえリーダーシップに関していえば、「楽しさ」「好奇心」「情熱」などの感情だけに頼ることは難しいのも事実。なぜなら感情はその場限りのものになりがちで、持続性や一貫性に欠けるからです。

だからこそ、人を持続的に動かすときには、ある種の目的ないし目標、「ゴール」が必要になる。

人がなんらかの目標を持ち、「なんとしてもこれを実現したい!」「絶対にあれを達成するんだ!」という思いが生まれたときには、その人は外的な刺激を必要とすることなく、主体的に行動をとることができる。(50ページより)

したがって、そうした「ゴール」のデザインこそが、内因的な原理に基づいたリーダーシップの第一のポイントになるわけです。(48ページより)

「やれる気しかない!」――「内側」から人を動かす原理(2)

さらに重要なのは、2つめの核心「エフィカシー」だそう。

エフィカシー(Efficacy)とは、「効力」とか「効能」を示す英単語だが、本書ではあえてセルフ・エフィカシー(Self-efficacy)、つまり「自己効力感」の意味合いに限定していることに注意してほしい。

自己効力感とは「一定の行為・ゴールの達成能力に対する自己評価」であり、「自分はそれを達成できるという信念」である。

もう少し砕けた言い方をするなら、「やれる気がする/やれる気しかしない」といった手応えのようなものだと考えてもらっていい。(50〜51ページより)

著者によれば、エフィカシーは決して特殊なものではなく、誰もが日常的に抱いている認知

たとえばオフィスにおける「コピーを取る」「メールを出す」などの単純な作業について、多くの人は一定のエフィカシーを持っているはず。つまり、そうしたタスクを「自分はできる」と信じているわけです。

ゴールに向かって行動する際には、エフィカシーが鍵を握っているもの。ゴールに対するエフィカシーが低ければ(「やれないかもしれない」「やりたくない」と思っているときには)、ゴールは行動の内的原理として十分に機能しないわけです。

しかし逆にそのゴールに対して十分なエフィカシーを感じているとき、つまり「これなら自分にできそうだ」という認知を抱いているときには、人はスムーズに行動を起こすことができるのです。

ポイントは、リーダーからの働きかけは必須ではないこと。なぜなら、ゴール自体が行動を内側からドライブしてくれるからです。(50ページより)

著者の提言するリーダー論は、リーダーシップについて悩む方の助けになるはず。ぜひとも手に取っていただきたい一冊です。

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Source: ダイヤモンド社

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