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他人に期待しない方がいい3つの理由

author Stephen Johnson - Lifehacker US[原文](訳:春野ユリ)
他人に期待しない方がいい3つの理由
Image: Shutterstock

昔から、哲学者や経済学者、陰謀論者たちは、社会の性質や人間の行動の動機について、さまざまな理論を考案してきました。

アダム・スミスからカール・マルクスに至るまで、そうしたモデルのほとんどは、合理的な人間は自分や自分のコミュニティ、あるいは社会のために合理的な結果を得ようと努力するという考えに(少なくとも多少は)依存しています。

しかし、それは間違っています。

同様に、他人とうまく付き合う方法について書かれた文章も山ほどありますが、そのほとんどは、相手が比較的知的で機能的な人物であることを前提としています。しかし、現実はおそらく違います。

この記事を読んでいるあなたもおそらく違うでしょう。

実際には、人間は愚かで、怠惰で、非常識な振る舞いをするものであり、人間のあらゆる試みは、その3つのほぼ普遍的な特性の結果なのです。

ですから、そう思って世の中を見るべきです。

人間は誰もが愚かである

「頭が良い人」と言っても、「バスの中で1番頭の良い人」ではなく「理論物理学者のように本当に頭が良い人」のことを考えると、自分はとんでもなくバカだと結論づけることしかできません。

しかし、New York Timesのコメント欄を読んでいると、自分が世界で1番頭が良い人間かもしれないと思えてきます。というのも、New York Timesには理論物理学者よりはるかに数多くのコメンテーターがいるからです。

最終的には、「頭の良さの分布図」のどこに位置しているかは重要ではありません。なぜなら、どんなに頭の良い人でもほとんどの場合は愚かだからです。

だからと言って、人間は知的になれないと言いたいわけではなく、私たちが「知性」と定義するものは、意思決定、意見、交流の基礎となることはほとんどないということです。

これは、IQテストで高得点を取ることができたり、私たちが「知性」と決めつけている外見上の特徴を持ったりしている人たちに関しても同じです。

心理学者のDaniel Kahneman氏は意思決定の心理学を生涯にわたって研究し、ノーベル経済学賞と自由勲章を獲得しました。

同氏は、2011年に出版した著書『ファスト&スロー』の中で、人間が意思決定を行うための情報処理には2つのモードがあると提唱しています。

1つ目は自動的なモードです。これは人間の最初にする反応であり、頭の中で何の努力もせずに瞬時に関連性が形成されます。また、直感的で印象に基づくものでもあり、過去の数え切れない経験を通して構築されたつながりの結果です。

2つ目のモードはもっとゆっくりした思考です。

これは、代数学の問題を解くときに使う脳の部分で、慎重に論理的なステップを踏んで結論を導き出します。このように思考するには大変な労力が要ります。

Kahneman氏によると、どんなに「頭が良く」ても、日常的な思考のモードはこの2つの思考モードをいったりきたりしているということです。

2つ目のモードは、私たちが世の中を生きていく際に、1つ目のモードの未形成のインプットをちょっと監視しており、ほとんど意見を割り込ませることはありません。例として、車を運転するときに、どれだけ無心に運転できるか考えてみましょう。

ほとんどの場合、これでうまくいきます。私たちは、自分の思い込みや印象、偏見に基づいて自分の判断や意見を決定し、邪魔されることはありません。

何かが基本的な前提条件を覆すようなことがあっても、2つ目のモードになった頭が少し努力して説明すればたいてい取り除かれます。

人間は誰もが怠惰である

常に頭を2つ目のモードにして考えようとすると、その労力を維持することができなくなり、ほとんど無駄になってしまいます。

代数学の問題に注意を払うときと同じように、自分の仮定や判断を実際に検証するのは大変な努力が必要ですし、そんな時間がある人はいないでしょう。

ほとんどの判断は、実際には唯一の「正解」があるわけではありませんし、今は素晴らしい情報がたくさん溢れています。

これは「怠惰」と考えていいでしょう。怠惰は性格の欠点や7つの大罪の1つとして揶揄されることが多いですが、実は進化の点で大きなメリットがあります。

たとえば、軟体動物は何百万年も前から存在していますが、大したことはしていません。

進化心理学の信奉者の多くは、人間は目先のニーズを満たすことしかしないようにエネルギーを節約しており、それは、抽象的な目標のために長期的な計画を立てる努力をするよりも、望ましい生存戦略だったと主張しています。

目先のニーズを満たすために熊を狩りに行き、長期的な計画を要する都市建設のことは心配しないのが得策です。

しかし、2021年の世界では、目先の利益を得ることは最適な成功戦略ではありません。ところが、古代からの衝動を振り払うことは難しいので、日々遭遇する人のほとんどは超短期的に考えて行動していると考えるほうが無難です。

自分がどれだけ「怠惰」であるか示すには、自分の時間の何%がその日を乗り切るために費やされ、ほかの何%が長期的で抽象的な利益のために本気で努力することに費やしているか自問してみましょう。

ほとんどの人間は非常識な振る舞いをする

米国国立精神衛生研究所によると、アメリカ人の5人に1人が精神疾患を抱えており、疾病管理予防センター(CDC)によると、私たちの半数以上が人生のどこかの時点で精神疾患や精神障害と診断されています。

また、診断はされていないにしても、理不尽な行動を取ることが多い人たちは勘定に入っていません。

さらに、多くの人格障害者は、共感能力の低下が意思決定に悪影響を及ぼすにもかかわらず治療を受ける可能性が低く、(ビジネスや政治の分野で)他の人よりも成功する可能性が高いことも説明できません。

研究者たちは彼らを「成功したサイコパス」と呼び、次のように表現しています。

良心や他人への思いやりが完全に欠如しており、自分の欲しいものを自分勝手に取り、好きなように行動し、社会的規範や期待に反しても、罪悪感や後悔の念を少しも抱きません。

こんな感じの人、身のまわりにいませんか?

精神疾患が蔓延しているのは、精神疾患が進化上の利点をもたらしているからなのか、有害な社会の結果なのか、あるいは精神疾患に対する認識が高まっているからなのかは議論の余地があります。

しかし、私たちの多くがある程度精神疾患に苦しんでいる、あるいは少なくとも非常識な振る舞いをしていると考えて差支えないでしょう。

頭の悪さ、怠惰、狂気は外見からはわかりにくい

コストコの列に並んでいると「人間って馬鹿で怠惰だな」と思いがちですが、そのときは、頭が「1つ目のモード」になっていて、バイアスが働いています。

しかし、そのように思わないコツは、誰にでも同じように欠点があることに気づくことです。私たちが正気や知性と結びつけてきた外面的な装飾は、同じ列にいる隣の人が間抜けだと思うのと同じくらい信ぴょう性がありません。

多くの人は、金持ちや権力者は、頭が良くて、勤勉で、的確な判断をするからそうなったのだと考えがちです。

現に金持ちの人たちはそう言いますが、本当の富の「源」はそういったこととは関係がなさそうです。

それどころか、運命、文化、そしてまったくの運が複雑に絡み合って、富を築き上げていくのです。まるで、券を買って賭けに参加できないほど高級な宝くじのようです。

この「金持ちにも、自分と同じように欠陥がある」という言葉は、自分よりも権威やお金を持っている人と接するときに心に留めておくべき大切なことです。

金持ちの権力者であっても、誰も3Dチェスをしていません。かろうじて2Dのチェッカーをしているだけです。

他人と同じように自分にも欠点はある

他人の内面世界の欠点や潜在的な落とし穴を認識することで、自分自身の内面世界の欠点を認識しやすくなり、より「マインドフル」で、献身的で、中心的な存在になることができると思えたらいいのですが、そうはいきません。

もちろん、試してみるのは自由ですが、おそらくうまくいかないでしょう。人間は、他人のバイアスを理解することより自分自身のバイアスを理解することのほうが苦手だからです。

しかし、その事実を知ったところで、指を入れると抜けなくなる「中国の指の罠」から逃れることはできません。

また、「頭が良い」ことも重要ではありません。

研究者たちは長い間、「バイアスの盲点」(自分のバイアスよりも他人のバイアスを見てしまう傾向)を研究してきましたが、最近の研究では「認知の洗練度」が高いほど、「バイアスの盲点」が大きくなることが示唆されています。

つまり、「頭が良い」と他人のバイアスを見るよりも、自分のバイアスを理解することが難しくなるようです

他人を深読みし過ぎない

他人の心の動きを変えることはできません。受け入れるしかありません。しかし、受け入れることで、個人的な交流であれ、世界の政治であれ、世界をより意味のあるものにすることができます

政治や社会の動きは、世界征服を密かに企む権力者の陰謀ではなく、不完全な情報と得体の知れないバイアスを持つ個人の決断から生じるということを理解すれば、陰謀論に引っかかりにくくなるかもしれません…。

そうすれば、数百人の才能ある知的な人たちが職業人生をかけて映画版の『Cats』を制作したという事実が、突然意味を成すようになります。対人関係においても、大きな安心感になります。

ファンタジー・フットボールのライバルも、バッティング・ケージの同僚も、ただ手探りでやっているだけだということがわかれば、彼らのモチベーションにこだわる必要はなくなります。

彼らが何をしているのか、結局のところ、誰にもわかりませんし、とりあえず楽をしたいだけなのかもしれません。

ただし、こういうことは、愛する人に言ってはいけません。すべて意味のあることだというふりをしましょう。それが仲良くやっていく術というものです。

Source: Britannica, Stanford Encyclopedia of Philosophy, Wikipedia, USA TODAY, National Institute of Mental Health(1, 2), Centers for Disease Control and Prevention, Psychology Today, SCIENTIFIC AMERICAN, The Guardian

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