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印南敦史の「毎日書評」

松下幸之助のことばに学ぶ「リーダーに欠かせない」2つの考え方

松下幸之助のことばに学ぶ「リーダーに欠かせない」2つの考え方
Photo: 印南敦史

こんな時代だからこそ学びたい 松下幸之助の神言葉50』(江口克彦 著、アスコム)の冒頭には、次のような記述があります。

経営というものは、「人間」を前提にしている。人間を集め、人間を統率し、人間が求めるものをつくり、あるいは提供するものである。必然、経営の中心には「人間」を位置せしめなければならない。「人間を追う経営」こそ、真の経営であろう。(「まえがき」より)

それこそが、かつて日本の実力を押し上げた「日本的経営」の根幹をなすものだということ。ところが平成以降の経営者たちはアメリカを模倣し、その結果経営の中心は「カネ」になってしまったと指摘しているのです。

アメリカ的経営は、利を追うアメリカの精神風土に合った経営手法であり、そのままで、日本人の働く現場、すなわち会社に持ち込んでもうまくいかない。(「まえがき」より)

ご存知の方も多いと思いますが、こう主張する著者は、故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている人物

23年間にわたって松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者です。つまり本書には、そんな立場だからこそ聞くことができた松下氏のことばがまとめられているわけです。

「午前十時」「正午」「午後三時」「午後五時」と時間で分けられた構成。きょうは「午後五時」のなかから、2つのことばを抜き出してみたいと思います。

聞き役を持つ

経営者は一人の聞き役を持っておらんといかんな。経営上いろいろな問題や悩みがある。そういうことを聞いてくれる人やな。そういう人がおるかどうか。(226ページより)

人間誰しも、楽しく愉快なことばかりではありません。それは経営者でも同じで、おもしろくないとき、つらいときもあるわけです。とはいえ、だからといって周囲の人に当たり散らしたり、愚痴をこぼしたりすれば、それらの人たちに迷惑がかかってしまうことになります。

多少つらいことや厳しいことがあったとしても、指導者である以上は気持ちをネガティブな気持ちをぐっと飲み込んで我慢しなければならないわけです。

とはいえ、それでも我慢できなかったり、感情を抑えられなくなりそうになることはあるでしょう。つまり、そういうときにこそ聞き役の存在が重要な意味を持つのです。

社長にそういう聞き役がおったならば、腹の立つことでも、苦しみでも、なんでも話して気持ちを発散させて切り替えて、それでほかの部下や大将には、いつもニコニコしながら、ああ結構や、結構や、あんた、きばりなはれ、やんなはれと言うことができるわな。(228ページより)

したがって、そういう聞き役を持てるかどうか、見つけられるかどうかが大切。

もちろん運も影響してくるでしょうが、経営者である以上は考えないといけないことでもあるといいます。(226ページより)

直言をしてくれる人を大事にする

それとな、反対のことを話すようやけど、自分に直言というか、言うべきを言ってくれる、そういう人も作っておかんといかんよ。(229ページより)

上に立てば立つほど、とくに身近な人からの声は聞こえにくくなるもの。それどころか、耳当たりのいい話しか入ってこなくなるものでもあります。

しかも多くの場合、周囲の人たちの多くは、経営者や上司に都合の悪いことは口にしません。たとえそれが経営者や上司のためになることであっても、機嫌を損ねるようなことはいわないでおこうと考えてしまうからです。

したがって経営者は、そういうものであるということを認識しておく必要があるのです。

人間、普通は、そういう姿やな。それが人情というものやな。それをけしからんと言うてみたところで、それは言うほうが無理、言われるほうがかわいそうというもんや。

だからこそ、経営者は自分にハッキリとものを言ってくれる人、直言してくれる人を大事にせんといかんのや。こういうことに気をつけないとあきませんよ、こういうことをよく考えんとだめですよ、このごろ少し見方が狭いですよ、というようなことを言ってくれる。

そういう人を大事にする。意識して大事にするということや。(226ページより)

もちろん、そういうことをいわれれば、あまりいい気持ちはしないでしょう。しかし、そんな感情を超えて喜ばなければいけないのだと松下氏はいいます。

相手のことばは直言だからこそ、「なるほど、なるほど」とじっと聞いておくべき。そして、あえてそういうふうに話してくれているのだから、喜ばないと、感謝しなければいけないのだという考え方です。

それをね、腹を立てる。おれはこの会社で一番偉いんだ、そのおれに意見するとは何事だと怒る。愚かなことやね。経営者にとって大事なことは、自分の面子より、会社の発展やないのか。そういう人も、聞き役の人と同じように、なかなか求めて得られるもんではない。(226ページより)

なお、ここでは経営者について語られていますが、同じことは多くのリーダーにもあてはまることではないでしょうか?(229ページより)

本書で明かされているのは、松下幸之助氏の「人を追う経営」、日本的経営観、経営手法など。それらについて氏がどのような考えを持ち、どのようなことを語っていたかがわかる内容になっているわけです。こんな時代だからこそ、原点に立ち戻るという意味でも目を通しておきたい内容です。

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Source: アスコム

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