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「学ぶ」に勝る投資なし

貧困家庭からハーバードに合格。一生使える「最強の独学術」とは

author 構成: 島津健吾
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貧困家庭からハーバードに合格。一生使える「最強の独学術」とは
Image: GettyImages

何よりも大切で、投資するべき資産とは何でしょうか? それは、お金でも不動産でもなく、「自分自身」ではないでしょうか。

変化の激しい現代において、常に学び、成長し続けることは必要不可欠です。しかし、一体何を、どうやって学べばいいのか。その「学び方」は学校では教えてくれません。

この「学ぶに勝る投資なし」特集では、自分自身を高める最高の投資としての「学び」について、最新の独学術やノウハウについてご紹介します。

第1回は、貧困家庭で育ちながら東京大学、ハーバード大学院に合格した独学のスペシャリストである本山勝寛さんに独学の必要性と学びを習慣化するコツについて伺いました。 今回は前編です。

▼後編はこちら

目標を必ず達成する「学び戦略」の作り方。楽しく継続するためには

本山勝寛(もとやま・かつひろ)

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東京大学工学部システム創成学科卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策専攻修士過程修了。親が家にいない極貧バイト生活を送りつつ、東京大学に独学で現役合格。その後、教育をより広い視野で研究するためにハーバード教育大学院に留学。卒業後は、国内外で数多くの社会変革を手掛ける日本最大級の国際NGOである日本財団で、広報および国際協力事業、パラリンピックサポートセンターのディレクターを経て、現在は子どもサポートチームリーダーを務める 。『16倍速勉強法』(光文社ペーパーバックスBusiness)、『最強の独学術』(大和書房)はじめ著書多数、累計30万部以上。同書は韓国、台湾、中国、タイでも翻訳出版され、ベストセラーに。公式ブログ

貧困を乗り越え、東大とハーバードに合格

――本山さんのことを知る上で、まずは家庭環境のことは外せません。幼少期から現在にいたるまでの経歴についてお聞かせください。

私は比較的貧しい家庭で育ちまして、小学6年のときに母親が他界しました。5人きょうだいの上から4番目で、高校に進学してからは父親と上のきょうだいは同居しておらず、妹と2人で暮らしていました。

生活費としては、奨学金と自分で稼いだアルバイトの2つだけ。家計を支えるため、小学校から続けていた野球も辞めました。

知り合いからお米を送ってもらったりというようなサポートはありましたが、塾や家庭教師に行くお金どころか、進研ゼミといった通信教育を受けることもできませんでした。生活するだけで必死で、参考書を買うことすら苦労しましたね。

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左下が本山さん。5人きょうだいの上から4番目だった
本山さん提供

――お母さまが亡くなられる前は、両親からどのような教育を受けていたのでしょうか?

わりと放任でした。本の読み聞かせをしてくれる母親を、きょうだいで囲んで聞いていたことは覚えています。

思い出深いのが、母が病気になったときに作文を書いて学校に提出したら、市の文集みたいなものに掲載されたことです。母が病気になったことを自分のなかで受け入れるきっかけになりましたし、振り返ると、のちに本を出版する原点にもなったと思っています。

――家庭環境が大変な中、高校3年になる前に東大受験を決意したということですが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

ひとつのきっかけは、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読んだことでした。まったく本を読まない学生だったのですが、マンガの『お〜い!竜馬』を手にとってから坂本龍馬に夢中になり、『竜馬がゆく』で初めて本を1冊、読破しました。

この本で、幕末の志士に刺激を受け、日本を良くしたい。そう思いました。それで「日本を良くするなら、リーダーを輩出している東大に進学だ」と勉強を始めました。

これが高校3年になる直前の春休みのことです。アルバイトも辞め、収入は奨学金の1万4000円のみになってしまいました。

そこからまず、周りに「東大に行きたい」と言い始めました。公言することで、退路を断ち、周りから応援してもらえるからです。

当時、東大の合格率は模試でE判定。可能性が極めてゼロに近い状態です。そんなとき、手にしたのが知人からもらった東大合格者の体験記を集めた本でした。

私はとにかく、その本を熟読しました。一度読んで終わりではなく、繰り返し読み込んで、東大に受かるためにはどんな勉強をすればいいのか、どんな問題集を選べばいいのか、考えました。今振り返れば、そこがターニングポイントだったと思います。

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高校1年生まで続けた野球を続けていた本山さんだったが、父が海外に行くタイミングで退部した
本人提供

独学に必要な「情熱」と「戦略」を作る方法

――体験記を読んで、学力を高めていけた要因はなんでしょうか?

情熱と戦略だと思います。

まずは、東大に行きたいと強烈に思うことが大事です。

当時は、東大に行くことが自分の夢につながって、世界に貢献できると本気で思っていました。それまでは勉強が好きではなく、1日1時間程度しか勉強していませんでしたが、夢につながるものだと自分のなかで確信してからは14時間勉強するようになりました。

もう一つは戦略です。東大受験体験記をバイブルのように読み解いて、塾に通わず現役で合格した境遇の近い人のデータを参考にしました。

何をすべきか、どのタイミングでどう成績を伸ばしていくべきかと考え、自分で戦略を練りました。本に書かれていることを自分に当てはめて、自分なりの戦い方を見つけたのです。

独学の問題点は、独りよがりな勉強に陥りやすいこと。そうならないように、達成したい目標を決めたら、先行事例をよく分析し、緻密な戦略を立て、常にPDCAを回すことが大切です。

ただハーバード大学院受験のときに、戦略作りには苦労しました。先行事例が少なかったからです。

――ハーバード大学院には東大と同じように独学で行かれたのでしょうか?

日本を良くしたいという情熱はありましたが、世界を見ないと日本のこともわからないと思いました。当時は、今と比べると留学する人が少なく、私の友人は東大卒業後、官僚や研究者、投資銀行に就職していたため、周りがやっていないことをやりたいとハーバード受験を決めました。

「情熱と戦略」という根幹は東大受験と変わりませんが、戦略作りに苦労しました。私が留学した2006年当時、語学留学はしても、海外トップスクールに留学する日本人は多くありませんでした。

英語の対策本はあっても、留学受験体験記のようなものは数少なく、インターネットを活用しながら独自で情報収集を行いました。

また、ハーバードの入試はペーパーテストだけよければ合格できるわけではなく、エッセイや推薦状といった知識以上のことが求められるため、苦労しましたね。

――ハーバードに行かれて、得られた気づきはありますか?

ハーバードは、学生たちが「世界を変える」と本気で信じていて、常に有言実行。そう言ったマインドセットを植え付けてもらいました。

ビジネススクールからNPOなど非営利の世界に就職する人が多くて、ノンプロフィットの世界が伸びて活性化していることを知り、世界を変えていく原動力になっていると感じました。

それから日本財団に就職をするのですが、就職先でやること、個人でやることの2種類の目標を立てました。

個人の目標は、本の出版などアウトプットを通して世界に影響を与えること。もともと、ハーバード受験のプロセスを語学系出版社の公式ブログで書いていたのですが、これをベースに本の原稿を書き、学びの重要性を多くの人に伝えたいと考えていました。

企画を通すのに苦労しましたが、粘り強くあたっていたら、アメリカから帰国後、ある人との出会いによって本を出すことができ、最初の個人目標は達成できました。そこから合計16冊の本を出したり、アルファブロガーになったり、オンラインサロンを立ち上げたりしましたが、近いうちにもっと大きな挑戦もする予定です。

もう一つが、就職先である日本財団での目標です。「日本を導いていける人間になりたい。日本を世界を導いていく国にしたい」というのが当時からの目標です。

日本のソフトパワーをいかした世界に貢献できる事業をつくろうと、子どもたちの学びにつながる漫画をセレクトして届ける「これも学習マンガだ!」というプロジェクトを始めました。

また、困難に直面する子どもたちの生き抜く力を育む施設「子ども第三の居場所」を全国に100カ所近く開設し、国の政策にも影響を与えるなど、新しい取り組みに挑戦し続けています。

楽しいから学ぶ、楽しいから続けられる

――学び続けてきた本山さんが考える、個人としての学びの大切さ、重要性とはなんでしょうか?

一つは、人生が楽しくなること。

「新しいことを知る」「できないことができるようになる」。それって、すごく楽しいですよね。独学もドキドキワクワクするもの。生きていることを実感できることが学びの醍醐味です。

学びは投資、とも言えます。すぐお金になるわけではなく、時間がかかったり、ときには大変なこともある。しかし、学び続け年数を重ねることで、夢の実現といった大きなリターンを手にできます。

お金の投資でも、年々雪だるま式に大きくなる複利効果というのがありますよね。毎年3%成長できて、その1年だけを見ると成長の幅は小さいかもしれませんが、10年間3%ずつ成長できれば複利効果で大きな結果につながります。

――学ぶことは大事とはわかりながらも、なかなか楽しいと思えない人もいると思います。学びを楽しむために、心がけたほうがいいことはありますか?

まず、勉強という言葉にネガティブなイメージがありますよね。「学び」と言い換えると、ポジティブなイメージになります。

具体的な工夫で言うと、例えば、漫画や映画から入るのも一つの手です。どんな分野でも楽しく入ることが何より重要です。

週刊少年ジャンプで連載中の『ドクターストーン』という漫画があるのですが、科学を勉強するのではなく、漫画の世界からいろんなものを作り出す科学の世界を楽しく実感できる。

科学を学ぶ前のモチベーションづくりに役立ちます。今の時代、そういう「楽しめるツール」はとてもそろってきています。

さらに、ブログやnote、SNSなどを活用してアウトプットしていくと、学びがもっと深くなり、楽しくなっていきますよ。まずは「学ぶことを楽しむ」。これが学びの習慣化の第一歩だと思います。


後編では、戦略の立て方や目標の設定について、より具体的にお聞きします。

▼後編はこちら

目標を必ず達成する「学び戦略」の作り方。楽しく継続するためには


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