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印南敦史の「毎日書評」

がんばりすぎて疲れてしまう人は「過剰適応」しているかも

author 印南敦史
がんばりすぎて疲れてしまう人は「過剰適応」しているかも
Photo: 印南敦史

社会の一員として日常生活を送る以上、少なからず「がんばる」ことが求められます。しかしそんななか、息抜きできない状態になっている人も少なくないはず。

すると結果的には、“疲れている”“気持ちが張りつめている”“意欲がついてこない”“イライラして落ち着かない”などの不調が現れたりもするものでもあります。

心理カウンセラーが教える「がんばり過ぎて疲れてしまう」がラクになる本』(廣川 進、松浦 真澄 編、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の編者によれば、それは「過剰適応」という状態。

「自分の都合よりも周りを優先させ、無理をしながらもがんばっている」などの意味で用いられます。 筆者らが企業などの健康管理業務に関わっていると、まさに「過剰適応」な状態の方にお会いすることがとても多いのです。(「はじめに」より)

そういう人は周囲からの期待や評価を意識し、(負担や迷惑をかけないように気を配りつつ)できる限り完璧に近い形でそれに応えようとするそう。しかも“まだ努力が足りない”というように、自分を追い込んでがんばり続けているというのです。

そんな「過剰適応」については、さまざまな角度から理論的な説明がなされ、対処や解決の方法が多数検討されているのだとか。

そこで本書では、ひとつの理論に偏ることのないようにと、職場の健康管理やメンタルヘルス支援に従事する心理カウンセラー[公認心理師・臨床心理師]や産業医などの複数の専門家が執筆。さまざまな角度から、「過剰適応」についての説明や紹介・提案をしているわけです。

きょうは第1章「過剰適応とは何だろう?」に焦点を当て、基本的な考え方を確認してみることにしましょう。

「適応」が行き過ぎてしまうと

「適応」は、2つに分かれるのだそうです。

1 外敵適応:家庭、学校、職場など社会や現実の要求に応じて、役割を守って実際に行動することです。

2 内的適応:自分の心・気持ちが幸福感と満足感を経験し、心的状態が安定して良好なことです。自分自身が納得して前向きになっている状態です。(24ページより)

適応している状態とは、個人の内面と外部の環境との間に調和が取れ、満足すべき関係が保たれている状態。対する「不適応」は、外敵適応がうまくいかず、内的適応まで不調に陥っている状態。

そして「過剰適応」とは、文字どおり、適応が行き過ぎてしまい「外的(社会的)適応が過剰なために内的(心理的)適応も困難に陥っている状態」

いいかえれば、自分がどんな行動をするかを決める際に、他者や環境(組織)の価値観を優先させ、(それが客観的に見て「過剰」であったとしても)本人はそれを無自覚で受け入れている状態。

すなわち「自分の内的な欲求を我慢して、周囲からの要求や期待に答えられるように努力すること」といえるわけです。

だとすれば、うまく適応しているようにも見えそうです。しかし実は、まわりの環境に合わせようとがんばりすぎて、自分の心身の状態が損なわれそうになっている状態かもしれないのです。

周囲からは、環境(仕事、人間関係)に適応できているように見える人たちのなかに、“周囲の期待に応えるために過剰な努力をしている人”あるいは“自分の要求や感情を抑えて周囲に合わせている人”もいるということ。

それは、本人の心が外部(親や社会など)の価値観を自分の心のよりどころにし、それに合わせているため。外部の価値観を疑問視せずに“合わせる”ことで、外部とうまく折り合っている(ように見える)のです。

事実、過剰適応の人は、「職場や学校で普通以上に働いたり勉強しすぎて、症状が出ているのにほとんど休まない(休めない)人」なのだといいます。

一方、不適応の人は「そもそも職場や学校でうまく適応できないために症状が出て、よく休む(休める)人」ということになるようです。(24ページより)

過剰反応が起こる心理的なメカニズム

人は認めたくないことがらや劣等感、つらさ、苦しみ、恥ずかしさなどの感情を隠してしまっているもの。

怒り、嫉妬、悲しみ、恐怖などを無闇に表現することは「恥ずべきこと」だという思いが、それらを深い心理の底に押し込めてしまうわけです。

社会規範や他者への思惑によって感情を心の奥底に押し込めてしまう行為をフロイトは「抑圧」と名付けました。

そして社会規範(≒良心)や他者への思惑(≒自身の行動の見張り番)の心理構造を「超自我」と名付けました。

私たちは親の背景にある超自我を見て育ち、それによって、社会生活や対人関係でのトラブルを回避します。その結果、現実生活がスムーズに過ごせるのです。

このプロセスが心の「防衛規制」と呼ばれるメカニズムです。(32ページより)

それは不安、抑うつ、罪悪感などの心理的な葛藤、外からの攻撃(批判、いじめ、否定など)によって引き起こされる苦痛を回避するための無意識的な心の動き

その働きがあるからこそ、人は心の安定を得て、社会生活が続けられるわけで、それを「適応状態」と呼ぶそうです。

防衛規制は、人が生き延びるための「心を守る心理メカニズム」と考えてよいと著者はいいます。自分にとって危険で、心が傷つくような環境(状況)から身を守るための心の機能だということ。

しかし、自分を守るはずの防衛規制が偏ったり、過剰に働く(周囲に合わせすぎてしまう)ことがあり、すなわちそれが過剰適応。

そのような心身の症状が出やすい人は「真面目」「がんばり屋」「仕事熱心」「他人から頼まれると断れない」「周囲に気遣いをする」「自己犠牲的」「優等生、いい子であろうとする」などの傾向がみられます。(33ページより)

もちろん、そうした傾向すべてが悪いわけではありません。が、自分自身の内的な感情や欲求を抑制し、周囲の期待に応えようとすることがストレスになるわけです。

しかも周囲から気づかれない場合が多く、本人も多くの場合、心身の不調をあまり自覚できないもの。なぜなら、過剰適応の思考と行動が幼少期から染みついているから。

そのため心身の不調を感じたとしても、それが外的適応と内的適応のバランスが崩れていることに端を発する症状だと気づきにくいわけです。(32ページより)

以後の章では、「過剰適応」に変化をつくっていくためのエクササイズ、自分をケアするためのエクササイズなどが紹介されていきます。

また、「過剰適応」によって体調崩した方が、カウンセリングを通じて回復し、職場にあらためて適応していく過程なども明らかにされています。

つまり、「がんばりすぎてしまう」という思いを抱いている方にとって、とても有効な一冊であるということです。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

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